第2話 貸しま……えっ、いらない?

2-1 死にます(ジュンヤさんが)。

【前回までのお話】タイトル回収は主人公の特権です。【以上】




見析ウォッチ


 『キングオーク』種族:オーク 役職:なし


 オージャニアのオーク種では最大最強。


 Lv.32

 膂力りょりょく74

 瞬発力45

 耐久力100

 魔法力12


【見析終了】


 この世界の人々には“見析ウォッチ”という能力が備わっているようです。


 敵の魔物さんに目を凝らすことで経験量レベル力量ステータスが見られます。


「ふっ。ごみめ」


 脱走者を排除しようと襲い掛かるオークさんたちの群れに向かって、私は言います。


「行けジュンヤさん!」

「ポ〇モン!?」


 向かってくるオークさんたちはレベル30~40、100が上限のオージャニアでは、中堅どころといったところでしょうか。


 ですが。


【見析】


 『サトウ・ジュンヤ』種族:人間 役職:闘士


 他世界“チキュウ”からの召喚者。


 Lv.81

 膂力181

 瞬発力202

 耐久力190

 魔法力174


 【特性】不死者


【見析終了】


「フガッ!? この人間、強―――ブハッ!?」

「ヒャッハー! 集団でかかれぇ! ギャア!?」

「速い……! とらえきれ―――ひでぶっ!?」

「この男、こんなに強いはずが、まさか捕らえられている間に哀しみを背負った―――あべしっっ!?」

「違った、北〇の拳ッスよこれ!?」


 まさに無双状態といった感じのジュンヤさんです。なにかよく分からないことを言っていますが、拳で次々とオークさんの巨体をしています。


「ふははははは! 屈強なオークさんたちがまるで紙屑のようです!」


 レベル100で召喚された私の敵ではありません。素手で十分です。


「倒してんのは俺ッスけどね!?」


 私のレベルを80ほど貸し与えたジュンヤさんが細かいことを言います。そんなんだからレベル1なんですよ。


 どこぞの山奥の穴倉で快進撃を続ける私とジュンヤさんは牢獄部屋を抜け、何やら広い空間に出てきました。


「ここは……?」


 そこには10人ほどのオークさんがいました。


「我らの闘技場よ」


 中でもひときわ目立つ巨躯の持ち主が、私の疑問に答えます。


「あれはなかなか“厄介”ッスね」


 オークさんの手にある豪奢ごうしゃな剣を指して、ジュンヤさんが言います。


「なんなんです?」

「“聖剣”ッスよ」

「勇敢なる人間どもよ!」


 聖剣持ちのオークさんが高らかに言いました。


「敬意の証として、我と決闘し勝てば逃がしてやろう」

「「「「ブゥゥゥゥゥゥ!!!!」」」」


 周りの手下オークさんたちが不満げに鼻を鳴らしますが。


「鎮まれッ!!」


 聖剣オークさんの一喝でシーンとなります。私の高校の生活指導北村先生みたいです。


如何いかにする、人間」

「選択の余地、ないッスよね?」


 ジュンヤさんが薄く笑い、闘技場の中央へ、


「シーさま」

「はい?」


 向かう前に、私に言ってきました。


「残りのレベル、ぜんぶ俺に寄越してくれません? ―――ヤバそうなんで」

「……はい」


経験量転移エナジートランス】!


 ジュンヤさんのレベルが100になりました。


「では、始めようか人間、名を聞こうか」

「サトウ・ジュンヤと言います。そちらは?」

「オークに名はない。だが同胞からはこう呼ばれている……聖騎士パラディンオーク」


 聖騎士オークさんが剣を、ジュンヤさんが拳を構え、決闘が始まりました。


 ですが、しーはネタバレを恐れない女なので、結果を先にお伝えします。


 ジュンヤさんが死にます。


【続きます】


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