第19話 新パーティ改


 カレンが破壊しつくした草原の賠償金については、カレンの運をつかってギャンブルで返した。


 とはいえ、まだまだ問題は山積みだ。


 カレン以外のメンバーにもなにか改善をしてやらないとな……。


「よし、次はミリカだ、お前には回復職を務めてもらう!」


「え、私は魔導士ですよ!?威力の高い攻撃魔法を撃ちたくて冒険者やってるのに、嫌ですよ!」


「うるさい!そんなことがいえた立場か!?」


 俺は嫌がるミリカを引きずって神殿へ向かう。


「こいつを僧侶に転職してやってください」


 儀式はすぐに終わって、カーテンの中からうなだれた顔のミリカが現れた。


「ううう……アウルスさんひどいです……無理やりするなんて……」


「おい!誤解されるような言い方するな!」


 ミリカの欠点は、命中率が異様に低いことだ。(1話参照)


 だから回復魔法に専念させれば、命中は関係なくなる。さすがに目の前の味方に回復魔法を当てれないなんてことはないだろう。


 幸い、持ち前の魔力量で回復術師としての適性は上々だ。


「たいへん不本意ですが、これで私もアウルスさんの役に立てますね」


 ミリカが悲しそうな顔で言う。


「そう悲観することばかりでもないぞ、馬鹿なお前はしらないだろうが僧侶にも攻撃魔法が使える」


「ほんとですか!?」


「しかも、その魔法は命中率判定がない」


「それ!私にピッタリじゃないですか!」


 僧侶にのみ使用できる魔法「デスマナー」は相手のマナを吸い尽くすという特殊な魔法だ。どういうわけかこの魔法は状態異常魔法などといっしょで、命中率にそれほど依存しない。


 マナを吸い尽くす――というのは人間に向けて放てば、対象者は魔法が使えなくなるだけだが、魔物に向けて撃てば、まさにマナの集合体たる彼らを、絶命に至らしめることができる。


 こうしてミリカもまともに戦える冒険者に改造することができた。



          ◆



 次の問題児はエラだ。


 彼女の問題点は攻撃魔力の威力が高すぎてすべてを破壊しつくしかねないということだ。(10話参照)


「お前にはこれをやろう」


「これは!?」


 俺はポケットから禍々しい腕輪を取り出し、エラに手渡す。


「旦那様……なんだいこれは?こんな禍々しいもの、女の子へのプレゼントとしては少々センスが悪いと言わざるを得ないぞ。これが私じゃなかったらドン引きされてるところだぞ……」


「馬鹿言え、そういうプレゼントじゃない。これは封魔の腕輪だ」


 封魔の腕輪――もともとは強い魔力を持った敵性魔人を封じ込めるために使うものだが、エルフに使ってはいけないという決まりはない。


「な!?こんなもの私はつけないぞ!」


「うるせえ!お前はそんなこと言える立場かよ!?」


 俺はエラの細い腕を無理やり掴んで腕輪をつけた。


「よし、これでなにか撃ってみろ!」


「ホーリーシャインアロー!!!」


 ――シュインシュインシュイン。


 以前とは打って変わって、適量の威力の魔法が放出された。


「おお!これはちょうどいいぞ!これで街を破壊することに怯えなくてすむな!ありがとう旦那様」


 こうしてエラもまともに戦える冒険者に改造することができた。



          ◆



 次はエルだ。


 ミリカが回復役を務めることになったから、エルと役割が被ってしまう。


 まあもちろんエルの回復は使い物にならないが……。


「ということでお前は魔導士に転職して攻撃役をやってもらう」


「は、はい!わかりました」


 エルは変なこだわりとかないやつで助かった。素直になんでも言うことを聞いてくれる。


 エルももともと魔力が高いから攻撃魔法に向いてる。しかもエラみたいなアホとちがって威力の手加減もできるから、これで問題点はなくなった。


「よし!じゃあ試しに闘技場に出てみるか」



          ◆



 ラスノテには街の横に巨大な闘技場がある。


 そこでは日夜イカれた連中が無駄な戦いを繰り広げている。


「さあ!続いての挑戦者はパーティオブアウルス!」


 司会者の男が高らかに宣言した。


「……あんた、そんなダサい名前で登録したの……?」


 カレンが呆れた顔で俺を見つめる。


「う……ダサくねえよ!」


 今回は俺、カレン、ミリカ、エラ、エルでの参加だ。レグはもともと戦いに問題はなかったから、自宅で待機だ。


 相手のパーティー構成は、魔導士、盗賊、戦士、僧侶、リーダーの五人。


 なんとも皮肉なことに、かつての俺のパーティの構成と同じだ。


「さあ!いくぞ」



          ◆



 俺の作戦は見事に功を奏し、俺たちは優勝を果たした。


 これで全ての問題は解決した、かのように思えたが……。



――続く。

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