6話②

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ガチャ


「っておわぁ!」


「ん、んー?は!あれ?俺いつのまに寝てた?」


「え?なんでこんなとこで寝てるんですか!?」



「うぇ!?えーっと、うーん、そのなんだ、たまたまだな。」


「はぁ?わけわからないですよ先生。俺の部屋の前で寝てる理由になってません。」


「その、簡単に言うと、だな。お前が心配で、」


「何が心配なんです?」


「いや、その、妹に頼まれたんだよ。夜、見張ってくれないかって。」


「もう、わけわかんないですね。」


「だってお前変なんだもん。自覚ある?自分が変ってこと。」

「変?いや、まぁ、変な夢は見てますけど、それくらいで。」

「変な夢?おい、おまえそれなんでいわなかった。どんな夢だった?」

「五十嵐先生が生徒を暴行する夢です。」

「なっ!、お、おまえ、それ、ほんき、か?」

「冗談です。何本気にしてるんですか?やましいことでもあるんですか?」

「ないない!俺はそんなことしねえよ。」

「なら良いじゃないですか。」

「いや、そうじゃなくてな、」

「ん、ちょっと待って。じゃあ、…」

そういうと部屋に入っていってしまった蓮。

なんて夢、見てるんだ。もしかしたら。

いや、そんなはずねえ。そんなこと、阿澄董哉にだってできねえ。

でも、蓮だ。

あの阿澄董哉が化け物という、蓮、だ。

わからない。わからないが、決めつけてボロを出すのはもっと良くない。

俺のスタンスは変わらない。

大丈夫だ。俺は何にも、悪くない。

「はぁ、やっぱり。窓から…」

「おーい、蓮、早くしろよ。時間やばいぞ。遅刻するぞ!」

おれは足早にその場を去っていった。

この時間は妹は学校とかで忙しいだろう。電話するなら父親、か。

今日のことをとりあえず報告しなきゃな。


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「なんか、珍しいね、あすみんが機嫌悪い。」

「ね。何があったんだろうね。」

「ちょっと、俺聞いてみようか?」

「いや、いいよ。無理に聞くことでもないし。話したかったら自分から言うでしょ。」

「たしかに。話しても仕方ないって思ってるからいわないタイプたね。」

ズキ。

「い、」

「ん?」

蓮君が振り向いてすぐ下を向いた。

「あ、ほら、葉月ちょっと!足怪我してるんじゃない?」

「え?わたし?うそ」

足を見ると、真っ赤に腫れ上がってた。え?いつ?あれ?朝自転車降りる時にバランス崩して転けたから?

紛れもなくわたしの足が腫れてる。

折れてるとかでは無さそうだけど、

意識したら痛みがすっごくジンジンしてきて。

「いたぁあい。」

「あぁ、もう。無茶するから。ほら、乗って。保健室、いくよ!」

無茶?ちょっとカッコつけて片足のサドルに体預けて下りながら停めようとしたから?たしかにあれはちょっとバランス力がいると思ったけど、昨日やってる人がいてかっこいいなって思っちゃって、チャレンジしてみたくって。誰もいないからやってみたんだけど。

みられてたなら恥ずかしい。

顔が真っ赤になる。

それをシズに揶揄われる。

「きゃあ!いるるん!顔真っ赤!そりゃそうだ!あすみんがおんぶって!イケメン!たくましい野獣系!」

「そういうのはいいから。葉月怪我してるんだぞ!」

「そう、状況が合法ですからしっかり抱きついて!ほらアピールチャンスだよイルルン!その胸で柔らかさを堪能させてあげないと!」

ベジ、

チョップしといた。そんなこと言われたら背筋が伸びてしまって蓮君は余計重い。

でもそのまま運んでくれた。

ついてこなくて良いのに。シズも付いてきた。

本当に空気読まないな、この子は。

保健室について先生に自分で状況を説明して、処置してもらって、

とりあえず一限は保健室で過ごすことになった。すっごく恥ずかしかったけど、骨とかは折れてないし、大したことなさそうで良かった。

「あ、ありがとう蓮君。」

「にしても気づくの早かったよね。なんならイルルンより気づくの早くなかった?」

「え、まぁそりゃぁ、その、コケるとこ見てた、から。」

頬をぽりぽりかく蓮君。

ぎゃああ、やっぱりみられてた?うそ、恥ずかしい!

