二十八話

私が目を覚ますとガイは居なくなっていた。窓を見るとまた剣の素振りをしている。ガイは昔からの癖と言っているが何か鬼気迫るものを感じ取れる。


するとドアが叩かれる。その後入ってきたのはガイの母親、アリスさんだった。そしてその後ろにはママがいた。


「久しぶりねメリーちゃん。気分はもう大丈夫かしら?」


「うん、大丈夫···です。」


「敬語なんていらないわ、タメ口でね?」


「それよりもアリス?話が先だろ?」


「そうね。ねえメリーちゃん、今から話すことをよく聞いてほしいの。」


アリスさんが語ったのはガイが呪縛で苦しんでいること。そしてまだそれが残っている可能性だった。


「あの女が言うには大丈夫そうだけど···まあ何があるかわからない状況なのは確か。」


「それにあの少年の手元にはまだ鎌が残っている。だからメリー、あの子をよく見ておいてくれるかしら。」


「当たり前、ガイは私が守る。」


今も外で鍛錬しているガイに目をやる。今日もとても頑張っていてとてもかっこいい。首元を流れる汗を舐め取りたいくらい。


でもガイの様子がおかしい。今にも倒れそうな···


「ガイっ!大丈夫?」


窓から体を乗り出して私はガイを心配する。でも返事がない。


そのままガイが後ろに倒れ込んだ。


「ガイっ!」

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医者によるとただの疲労だと言われた。昨日のことが影響してるのかと思うと私は罪悪感に襲われる。


二人はガイの安否を確認した後部屋をあとにした。でも部屋を出るときの二人の顔はものすごく怖かったのは覚えてる。


これもさっき話してた呪縛のせいなのだろうか。


何も出来ない私がとても惨めに思えた。









翌日、私はガイの体を拭いてあげた。


ガイのたくましい体に少し興奮したけどなんとか耐えた。


私はガイの手を握りながら、早く目が覚めることを祈った。





次の日、ベーラル、ハーシィ、ユーテリアがやって来た。


どうやら学園が来月には再開するらしい。3人はそれを伝える為に来たという。


来月は気温が上がり始める季節。ガイと一緒にウミ?に行きたいな。


ね、ガイ?





次の日、二人が謎の儀式を始めた。


これでもしかしたらガイが目覚めるかもしれない。





でもガイは目覚めなかった。


あの女のせいか?っと急く私に二人はこう言った。


別の呪いがかけられていると。







次の日、あの女が見舞いにきた。馬車みたいな変な乗り物に乗ってやって来た。なんでも足を怪我したらしい。


そして私に変なものをくれた。熟していない林檎を。


私はあの女を追い出そうとしたが一緒にいた男?がこれはそういうものだと教えてくれた。


私はガイに口移しで食べさせる。食べ物や飲み物は口移しでなら飲んでくれる。


私を経由したものがガイの血肉となる。深い高揚感を覚えた。


他の女じゃない、私をだけの口移しで生きている。


嬉しいはずなのに、心は満たされない。








次の日、その日はずっとガイと二人きりだった。


今だガイは目覚めない。


私は手を握り続けた。


もう何日もガイの声を聞いてない。


気が狂いそう···









次の日、私は人を殺した。


私が離席した瞬間、ガイを連れ去ろうとするゴミがいたから。


ガイだったら加減して捕縛するのかな?


でもわたし、もう加減なんて出来ないよ。


これ以上私からナニモウバワナイデ。








ガイは私がいないと生きていけない。


食べ物や飲み物だって口移しじゃないとダメ。


体だった私が清潔にしてる。


それに性処理だって私がしてる。


でも私、これだけじゃ満足出来ない。






あ、ガイが呼んでる声が聞こえる。


私を求めてる。


必要としている。


渇望している。



そう、私だけをガイは欲してる。





今行くねガイ?


ガイの望みは私が全て叶えてあげる。


でも、その前に私の願いを聞いてほしいな。





私の為だけに生きて?二人で混ざり合って永遠に誓うの。


イッショウハナレナイッテ♥




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(ガイノス視点)


首元に生暖かい感触がある。でも自然と不気味さは無かった。それよりも安心感が体を包んでいるかのようなそんな感覚があったからだろうか。


ゆっくりと目を開けるとメリーがいた。自分に覆いかぶさるようにして。


「っ!····っ!」


声が出ない。口は動くのに発声が出来ないのだ。


不意にメリーからキスをされる。舌で口をこじ開け、口内を蹂躙していく。僕もそれに合わせて絡めるとメリーはより激しくした。


「ガイ?ガイっ!ガイっ!」


僕が起きたのに気づいたのか嬉しそうに僕の体を揺らす。だが声が出せない。そっと手をメリーの顔に近づけるとそっとメリーの涙をぬぐった。メリーは泣いていたのだ。


「えへへ、ガイ。」


ずっとくっついて離れないメリー。自分はどれだけ眠っていたのだろうか。それに何か記憶が曖昧だ。


「どうしたのガイ?」


心配してくれるメリー、でも声が出せない。ニコッと笑うと安心した顔を見せてくれた。


不意に月明りがメリーを照らす。二年前、始めたあったときよりもより美しく、華麗になったんだなと思った。


そんなまだまだ甘えん坊な彼女だと思ったのにそんなメリーを見ると何も変わってない自分に劣等感を抱く。


でも僕は不思議と両手を広げ、子供のようにメリーに訴えかける。抱きしめてほしいと。


「ふふふ、いいよガイ。」


彼女に抱きしめられると心が満たされる。何もかも忘れられるような感じるがする。それに花のような甘美な匂いも相まってよりとろけてしまう。


「いいんだよガイ?もっと甘えても?今度は私がガイを救ってあげるから。」



“もっーと私に依存してねガイ♥”













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