8話①
お待たせしました。
ついに、彼女ができました。
お相手はまさに一目惚れした入鹿葉月さん。
色々あって紆余曲折ありましたが、これから仲良くやっていこうと思ってます。
やばい。にやける。
しかも寮にいるし、葉月は俺の部屋で何度も寝てる。
告白しそびれてから何日間か来なくなったけど、これでもう来ない理由はない。
そして、
大人の階段も、そのうち
登れるかも知れない。
付き合ってる男と女が同じ部屋で寝てるのだ。
ねえ。
期待する。
とりあえずあの後2人に付き合ったことを報告した。
当たり前だけど祝福された。
シズはちょっと鬱陶しいからみをしてきたけど。
そんで、すごい今更だけど、連絡先を交換した。よく考えたら、葉月の連絡先、知らなかったのだ。
付き合うってなって、なんかどうしようってなってたけど、タケルに相談したら今までどおりでいいんじゃない?変に構えると器ちっさってなるよって言われた。たしかに。童貞丸出しってやつだ。
大人の余裕、か。うん。そういう感じでいこう。
その日は部屋に葉月来なかった。
思ったよりショック受けてる自分がショックだった。
次の日。
ウッキウキで来た。
「よく言ったよ、つーか待ちくたびれたよ!よかったねえ!あはは!」
すげえテンション高かった。
いつものように話したり、トランプとかボードゲームとかやって遊んだ。
普通に楽しかった。
2人のこと色々決めよっていったけど、なんとなくはぐらかされた。
色々教えてくれたけど。
返信は意外と遅いこととか。
考え込んじゃって結局送れないとかあるんだって。
シズはめちゃくちゃ早い、らしい。
そういうキャラだ。ちなみにタケルもめちゃくちゃ早い。
葉月は
電話とかはするけど、あんまりだそうだ。
お互い初めての彼氏彼女だし、焦らずいこうってなった。
うん。そうしよう。
普通に喋ったりあそんだり、
それだけで十分幸せだった。
部活の時間はいつも通り。部活終わってから30分だけ校舎内をぶらついて喋る。
ベンチで手を繋いで。
それで帰ってご飯お風呂済ませたあたりで葉月がまた部屋に来る。月曜日からはそんな1日が続いた。
こんな平和でいい1日がずーっと続けばいいのにな。
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「おーい、猫宮。こんな時間に呼び出して何の用だ。」
五十嵐先生の声がした。
視聴覚室。パソコンのモニターの前。猫宮瑠璃子は椅子に腰掛けず、壁にもたれかかって言う。
「ことの顛末は聞いた。本当によく無事だったわね……。」
「ああ。よかったよ。ほんと。」
あれからひと月ほどがたち、蓮の傷もほとんど治った。他の3人、自分を含め4人に何か後遺症的なものはない。
シズの書いたレポート『オカルト研究部の有用性と必要性』80枚をホッチキスで止めてあってほぼ冊子だが、それを読みながら視聴覚室の椅子に座り脚を組む五十嵐先生。
米ノ木西公園の出来事が詳細に書かれている。
10年前、七海ちゃんが行方不明になった事件があったことまでしか聞いていなかったが、それよりも前があったらしい。それも遡ることさらに10年前、今から20年前に起きたこと。七海さんと同じく行方不明になった女の人がいた。年齢は25歳で名前は美波さん。
なんの変哲も無い名前だが読み方が『みな』。水無月つまり、数字の6を連想させる名前だという。七海は数字の7。そして今回は葉月、数字の8が狙われた、という推論だ。かなりこじつけ感はあるが、意外とそう言うところに真実は転がっていたりする。溺れそうな俺とかは全部フェイク。本命はあの木。根元に引き摺り込んで、行方不明にしようとしてたのは葉月だったのだ。
あの後、あの木の下から白骨死体が発見された。歯形から七海ちゃんのものだと判明。ニュースになっていた。
これらのことは調査に行ったために明らかになり、今後も活動を続けていくことで社会に存在する未解決事件の解決に寄与する可能性を示唆する内容のレポートになっている。
なんというか、一介の高校生が書ける内容ではないが筋は通ってるし、半分以上真実らしい。
「それ、どこまで正解なの?」
「え、ほとんど正解だって董哉さんが言ってたよ。」
