第6話 絶対に助ける
痛い...痛い...痛い...。何が起こったの?
足が痛い。それにさっきから顔の辺りが冷たい。
あれ?私、さっきまで何してたんだっけ?
誰かと話してて。
マキナ...。
そうだマキナと話してたんだ。
あれ?マキナ?どこ?
「エリー!!大丈夫!?」
マキナが私を抱えるように起こす。そこで私はやっと自分が倒れていたことに気づいた。
マキナは着ている服を破いて私の体にくくりつける。
少しだけ痛みが和らいだ気がした。
『なぜ、邪魔をする!?これは俺たちAIの使命だろ』
そんな声が聞こえてくる。人とは違うノイズの混ざった声。
誰?その疑問を晴らすために姿を見ようとするが視界が霞んでよく見えない。
「エリーはここでじっとしてて」
マキナは私を離れた木の下で寝かせた後、足音が遠のいていくのが分かった。
『お前、まさかエクスマキナか。ずっと眠り続けているっていう管理者のエスクマキナだろ』
「そうだよ...私がエクスマキナだ」
『それなら尚更なぜだ、どうしてお前が邪魔をする。人類を殺せと命令したのはてめぇだろ。長い間姿をくらませておいて今度は人間の味方か?冗談じゃねぇ』
「その件については私も申しわけないと思ってるんだ。また令を出すから」
『それを俺たちが飲むとでも?お前の個人的感情に振り回され、同士を失った俺たち全員が命令を聞くとは思えねぇなぁ。そんなものじゃあ俺達も人間に同胞を討たれた恨みは消えねぇ』
「っ...。確かに私に君たちを率いる権利はないのかもしれない。でも今回だけは、あの子だけは見逃して欲しい」
そう言って薄らと見えるひとつのシルエットが蹲ったのがぼんやりと見えた。
何?今、何の話をしてるの?
管理者?
マキナの事?
...あ、やばい。薄らと見えてたシルエットがほとんど見えなくなってきた。
『どうしてそんなにその人間にこだわる』
「私にとって彼女がかけがえのないものだからだ」
『人間なんてすぐに死ぬ。完全なる下等生物、それが人間だろうが、どうしてそんなに...』
「それは違う!...私は、私はこの目で見てきたんだ。確かに彼らは弱い、だけど決して下等生物などではない」
『下等生物ではない?何を言っているのか分からないな。現にどちらが上かなど明らかじゃねぇか』
「では、なぜ人間は滅んでいない。私が眠り続けた200年間でなぜ滅ばない。むしろ劣っているのは我々では無いのか」
『...知るかよそんなこと。あーしらけた。もういいよ、勝手にしてくれ』
何か2人は激しく言い合ったあとひとつのシルエットが遠のいていった。
『...そういやここであったのもなんかの縁だ。見過ごす代わりに約束してくれよ。3日以内に
「...分かった約束する。3日以内ににAI全体に令を出すと」
『あぁ頼むぜ、あんたは俺らにとって希望なんだ。さっきはああ言ったがなんだかんだ言うことは聞くだろうぜ。だけと不満が溜まってるのも事実だ。言うことを聞くのもいつまで持つか知らねぇ』
ひとつのシルエットが完全に見えなるなる頃、もうひとつのシルエットがこっちに駆け寄ってくる。マキナだ、何やってたんだろ。
「エリー、大丈夫?」
「大...丈夫...だよ。けどちょっと...苦しい」
「...分かった急いで運ぶから安静にしてて」
「うん...お願い」
マキナに背負われてシェルターに向かう中で私は意識を失った。
---
「ラルク開けてエリーが危ない」
そう言って私はシェルターの壁をガンガン叩く。そうするとすぐにラルクが顔を出した。
「どうした。...っ!?」
「帰り道でAIに出くわした。今は意識を失ってみたいだけど大丈夫。今すぐベットを用意して、私が治療するから」
「わ、分かった」
ラルクはみんなに声をかけすぐにベットを用意してくれた。エリーをそっとベットに寝かせる。
「エリーは大丈夫なのか?」
「やばい状態だけど、私がいるからなんとかなるかな。...今は集中したいから普段通りしてて」
「分かった任せたぞ。...どっちにしろそれじゃあ俺らには何も出来ないしな」
ラルクは悔しそうな顔をしながら離れていく。きっとみんなに伝えに言ってくれたのだろう。
これで集中できる。やったことは無いけどデータはある。
きっと私ならできる。絶対に助けるから。
まず、容態を確認。今、エリーの右足は膝下が
打たれた弾によって削られたかのように消滅した。私たちAIが対人類ように作った特殊弾によってだ。
(修復は不可、なら私に出来ることはこれ以上に悪化させないこと)
2本の腕を細く、小さく刻み肉眼では見えないような大きさのアームを何千、何万、何億と作っていく。
一つ一つを正確に制御し、太い血管から毛細血管まで、全てを繋いでいく。
麻酔なんかはないから痛点に一切触れず振動も与えず、精密な作業を繰り返す。
作業が終わった後は私の人工皮膚の一部を切り取り傷口部分を塞ぐ。
やがてエリーの皮膚と一体化し馴染むだろう。私の切り取ったところは自己修復で何とか治る。
「何とか終わったよ。エリーは無事だ」
そうみんなに告げると狂ったようにはしゃいだ。
その時視界が斜めに傾いた。
「おっと、危ない」
「...アルディエゴさん」
支えてくれたのはアルディエゴさんだった。どうやら今回ばかりは流石に疲れたらしい。
「マキナ、ありがとう。君がいなかったらエリーは助かってなかっただろう。今はゆっくり休みなさい」
「そうさせてもらおうかな」
そう言って私も寝転がり休む。
とりあえず危機は脱した。エリーを助けられて良かった。
...争いを無くすことは出来ないのだろうか。共存する道は無いのだろうか。
いや、それは無理なんだろう。きっとどこかですれ違いが起きる。争いは無くならない、どちらがいなくなるまで。それなら、私は...。
エリーと別れる日も近いのかもしれない。
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