2-4 完全遡及起源転生憑依召喚です(なにそれ)。

【前回までのお話】初お姫様抱っこ。【以上】


「レイン師匠、あの聖剣ッスけど」

「ふむ」

「そちらのシーさまに借りたレベル100のパンチでも防がれました。どうやら持ち主への攻撃を無効にするみたいッスね」

「なるほど。が、正味問題なかろう」

「ッスね」


 セイルさんがターバンとマントを剥ぎました。


 中の服装はジュンヤさんと同じ簡素なものでしたが、思っていた通り、かなりのマッチョさんです。パツパツです。


 ターバンに収まっていた長髪をガッと掻き上げ、前髪ごとオールバックの一つ結びにしました。


「ふぅ……」


 相変わらず目は怖いけど、顔はちょっと好みだなと思ったのは内緒です。


 あ、そうだ。


見析ウォッチ


 『セイル』種族:人間 役職:道士どうし


 Lv.11

 膂力りょりょく 31

 瞬発力 27

 耐久力 48

 魔法力 30


【見析終了】


 絶望的な数字が並んでいました。


「セイル、さん?」


 このままでは命の恩人が死んでしまうと、私は声を振り絞りました。


「あの、私のレベル、お貸ししま……」

「いらない」


 えっ?


「ふん、【見析】か。下らん―――とは言わんが、我々は“数字”と戦うのではない」


 レインさんが私に言います。


経験量レベル力量ステータス、確かに重要だ。

 しかし―――」


 瞬間。


「積み上げた数字は、どこまで行こうとも辿


 セイルさんから、


「セイル、この100神髄しんずいを見せてやれ」


 


完全かんぜん遡及そきゅう起源きげん転生てんせい憑依ひょうい召喚しょうかん


 彼を中心に魔法陣が浮く。


うつうつわの我が現身うつしみに、の名を写し御魂みたまを移す」


 彼が言祝ことほぐ。


≪彼の者 灼炎しゃくえんくうかいなひた

おの刃金はがね鬼気ききかた


あか鉄心てっしん にび灰身けしん

拙身せっしんつるぎで 悪心あくしん穿うがて≫


 彼がうたう。


「我が名は “無天の剣聖けんせい” ルオ!」


 そして、


「―――ほぅ、今日は俺を呼んだんきゃ(訳・呼んだのか)、セイルよ」


 口調も声色も、立ち居振る舞いも。


「まるで別人みたいです」

「そのとおりだ」


 レインさんが言いました。


「500年前、最凶最悪の魔王を打ち滅ぼした伝説の一党『勇者ソラと始まりの六師』―――その失われた技をその身に宿す秘儀【起源転生憑依召喚】」


「始まりの、六師……?」


「我らの“職士”の開祖たる

 剣師ルオ

 魔法師シプゥ

 闘師チカ

 師ネコフ

 導師ウェッヴ

 そして、盗賊トマスのことだ」


 最後おかしくないですか? と訊いてはいけない雰囲気です。


「だが、セイルはその先の領域に踏み込む【完全遡及】型」

「つまり、極まった“ものまね士”ってとこッスかね」


 よく分からないでいる私に、ジュンヤさんが補足してくれました。


「……そういうことにしておいてやるか―――おい」

「ひゃいっ!?」


 ビクッとする私を意に介さず、レインさんは言いました。


「よく見ておけ、温室育ちの召喚者。

 ここからは、数字レベル

「ここから?」


 異世界オージャニアに召喚されてまだ数時間くらいなんですが、もうそこに踏み込むんですか? 


 と、やはり訊いてはいけない雰囲気です。


【続きます】

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