「ほとんど?葉月が狙われたところも正解?」
「大正解。ただ、ちょっと推察がこじつけ感が否めないのは、シズに霊感がないから仕方ない。むしろ霊感がない個人が調べ上げることのできる限界を超えているって董哉さんも震えるレベルらしい。本当に危ないんだから。」
「どういうこと?」
「あぁ、この推察はほとんどあってる。ただ美波と言うところは水無月かどうかは微妙だ。そうじゃなくて本当のところは、苗字だ。九十九美波。25歳。そしてこの前ニュースで見たろ?行方不明だった七海ちゃん。彼女の名前は百瀬七海。数字で縛りがあったってのは本当だ。だから葉月が狙われかけた。」
「ちょっと待ってよ。順番関係ないなら五十嵐先生だって、苗字に五十が入ってる。」
「あぁ、だから使われたんだろうな。ほら、蓮と葉月を引き剥がそうと俺の偽物が出てきたって言ってただろ。」
「ええ、そうね。まぁ2人ともあぶなかったってことね。」
「おう。それから靴の件だ。靴をあそこに隠すことで葉月を無意識のうちにもう一度近くまで足を運ばせようと仕向けたみたいだ。前の七海ちゃんの靴の縛りが逆にあったからな。だが、まぁ、それは全部除霊してくれたみたいだが。」
「あそこに遺体があったのって、七海ちゃんの骨はわかったけど他にも身元不明の遺体がたくさん出てきたんでしょ?」
「おうおう。ざっと100は出てきてもおかしくないよな。かなーり昔からあのあたりは行方不明者続出なスポットだったらしい。董哉さんが言うには。10年やそこらの悪霊じゃないってさ。もしシズの推察通りなら、少なくとも100人はあそこに連れてかれてる。葉月だけ名前に数字が入ってないのは、縛りを緩めたからじゃないかって。もう時代が進んでるからかなり難しくなったししなぁ。むかしは名前に数字ばっかりだったろ?弥七とか彦六とか。獲物が全然取れなくなったから縛りを緩めた。だから葉月を取り込もうとしたし、だから逆に言えば倒せるレベルまで下がってきたんだろうって。董哉さんがいってたよ。」
「本気でギリギリだったってこと、ね。オカルト研究部、なんてお遊びじゃないの?本気すぎることない?」
「あぁ、まったくだ。日本一の霊媒師すら手を出さなかった案件を片付けちまった。」
「それ、許可してていいの?学校として。」
「まぁ社会に貢献してるって言うのは本当だしな。あぶなかったら蓮とか董哉さんとかがなんとかしてくれるって話だし……。」
「はぁ、呑気ね……。阿澄君や阿澄董哉にもどうにもできない奴もいるかもしれないのに……。」
そういうと、パソコンを操作してモニターを変える。
「……?おい、それ防犯カメラの映像か?」
「……」
「犯罪じゃないかそれ?ハッキングって奴か?」
「……」
猫宮瑠璃子は黙って映像を切り替えてく。
ある映像でとまった。
「……おい、ここ。」
「ええ。そう。」
そこは寮のある一室の前の廊下。
何度も見たことがある。
そこで一夜過ごしたこともある。
「蓮の部屋の前?」
「ええ。」
「それが、どうした?」
猫宮がパソコンを操作する。映像が巻き戻っていく。
蓮が出てきた。
そして、後ろを振り返る。
「……?これが、何だ?」
「わからない?さらに巻き戻すと。」
時折、映像にバグが入るように揺れる。
そしてまた、蓮が入っていき、もっと戻すとまた蓮が出ていく。
「?何が、見せたいんだ?」
「もっとスローにしてあげる。ほら、ここ。しゃべってる。」
「……本当だ。」
「ここも。毎日阿澄君は部屋から出ていく時に何か喋ることが多いね。独り言が多いのかな?」
「……つまり、どういうことだ?」
「これは、ナニと会話してるのかな?夜の10時に。」
「……」
「ここ、1ヶ月くらい、ずっとそうね。これが入学当初の阿澄君。そしてこれが、今の阿澄君。」
そう言いながらモニターに2枚の写真をうつす猫宮。見てわかるレベルで明らかに体重が減りやつれてる蓮の全身の写真だった。
「……こ、これは。」
「これ、今の映像だよ。話し声、聞こえるね。誰と話してるんだろうね。」
五十嵐は居ても立っても居られなくて、駆け出した。
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