「ほほう、それはそれは。結構豪快に転けたんでしょ?ちなみに今日のパンツの色は?」

「いや、それは見えてないよ!見えてない!本当に!」

「え、え、その、ほんと?」

「うん、ほんと、ほんとだからね。」

「ほら、あんたたちは教室に戻りなさい!」

「はーい」

「じゃあまたね葉月。」

「うん、また、ね。」

恥ずかしいから布団を顔までかぶってやり過ごす。

結局その日はそれ以降会わなかった。

その日は大事をとって早退することになった。一応病院で検査も受けてきた。骨に異常はなく、捻挫と言われた。


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「ていうか、先生のせいですよ!」


「は?何が?」


「先生が俺の部屋の前でなんて寝てるから、」


「いや、まぁそれは悪かったよ。」


「もうやめてくださいね。」


「おう、わかったわかった。」


風呂を借りに先生の部屋に行ったあと、だ。


イライラが爆発してしまった。


なんで自分でもこんなにイライラしてるのかわからない。


葉月の怪我のせいだろうか。



いや、葉月は葉月だ。昨日の夜。

『気になって気になって、わたしのことしか考えられなくなればいい。』


あの言葉、


本当に気になって気になって葉月のことしか考えられなくなってる自分がいる。


お陰で勉強も手につかなかった。

「そういえば、先生、部活の時間、何してるんですか?携帯ゲームなんかやって。」

「な、お前、なぜそのことを!」

「猫宮先輩が言ってました。」

「ぐ、あいつか。」

「暇なんですか?」

「いや、暇ではない。暇ではないぞ」

「先生って部活やってるの?」

「ああ、まぁ一応水泳部だぞ。」

「え?水泳部?女子の?」

「あぁ、第五顧問だ。いるかいないかわからないやつな。」

「なにそれ、じゃあ水泳部じゃなくてオカルト研究部の顧問になってよ。」

「おれが?うーん、別にいいが今のところ水泳部、だからなぁ。やめれるかどうか、主顧問の先生に聞いてみないことにはなぁ。」

「え、じゃあ俺たちからも頼んでみるよ。なんていう先生?」

「お?お前らが?まぁ確かにそっちの方がいいかもな。3年4組の蓮見先生だ。」

「わかった。明日いってくる。じゃあ先生、おやすみ。」

「おう、ぐっすり寝ろよ〜」


部屋に戻ったらいるだろうか。足怪我してまで忍びこんでるだろうか。

もしいたら、一言いってやる。

とりあえず窓から出て行くな、と。



ガチャ。ギーーーーーーーー、

バタン。


葉月はいなかった。


もしかしたら今日夢、みるかな、と思ったけど、


その日は夢も見なかった。

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「おはよ、葉月、大丈夫だった?足。」


「あ、うん。その、骨折とかヒビとかは入ってないってさ。」


「そっかぁ、良かった。もう、あんなことするなよ?危ないだから。」


「う、うん。もうしないよ…。」


「約束な。ほれ。指切り」


「な、なによ、そんなの、恥ずかしいじゃない!」


「お、朝からいちゃついてますなぁ。」


「おはよ!2人とも。」


