第7話 君の選んだ選択
「ん、んんー。ふぁぁぁ。んーん、ん?」
どれくらい寝てたのだろう。体を伸ばし、あくびをしながら体を起こす。
えっと、昨日は確かマキナとは一緒に帰っててそれから...。
思い出せない何があったんだっけ。
「いたっ」
動こうとしたら急に右足に激痛が走った。よく見てみると膝下が無い。
あ、そうか。思い出した。
私はAIにやられたのか。もしそうだとしたら生きてるだけマシな方だ。人なんてすぐ死ぬんだから。私は以外にも冷静で居られた。
「おはよう、エリー。安静にしててよ、全然起きないから色々と大変だったんだから」
「おはよう、マキナ。えっとどれくらい寝てた?」
「たぶん2日くらいかな。私もあやふやだよ」
マジか、勿体ない。
部屋に入ってきたのはマキナ。いつもどうり起こしに来てくれたみたい。
「傷口塞がってるけどいつ開くか分からないから過度な運動は控えてね。リハビリとかもしないとだから安静にして」
「分かったよ」
みんなにも色々迷惑かけんだろうな。後でみんなに声をかけよう。
「はい、松葉杖。義足とか用意できたら良かったんだけど難しいみたい」
「ありがと。おいしょ...難しいな」
初めて使ったけど意外と疲れる。それに扱いが難しい。これからはずっと必要なんだもんな。練習しないとなぁ。
「あはは。君にも出来ないことがあったんだった」
「そりゃ私だって人間だから、出来ないことだってあるよ」
「そりゃそうだ」
これからは探検とかも難しくなるのかな。そう考えると残念だな。でもおじさんもマキナもいるしきっと大丈夫だよね。
「ねぇマキナ。マキナは私の前から居なくならないよね」
「...もちろん」
それは良かった。私はそれだけで幸せだよ。
---
「ごめんね、エリー。約束は守れそうにないや」
目の前でぐっすり眠っている少女は幸せそうにすやすやと寝息をたてている。
今日であの日から1週間、約束がある。
「君と会うのも最後か。...名残惜しいなぁ、君ともっと話していたかった」
でも、そういう訳にはいかない。
この1週間で出した結論。それはAIを全て停止させるということ。
どうやら私たちは本来相容れない者同士だったらしい。今は何とかなるとしてもいずれ戦いになる。片方が居なくならない限り争いは起きる。
私はもうそんな光景見たくない。
私たちが滅びれば人類は食物連鎖の最上階に戻るだろう。決して悪い道じゃない。
元々私たちは作られた存在。自然的にみると異分子だ、だから本来の姿に戻す。
私たちがが壊してしまったこの世界を、少しずつ。
だから私たちは滅びるよ。また私の身勝手だけどね。
「そうだ、手紙でも残そうかな」
何も言わずに出ていくのはちょっと気が引けたので文章を残していこうと思った。けどどうやって伝えようか。紙なんて手に入らないし...。
したかない、壁にでも掘ろうか。
━━━。
「よし、書けた。...じゃあまたね」
シェルターを出てあの建物にむかう。
到着。
中に入った時、石版が目に止まった。
「君のおかげで色んなことを知ろうと思ったよ。ありがとう」
これを書いてくれたあの少年。彼に感謝の言葉の告げる。今はもう届かないこの言葉だけど...いやきっと届いている。そんな気がした。
「じゃあ準備始めようか」
そう言ってポケットから小さな箱を取り出す。
プラグを穴に差し込み起動させる。
▷
▶Yes
ちなみに
▷認証 個体名エクスマキナと判断。
▶全AI停止プログラムを送信。
▷プログラムを受信。実行しますか?
▶Yes
▷本当に実行しますか?
なんだよ、君にも意思があるみたいじゃないか。
▶Yes
答えは変わらない。これは私が選んだ道の終着点なのだから。
▷了、実行の準備を開始。
その瞬間地鳴りがし、建物自体が上昇していく。そこには本来の巨大な電波塔の姿があった。その塔は地中に埋まったまま残っており必要時のみこの状態になる。
最上階にあたるここからはシェルターも見えた。
手元にある箱から命令の乗せた無数の白い光が天に伸びていく。
その光はまるで第2の太陽のようであった。空は光に包まれ、大地を照らした。
やがて世界中に散らばっていく、全てのAIに向けて。そう、全ての
全AIの停止。それはもちろん私も含まれる。
今私を目掛けてやってくる光に包まれると全機能が停止する。私一人だけ残るのは申し訳ないと思った。
いつかのアルディエゴさんの言葉が
(生きる意味はあるか?)
あの時人類を知りたいと答えたけど、もしかしたら私の生きる意味はこれをすることだったのかもしれないね。やってきたことの責任を取る。私の生きた意味。
いつかのエリーの言葉が
(後で後悔しないようにやり直したらいいんだよ)
私はエリーの言うとうり後悔しない選択を選んだ。私にもやり直せたよ、未来で後悔しないように。
みんなの顔が
みんな私を受け入れてくれた。彼らにとっては異分子であり、もしかしたら親の仇でもあったかもしれないのに。本当にありがたかった。
でも、これで全て終わりだ。これ以上悲しむ人を増やしちゃいけない。これが私の選択。そしてこれが今までやってきたことの末路。
...エリー。やっぱりさっきのは嘘。ちょっとだけ後悔してる。
「君ともっと色んなことしたかったなぁ」
私を白い光が包んだ。
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