第16話 温泉に入ろう2
あいつらが俺の屋敷に居候し始めて三ヶ月ほど経った。
もういい加減に出ていってほしい……。
そこで俺は復讐を考えた。
「そうだ!あいつらが出ていきたくなるように仕向ければいいんだ!」
俺は策を練った。
◆
お昼、リビングで奴らがのんびり談笑している時間帯……。
俺はタオルを持ってこれ見よがしに入っていった。
「ああー……お風呂気持ちよかった……。お前らも温泉入ってきたらどうだ?」
「温泉……?」
カレンが訝しげにきいてくる。
「そうなんだよ、この屋敷には温泉もあるんだ。いつもは屋敷内の浴室で済ませてるだろ?でも敷地内をちょっといったところに露天風呂もあるんだよ」
「へー……さっすが、アウルスの屋敷はなんでもあるわね……」
「だろ……?だからさぁ……たまにはみんなで行ってきたらどうだ……?」
「まあいいかもしれないな……」
エラがまっさきに同意した。
「そうね……ちょうどそろそろ暇になってきたし、いってもいいかもね」
カレンがそれに続く。
暇してるんなら出ていってくれよ……。
「じゃあさっそく出発だ!」
レグが先陣を切って部屋を飛び出した。
「あ、まってくださいー。私も行きますぅ!」
ミリカがそれに続く。
「あれ……?へローラ殿は行かないのか?」
へローラがその場を動かないので、エラが気になって訊ねた。
「わ……私は遠慮しておきますわ……。もう何度も行っておりますし……。みなさんで楽しんできてください」
「う……そ、そうか、わかった……」
察するに、へローラは奴隷紋をみなに見られたくないのだろう……。
みんなが出ていって、俺とへローラ二人になった。
「ふぅ……よし、行ったな。それじゃあ俺も行くかー」
俺が独り言のようにこぼすと、へローラが驚いて、
「まぁ!やっぱり何か企んでらしたのですね……!?」
「お、よくわかったなぁ……」
「妻ですから当然です!」
へローラは自慢げに腰に手を当てて言った。
「まあ俺が見事にあいつらを追い出してみせるからへローラはここで待っていてくれ……」
「私はみなさんのこと好きですからもっと居てもらっても構いませんのに……」
へローラが心底残念そうな顔をしてみせる。
「お前はあいつらの本性を知らないからそんなこと言うんだ……あいつらと一度クエストに出てみればすぐにヤバい奴らだってのがわかる……」
◆
温泉に着いた。
俺は草葉の陰からあいつらの会話に聞き耳をたてている。
「急に温泉に行ってこいだなんて……アウルスも気が利くじゃない。もしかしてそろそろ私たちを追い出すことをあきらめたのかしら」
カレンが服を脱ぎながら言った。
残念だがその反対だ。俺はあきらめてなどいない。これは貴様らを追い出すための作戦なのだ。
「旦那様のことだ……案外なにか考えているのかもしれんぞ……」
エラが鋭い考察をもらす。やっぱりあいつは頭がいい。
「わあいい!温泉だ!温泉大好きー!」
例のごとくレグがまっさきに湯船に飛び込んだ。
「ははは……レグちゃんは元気がいいですねぇ」
とエル。
「私たちもさっさと入っちゃいましょうか……」
ミリカがそう言ってゆっくりと湯船に向かって行った。
ようし、じゃあ俺もそろそろ準備するか……。
俺は自分の服をその場に脱ぎ捨てた。
◆
「やあやあみなさんお揃いで。どうだね?俺の屋敷の温泉の湯加減は……?」
みんなが温泉でのんびりしているところに、急に全裸の俺が登場したものだから、みな目を大きく開けて固まっている。やめて、そんなに見られるとさすがに照れる。
「な……な……アウルス……せ、セクハラだぞ……!」
まっさきにカレンが口を開いた。
「いーや、ここは俺の私有地だ。そこで俺が何をしようが勝手だろ?嫌ならオマエタチが出ていったらどうですかぁ???」
俺は皮肉たっぷり、嫌みたっぷりな口調で言ってやった。くそくらえ。
「あ……アウルスさん……卑怯です!」
ミリカも抗議の声をあげた。
「卑怯なのはどっちだ!人の良心につけこんで何日もタダ飯食らいやがって!」
「う……それを言われると痛い……」
エラは俺の裸なんか見慣れているから平気そうだ。
「とにかく……!俺もいまから混浴させてもらう。嫌ならお前らが出ていけ」
俺は啖呵を切って湯船の真ん中にドンと腰かけた。
あまりの刺激の強さに思わず俺は目を瞑っていた。さすがに五人の女性の裸を目の前にして正気を保つのは難しいものがあった。
さあてそろそろ痺れをきらしてあいつらも湯船を出ただろうと思って目を開ける。
――そこには変わらず五人の女性の裸があった。
「なんでお前らまだいるんだ!?はやく出ていけって言ってるだろ!!!」
「いやーだって……嫌ならでていけって言うけど、そんなに嫌じゃないし……」
カレンが言う。
「へ……?」
つまりこういうことか?俺との混浴と、この家を出ることを天秤にかけたら、混浴の方がましってことか……?そんなにこの家に居座りたいのかこいつら……?
「だって、こっちはもともとそのつもりで来たところもあるし……」
「そのつもりで……って、お前なんにもそんな感じの雰囲気出してなかったじゃん!」
「いやーだってアウルスが手出してこないから……」
あたりまえだ。俺は案外真面目なのだ。相手がそのそぶりをみせなければ、いきなり襲ったりはしない。
つまりこいつは養ってもらう代わりに俺の側室にでもしてもらおうとして来たってことなのか……?
「でも、カレンはそうだとしても、ミリカもそうなのか……?」
「まあ私もアウルスさんのこと嫌いじゃありませんし……ほかに行く当てもないですからね……」
なんということだ……じゃあ俺はこいつらを側室にして好き放題してもよかったってことか?じゃあこの三ヶ月もんもんとしていた俺はなんだったんだ……。
「エラとエルはどうなんだよ……?」
「私たちもそれで構わない。というか私たちは村を出た時からそのつもりだったんだし……。お金があるんだから、みんなでハーレムを作って、幸せに暮らしたらどうかな……?」
こいつ、とんでもないことを言いやがる……。でも確かに悪い話じゃない。すくなくとも俺にとっては……。
でもこの屋敷も金も、もとはといえばへローラのものなのだ。へローラの同意を得なければハーレムは成立しない。
「よし、じゃあこの話はいったん持ち帰ってへローラに相談してみよう。へローラが第一婦人なんだし、彼女の同意は絶対に必要だ」
「お、そうだな」
ということで話はまとまって、俺たちは温泉を後にした。
◆
「……と、いうことなんだ、へローラ。こいつらを側室にしてもいいか?」
「いいですわよ」
二つ返事でOKだった。
「やっぱりだめだよなぁ……そんなの……へローラからしたらメリットないもんな……って、ええ!?いいの!?」
「ええ、私もみなさんのことは大好きですし、というか、もともとそのつもりなんだと思ってましたけど……違うんですか……?」
俺はどうやら一人相撲をとってたみたいだ……。
「ま、まあそういうわけだから……みんなよろしくな……」
「「「「「はぁーい!旦那様!」」」」」
「いや、だから……旦那様はよしてくれって……!」
その晩は激しい一夜となった……。
まあそこは想像で補ってもらいたい。
――続く。
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