「そういう2人だって自転車2ケツしてるじゃん。」


「おお。おれもバス代浮かせようと思ってな。自転車にしたんだけど途中で歩いてるシズ見つけたから乗っけてきた!」


良いなぁ2ケツか。


頼む前に足怪我されちゃった。

ついてない。


「そう言えば今日は葉月用事あるんだよな?」


「え?うん、まぁ。」


「何の用時?」

「病院に行くの。」

「へ?足の?」

「んーん。違くて。ちょっとね。持病持ちで。」

「そうなんだ。」

「うん。だから今日はオカ研ないよ。」

シズが言う。

「そっか。そう言えばさ、顧問の話、五十嵐先生、水泳部やめれたらやっても良いってさ。」

「げ、あいつ水泳部だったの?キモ。」

「いや、好きでやってるわけじゃないみたいで。3年4組のなんだっけな蓮見先生?って人に言えばなんとかなるかもだって。」

「げ、あの蓮見かよ。」

「いやぁ、ハードル高いよ。違う学年のフロアにいるってだけで、めちゃくちゃ怒られそう。」

「おれ、行ってこようか?」

「え、いいのー?昨日から男前アップアップだねあすみん!ありがとうー!」

「お、じゃあ俺もついてこうか蓮。」

「たける、せんきゅ。いついく?先生がいるタイミングだから朝か放課後か。」


「放課後って部活あるんだろ?行くなら今じゃね?」

「たしかに。じゃあ行ってくるよ。」

「いってら〜場所はわかる?3年は3階だよ〜」

「りょーかい。ありがと、じゃあ、また。」


三階まで歩いて行くと三年生はどの教室もほとんどの生徒が既に座って何かしら勉強をしている。…すごいな3年生…。


4組の前にきた。


中を覗く。はたしているのだろうか。


中を

見回す。

……いない。


たけるにはここで待っててもらう。


「失礼します。ーーーおはようございます。」 

1番近くの先輩に話しかけた。


「……ん、」


「担任の先生っていますか?」


「…もうすぐ、くると思う。廊下で待ってたら良い。」



深く頭を下げて退出する。

するとちょうど、背の高い、いかにも女教師、みたいなおばさん先生がやってきた。


「…蓮見先生?」


ギロッと睨まれる。


「一年生が三年生のフロアに勝手にくるな。特に今は3年はテスト前でピリピリしてる。気が散るだろう。もっと気を使え。」


いきなり怒られた。


「あ、あのすいません。テスト前とか知らなくて。」


「知らないでは済まされん。さっさといなくなれ。」


「あ、あの。俺たち、先生にお願いがあって…!」


「そう、です。俺たち部活を立ち上げたくて。」


「はぁ、?私は水泳部顧問だ。他を当たれ。」


「え、ええ、知ってます。それで五十嵐先生に顧問を頼みたいんです。五十嵐先生、俺の担任の先生なので。でも、今水泳部の顧問だからって言われたので、その、先生に五十嵐先生をくださいってお願いに来たんです!」


めっちゃ睨まれるし怖いから早口で言い切った。


「プレゼン的には0点だ。お前たちの要望しか入ってない。それに部活を立ち上げるというのはどういうことかわかっているのか。この学校にどんなメリットがあるか説明しろ。ついでにそのメリットが私にとってどの程度のものかもプレゼンするべきだ。」


