二十二話

ガイたちが女王陛下と対談してる最中、ベーラルとユーテリアは部屋で話していた。


「ユーテリア、俺の提案を呑まないか?」


「・・・なんの提案だ?」


「俺の家に養子として入ることだ。」


ベーラルはユーテリアの後ろにある国がいることをわかった上で提案していた。


「・・・どうしてそんなことを?俺には何かさせる気か?」


「いや、ただお前が帝国側に取り込まれたと相手側に思い込ませたいだけだ。」


「・・・どうしてそこまで俺に構う?」


「さあ、何でだろうな。」


ユーテリアには分からなかった。ベーラルが何故ここまで自分のために尽くしてくれるのか。だが、笑っているベーラルを見て、そんな選択も悪くないと思い始めた。


「それに、お前が部屋にこもって何考えてるのかは俺にはお見通しだしな。」


「ははっ、そうか。」


「お前が今苦しい立場なのは理解しているつもりだよ。」


「・・・そこまでわかっているのか。」


ユーテリアはソファーから立ち上がり、寂しいそうな目で窓の景色を見ていた。


「”あいつ“にもこの景色を見せてやりたいな。この帝国の首都の町並みを。」


「・・・・・・そうか。」


「明日まで、時間をくれないか?」


「ああ、わかったよ。」


そう言ってベーラルが部屋から出ようもしたとき、ユーテリアが声をあげる。


「・・・なあ、あの子を守ってくれ。”あいつには俺と同じようなことになってほしくない。」


「最初からそのつもりだよ、バカ。」




────────────────────────


「そう言うことなんだが理解できたかハーシィ?」


「いや、出来るわけないじゃん。」


あれ、何でだろう。結構丁寧に説明したはずなのに何故理解してくれないのだろうか?


「そもそもこれって条約違反にならない?」


「大丈夫だよ。“本当に“軍からの命令だから。」


そして、懐から出した書類をハーシィに見せると固まってしまった。まあ何せ、あの女王陛下からの命令だからな。


「・・・兄さん、これ絶対に失敗できないじゃん。」


「失敗したら打ち首じゃすまなそうだよな。」


(主にガイとメリーさんから・・・)


実はこの事についてまだあの二人に話していないためどう説明しようか悩んでいた。さっきの話をハーシィしたら理解できないと言われたし、あいつも同じことを言うに違いない。・・・どうしたものか。


「そもそも何でヴェルディさんを守る経緯の説明をするのにユーテリアさんの話をするのよ?」


「?説明しただろ?」


「うそっ?うちの兄さんがこんなにアホだったなんて・・・」


「ひどくない?」


「そもそも何でユーテリアさんを家に迎えるのよ?」


「そんなこと言われたって女王陛下が・・・」


まあ正確には俺たちの上司に言われたんだが。


「やあ君たち、そろそろ交代の時間じゃないかい?」


「せ、生徒会長。」


話してかけてきたのは生徒会長だがここは中等部のはずなのに何故ここにいるのだろうか。俺はそっと剣に手をかける。


「交代って何ですか?軍の関係者ではないですよね?」


「ここは学園内だ、僕が仕切ったってなんの問題にもならないよ。それに学園長から言われたんだ。文句ならあの人に言ってくれ。」


「そ、そうですか・・・」


なんかこの人も苦労してそうだが学園長は果たして何者なのだろうか。まあ交代出来るのならありがたい。


「ベーラル君、彼には”あの事“話したのかい?」


「・・・・・いや、話してないです。」


「そうか、まあひとまず交代だから二人はゆっくりと休むといい。」


俺とハーシィはひとまず交代することにした。何かあるんだろうけど難しいことはあまり考えたくない。


「・・・ベーラル君、いつかまた手合わせしてくるかな?」


「いいですよ、次は負けませんから。」


「ほら兄さん行くよ。生徒会長さん、ありがとうございます。」


「分かったから押すんじゃない。」


俺は明日あいつにどう話そうかと思いながらも明日でいいかと後回しにした。”あいつに言った言葉も軍の上層部が用意してくれた台本なのだから“どうにかなるだろうと。



────────────────────────




「ねえガイ?あの子をあのままにしていいの?」


「・・・僕たちが関わると話がこじれそうだから止めとくよ。きっとあの人の命令だろうしね。」


「ん、・・・ガイ手が止まってる、もっと撫でて。」


「ああ、悪い悪い。」


メリーの愛でながら少し考えことをしてしまったようだ。正直今起こっていることは僕たちにとって未知のことだ。それに今はメリーとの時間が大切だ。


「ガイ?お師匠さんのとこ行かなくていいの?」


「あ、もうそんな時間か」


「その必要はない。」


声の聞こえた窓を見るとオメガさんが立っていた。正確に言うと部屋に侵入されていた。


「ねえガイと私の愛の巣に入るなんてどういうこと?死にたいの?」


メリーはオメガさんの首元に槍を向ける。


「メ、メリーっ!」


「大丈夫、すぐに話は終わる。」


そう言うとオメガさんは顔の古傷を撫でながら次のように言った。


「お前への修行は今日で終わりだ。分かったか?」


「理由はなんです?」


「・・・・・・」


「女王陛下絡み・・・ですね。」


「っ!まあ正確にはちと違うがな。それにお前はもう次のステップに進んでいる。」


「次のステップ?」


鎌経由とはいえ魔法らしい魔法を使えるようになった。俺にまだ何かあるのだろうか。ここに来てから冷静に物事を視れるようになった気がする。きっと何か裏があると確信した。


「まあそのうちわかる。今日はそれだけだ。」


「・・・そうですか、ではまた“後日”」


僕は問い詰めなかった。オメガさんが去るのを見ながら僕は改めて自分の立場を理解しべきだと思った。


「・・・ガイ?怖い顔してる。何かあったら私に頼ってね?」


「分かってるよ。・・・メリー、」


僕は少し強引にメリーとキスをした。


「んっ・・・今日のガイは積極的♥️」


「・・・嫌か?」


「ううん、もっと私を求めて♥️愛し尽くして♥️」


メリーに触れながら難しいことはひとまず後回しにすることにした。僕にとってメリーの方が優先順位は高い。


「今日は寝かせないから。」


「嬉しい♥️もっと求めて、愛して、支配して、独占して、私をもっと壊して♥️ガイだけの、ガイだけの“玩具”にして♥️」


・・・どうして僕カッコつけてあんなこと言ったんだろ。このあと起こる悲劇を想像しながら僕は欲望に身を委ねた。
















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