第8話 終幕

「マキナがいない」

 いつも私が寝る時近くにいてくれたマキナいない。

 どこに行ったんだろう。

 周りを見渡すなかで壁に文字が掘られてることに気づいた。


 エリーへ

 私はAIを止めることにしたよ。

 やっぱり人類とAIでは争いになってしまうらしい。だから私はAI全てを強制的に活動停止にするよ。もちろん私も、そこに例外はないから。

 だから、私が君に会うことはもうない。

 さよなら、エリー。


「なん...で?」

 どうして、どうして?私がやられたから?私が足を失ったから?

 違うよ、元々シェルターから出ること自体、愚かな行動なんだ。

 もし責任が問われるなら私だ。だからこれは私が悪いんだ。それが分かってたからこんなことになっても受け入れられた。

 いつか殺されてしまう日が来るとしてもいいと思ってた。


 だけど、マキナ。それは違うよ。

 そこでたまたま争いが起きただけ。仕方ないことなんだ。だからって、なんでマキナがいなくなる理由になるの?

 ...止めなきゃ、マキナを。今からならまだ間に合うかもしれない。

 松葉杖を使いながらゆっくりシェルターを出ていく。既に辺りは暗くなっており方向感覚すらも怪しくなってくる。だけどずっと通ってたんだ。暗かろうとたどり着ける。

 その時レーダーに赤い点が光った。マキナ!!

 マキナだ。マキナが近くにいる。


「マキナ!!」

 シルエットが見えた時それが人型のものでは無いことに気づく。

 別個体のAI。やばい逃げなきゃ。ほんとに死んじゃう。私はマキナを止めないといけないのに。

 しかし音で分かったのかそのAIは猛スピードで駆け寄ってきた。蜘蛛みたいなフォルムをしたそのAIに付いた銃口が私の脳天を捉える。

『おい、お前と一緒にいたエクスマキナはどこにいった。約束を守らねぇなんて一体どういうことだ』

 約束?なんのことか全く分からない。

「知らない!私だって急にいなくなって...」

 その時大きな地鳴りが響き大地を揺らした。

 なに?

 揺れはすぐに収まりまた静寂の世界が戻ってくる。

『なんだ今の揺れは。もしかして入れ違いになった?クソ、無駄足かよ』


 やがて白い光が天に登った。白い光は流星のように空を駆け巡った。ひとつの白い光が目の前のAIに触れた。

『どういうことだ!俺は認めねぇぞ、こんな、こ......な...の』

 そのAIはさっきまでが嘘のように動かなくなった。

 間に合わなかった。

 目の前のAIが活動を停止した。つまり、マキナ自身も活動休止...。

「うっ......ひっくひっ......」

 そこからはもうダメだった。涙が溢れて止まらない。


 ねぇマキナ。マキナはほんとにそれで良かったの?私はマキナともっと一緒に居たかった。傍にいてくれるだけでも良かった。それなのに...。

 私はただ、ただ地面に這いつくばって泣きじゃくることしか出来なかった。

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終末世界で何を成す? ポン酢 @tponzu

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