「…へ?」


「まぁ、話だけは聞いてやっても良い。次回は職員室にこい。部活が終わる時間は19時くらいだが。20時にはいる。以上だ。早く一年のフロアに戻れ。」


そういうと、

ぴしゃり、と教室のドアを閉められた。



俺とタケルは顔を見合わせて、ため息をつきながら教室にもどっていった。



お風呂に入った後、今日の出来事を五十嵐先生に話す。

この人は本当に毎日ここにいるな。


「ということで、なんか無理っぽいです、先生。」


「この学校へのメリットとか、無理だろ。相変わらずだなぁ、蓮見先生も。」


「五十嵐先生が水泳部にとって必要な人材ってこと?」


「自分でいうのもなんだが、そんなわけないぞ。まぁ明日俺から頼んでみるよ。」


「お願い〜俺には無理そうダァ〜」


「なんとかなると思うけどな。」


「そしたらあとは、生徒会?」


「ああ。生徒会の連中はなかなか固いからなあ。それこそメリット云々って話だぜ。蓮見先生に言わなくても結局そっちには言わないと、なぁ。」


「そっか。考える、よ。」


「おまえ結構乗り気だよな。」


「え?いや、まぁそんなことないけど。」


「ま、根が真面目なんだよな。」


「…五十嵐先生って兄弟とかってお兄さんしかいない?」


「うん?うん、兄しかいないぞ。」


「先生っていつから先生?」



「おれか?4年前からだ。」


「中学の授業持ってた?」


「あぁ、今も持ってるぞ。」


「そっか…。」


「なんだ藪から棒に。」


「いや、なんでもない。」


先生が、葉月に恨まれる可能性…

それとその前の日に見た男の人との情事。


あれがどちらも過去の話だとするなら…


「先生って一応若いじゃん?女子からモテたりしないの?」

「はっ、しないしない。女子中高生にモテるなんてありえないだろ。」

「…そっか…。」

「っていうか一応っていうな。普通にまだ若いわ。

「あはは。じゃあ、また明日。」

葉月が先生のこと好きで告って振られて、荒れてああなった。

一応辻褄は合うかなって思ったんだけどな。

先生の感じでは違うかもしれない。

まぁ、そもそも夢の話、だけど。

部屋に戻ったら葉月がいた。


「おかえりー」


「ただいま。病院、おわったの?」


「ん、うん。足も大丈夫だって。」


「ねえ、なんでそんなに五十嵐先生さけるの?」


「だって見つかったら怒られるじゃん。」


「そっか。それだけ?」


「うん。」


「じゃあなにも窓から出なくても、隠れてれば良いじゃん。」


「うん。そうする。」


「本当に頼むよ。怪我とかしないでよ。」


「うん。ありがと、優しいね。」

ニコッとする葉月。


「蓮くんは、誰にでも、優しいのかな〜」


「え、?いや、どうだろ?」


「シズにも優しい、よね。」


「そうか?」


「うん。一生懸命オカ研のことやってくれてる。そんなに興味あったっけ?」


「いや、あーそれ先生にも言われた。ただやりかけてることはちゃんとやりたい性分なんだよね。」


「そっか。」


「うん。」


俺はベットに登って寝転んで考えた。


先生のこと、聞くべきだろうか。それとも、知らないふりでいいだろうか。


「ねぇ。」

葉月が顔だけ下から出して、こっちを見た。


顔が近くてびっくりした。



「わぁ、な、なに?」


驚いた俺を見てニヤッとする葉月。


「この前の質問のお返し。蓮くんって彼女いるの?」


「いないよ。」


「好きな人は?」


「好き、好きっていうか気になる人は、その、いる、けど。」


目を逸らす。顔が真っ赤な気がする。


「それ、私?」


「へ?いや、あの、…」


「だって、わたしよりも早くわたしの怪我に気付いて、おんぶして保健室まで連れてってゆびきりげんまんまでしちゃって。」

冷静に考えたらたしかにすごいことしてるな。

「勘違いしちゃうぞ。」

「え?」

「だから。蓮くんがわたしのこと好きなのかなって。」

「か、勘違いじゃ、ない、よ。」

「…!なんて?ちゃんと聞きたい。」

「その、おれ。葉月のこと、気になってる。」

「気になってるって何?好きってこと?」

「…うん、好き…。」

なんか、言わされた告白になっちゃった。

なんとなく情けないな。

「…あはは。ありがとう。ちょっとからかうつもりだったんだけど。」

ほら。うん。まぁそうかなって思ってたけどな。

「ちょっと考えたい。」

目をまっすぐ見ていう葉月。

「え、」

「蓮くんもさ、こんな言わされる感じじゃなくてちゃんと言いたいでしょ?」

「え、あ、うん。」

「だから、もう一回ちゃんと告白して。その感じで考える。」

「え?もう一回?」

「うん。今日のは無かったことにするから、あたかも初めて言うかのようにロマンチックにお願いね。」

