7話①

「ねえ、たけるんはあの2人くっつくと思う?」


「どうかなぁ、だいぶ奥手な2人だし。でもお互い好き同士なのはバレバレだけどね。」


「やっぱり?わたしもそう思うんだよね。早くこくれよって感じ。」


「まぁ人それぞれ、ペースはあるよ。見守ってあげましょう。」


「ここまでお膳立てしてあげて何もしないで帰るなんて、蓮君ありえないからね。」


「まぁ。たしかにね。」


「ところでたけるん。たけるんはいつ私を襲ってくれるのかな?」


「え?なんて?」


「だから。ここ。カップルがイチャイチャしてるときに目撃情報があるんだって。」


「そ、そうなんだ。」


「だから、ほら。早くイチャイチャしないと。」


「そう言われると、なんか緊張するな。」


「え?なんで?」


「だって見られるかもだろ?幽霊に。」


「そうだね。だから?」


「あー。なんにも。」


そういうと、腰に手を回しす。

付き合ってる、とかではないけど。2人ともそういうことをするのは慣れていた。

で、熱中して10分くらい経った頃。

ピチャ、ペチャ


と音がするのに気づかなかった。


2人の出してる音ではない、のに。

何か水が滴る音。


ヒュウううう


風が吹いた。


冷たくて、2人は一瞬離れる。


タケルはそれと、目があった。


固まった。


固まってたら、シズがまた、くっついてきた。


「んんんん!」


シズに押し倒される感じになる。

どんどん近づいてくるそれ。


「ちょ。ちょっと待って!」

シズが暴走してる。

ポン、


「きゃあああああああああああ!」


――――――――――――――――――――――――


「うわぁ、ここ、か。なんかちょっと雰囲気あるね。」

葉月が言う。

おれはもう、ドキドキしてる。今日、ここで、俺は葉月に告白する。


「そうだね、いかにもって感じがするね。」

池の前のベンチに腰掛けながら言う。

ここはおれと葉月の担当、だった。


星稜高校は山になってる途中にある。その山の麓の街にある公園に心霊現象が起きるって言う噂があるとシズのリサーチで分かったのだ。


麓の駅、『星稜高校前』全然前じゃないけど、そこから電車に乗って20分ほど。

少し大きめの公園がある。『米ノ木西公園』

そこには、大きな池が公園の真ん中にあり、その池の周りにベンチがいくつかある。

そのベンチに夜カップルですわっていると、女の霊がやってきて池の中にひきづりこむという噂があるらしい。

シズが生徒会を納得させるために作るレポートのために、オカルト現象の存在の証明と、それに対する研究の有用性を語るといって、調べてきた。

調べてきた内容は、夜の8時頃、ここの公園でイチャイチャしたカップルが池の真ん中に浮かぶ浮遊霊を見た、と言う内容がほとんどだ。

この程度の話なら、よく聞く噂程度かなと思っていたが、シズは違った。

その浮遊霊を特定しようと試みた。その結果、十年前、当時小学四年生だった女の子がこの公園で行方不明になっていることがわかった。名前は七海ちゃん。彼女の母親は父親からDVをうけており、自身も父親から虐待を受けていた。この公園のすぐ近くに住んでいたらしい。

ある日の夜。母が父に殴られてる音を聞いて目が覚めた七海ちゃんは、次は自分が殴られるとパニックになり、窓から逃亡を図る。父親は家出ですぐに帰ってくると考え警察にも言わなかった。母親は心配するも父が怖くて言い出せず。三日後流石に心配になった母親がこっそり警察に捜索願いを出した。しかし、見つかったのは靴だけ。彼女の名前が入った靴が、池の真ん中に二つとも、浮いているのが発見された。

警察は慌てて池の中を捜索するも、何も見つからない。そしてそれ以降七海ちゃんを見たものはいない。それからしばらくたって、件の浮遊霊が目撃されるようになったのだ。

彼女は公園でいちゃつくカップルを見ると、お父さんとお母さんが仲直りしたと勘違いして様子を見にくるのではないか。それがシズの見解だった。

若干無理矢理感があるが、カップルがいちゃついてる時に目撃情報が多いのは間違いない。シズが表にまとめて考察したのだ。

彼女は凄腕の刑事とかになってるかもしれない。もしくは名探偵、とか。

それで、1番目撃情報が多いこのベンチと、ここから池を挟んで反対側のベンチに二手に分かれることになった。シズは丈瑠と。俺は葉月と。


「……。」俯く葉月。

とりあえず、なにか話さないと。

「あー、結構、暗い、ね。この辺。」

そう、ここと反対側のよく目撃情報があるベンチのところには街灯が無いのだ。他のベンチにはあるのに。だからカップルがイチャイチャしやすいと言うのもあるのだが。

「そ、そうだね。」

「葉月は、いると思う?幽霊」

「うーん、でも目撃情報があったんだもんね。見えるかもしれない、ね。」

「俺は絶対視えないからさ。なんかいたら教えてよ。」

「そんなのわかんないよ。私だって見たことないし。」

「まぁ、そっか、そうだね。俺ももし視えたら言うから。」

「うん。」

「……」

「…………。」

う、うまく、言えない……。

「…あのさ、」

葉月が顔赤くしてこっち見る。

「うん?」

「その、……、カップルっぽくしなきゃ、なんでしょ?」

そういうと、手を俺の手の上にのせる葉月。

ドクン

心臓の鼓動が高鳴る

「これくらいで、いいよね?流石にちょっと、きゃ!え?」

抱きしめてしまった。勢い余って。

だって高校一年生、こんな暗がり、2人きり。雰囲気しかない。

「え、ちょ、ま、蓮くん」

ムードとかはあんまりないし、

これも葉月からモーションかけられてる気がする。あーでも、ここからどう挽回すれば。もう、とりあえず、やるしかない。


「あ、あ、あのさ!葉月!その、おれさ!葉月のこと……」



『きゃあああああああああああ!』

反対側から悲鳴が聞こえた。

「……え?」

「シズの声!」

「まさか!何かあったのかも!」


「行こう!」

手は握ったまま。だけどそんなこと言ってる余裕はない。

「シズ!大丈夫!?」

「シズ?丈瑠!?」

2人して固まってる。

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