「う、うん。」

「あと、ここじゃなくて、学校でいうこと。」

「わ、わかった。」

葉月が最高の笑顔になった。

「ん。期限は別にいつでも良いよ。明日でも。期待して待ってる。」

そう言い残すと、

「じゃあまたね。」といって、部屋から出て行った。

今日も夢は見なかった。





その日から、1週間。

告白、できないまま、過ぎて行った。


葉月は普通に過ごしていたが、今までと違うのが夜は自分の部屋に帰って行くようになった。

夢はみなくなった。

なんとなく、夜、下で葉月が寝てる時に夢を見るような気がする。


1週間ぐっすり眠れてることもあってか、かなりしぶとくあった目の下のクマもなくなり

健康的な顔になった。


そういえば1週間で五十嵐先生は顧問を引き受けてくれることになり、最近は生徒会の承認をどう得るかという問題を話し合っている。


葉月は携帯ゲームにはまってるみたいで、相変わらずタケルはギターの練習。

俺はみんなのやってることをチラチラ見ながらうだうだする毎日。


部屋では葉月は質問ゲームにハマっている。お互いお題を出してそれについて話す。


「好きな〇〇」っていうお題だ。


好きなジュースとか好きな食べ物とか。


目玉焼きにかける好きな調味料、とか。

葉月はソース派だった。俺は醤油派。


コーラ派かペプシ派か。とか。


好きな本、とか言われた時は本とか読まないしなぁってなった。葉月は2人で喋ってない時はいつも小説を読んでる。でも読み方がすごく変だと思ってた。


全然進まないのだ。

例えば今日は300ページくらいある本の140ページを読んでた。

でも昨日は同じ本の145ページくらいを読んでた。

なんで戻ってるの?って聞いたら、

読み返すのが好きなんだって。


え、じゃあ、その本読んだことあるの?って聞いたら、


いやまだ145ページまでしか読んでないって。


最後まで読んでないのに、途中で読み返す、って変わった読み方だなぁって思った。それがまぁ1日くらいならわかるけど、3日も4日も同じことを繰り返してる。先に進めば良いのに。


よほど好きな章なのかな。



水曜日になった。

お風呂から上がったらいつもと違う感じの葉月がまってた。


なんか怒ってる?


「え、えと、なんかおこってる?」


「別に!」


「怒ってるじゃん。」


「なんででしょう。」


「……うーんと。」


「期待させてから落とされた気分!」


「へ?」


「あのね。告白されたの。他の男子に。名前も知らない子。靴箱にラブレターが入ってて。知ってた?」


「え、いや。知らない…。」


「ほら、やっぱり。いや、別に良いんだよ。私が他の誰かに取られちゃってもね?その場合わたしはもうここにいれなくなるけどさ!」


「え、そ、それで?」


「まだ、あなたのことよく知らないからごめんなさいって返した。そしたら」


「そしたら?」


「これからたくさん知ってくれって。まだ諦めないからって言われた。」


「す、すごいな…」


「すごいね。どうするの?」


「え、」


「もうちょっと焦ったら?」


「はい…。」


「もう、言わされる、じゃダメなのにさ。」


「うん。」


「今週末は期待してる。蓮くん的にはどう思う?本物っぽくない?」


そう、今週末、麓の街の心霊スポットに行くことになってる。

生徒会にメリットを示すということで、心霊スポットに行き調査する様子を動画に撮ることにしたのだ。


心霊スポット的にはよくある話。本物っぽいかどうかと言われれば本物っぽい。

でも、そこで死人が出てるとか大怪我をするとかそういう話はなく、声が聞こえるとか、人影が見えた気がするとかその程度。普通、そういうのは放置される。わざわざ除霊したりしない。

この前のカラオケの方がよっぽど危なかった。


「本物、っぽい。まぁ、いつもシズが持ってくる情報は本物っぽいよね。どこから情報しいれてるんだか。」


「才能、だよね。そういうのに対するアンテナが高いんだよ。」


「素直に感心するよ。」


「その時は頼りある男を見せてね。自分からこう、グイッといく感じの」


「頼りがいのある男がタイプ?」


「そりゃあ全国の女の子の大半がそうだと思うけどね。」


「そっか。」


「がんばれ。少年!じゃあまた。」


そういうと、今日も帰って行った。最近、この部屋に泊まってはいかない。

やっぱり告白されたら、なのかな。

今週末、


頑張ろう。うん。人に告白するなんて生まれて初めてだ。

言葉とかシチュエーションとかすごく考えてたらいつのまにか寝てた。


この日もぐっすり眠れた。

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