二十話

僕は今城の前にいた。学園と同じ首都にあるのだが、学園よりは小さい印象を受けた。女王陛下の顔は見たことがないが、民からの信頼は厚い人物だと聞いたことがある。


「ガイノス君、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。」


「へ!?い、いやだって・・・」


「ガイは私が守るから大丈夫だよ?」


「守るって・・・」


何でこの二人はこれから女王陛下に謁見するのにこんなにお気楽なのだろうか。僕は胃に穴があきそうな気持ちだった。




僕たちは応接間に案内された。部屋には誰もいなくて待つよう言われた。高級そうなテーブルにソファ用意されていて少し座るのに抵抗があった。それなのに二人は自分の家のようにくつろぎ始めた。


「どうしたのガイ?そこに立って?」


「いやだって・・・」


「呼ばれたのはこっちだ。少しくらいだったら大丈夫だよ。」


「ガイもこっち座って?」


メリーが手招きしてくるのでまあいいかと座ることにした。


「ガイ?緊張してるなら膝枕してあげようか?」


「・・・いやいいよ。」


「むぅ~!」


すると強引に僕の頭を胸元へ抱き止めた。すごく匂いがするし、メリーの包容力のせいなのか自然と落ち着いていった。だが突然見知らぬ人の声が聞こえた。


「ふふっ、二人はとても仲が良いのね。」


「え!?・・・じょ、女王陛下!す、すいません!」


対面のソファーに座っていたのはたくさんの貴金属の装飾を纏い、純白のドレスを着ている桃色の髪の毛をもつ人物だった。間違いなく女王陛下だった。


「ははっ、呼んだのはこちらだ。こんな場所でよければくつろいでくれ。・・・マリエス殿も久しぶりだな。」


「最後に会ったのは半年前だったかな?久しぶり女王陛下。いやエリーちゃんと呼んだ方がいいのかな?」


校長と女王陛下がため口で話しているのを見てこの人は本当に何者なのか分からなくなった。


「おっと君はガイノス君だったかな?それと・・・」


「私はメリー、ガイの恋人なの。」


メリーの腕に抱きつく力が強くなっていく。


「そんなに怖がらないでくれ、何も他人の男を盗るほど私は非常識ではない。」


「ふーん・・・」


「それよりも早く本題に入ったらどうだ?」


「それもそうだな、今回の王国側の件についての話をするために君を呼んだんだ。」


ついに入った本題、僕はどうなるのだろうか。もともとは王国の国民だ。追放されても文句は言えない。


「ガイノス君、私たち帝国と一緒に最前線で戦ってもらえないだろうか?」


「さ、最前線で?」


「ちょっと!それってガイに死ねってこと?冗談じゃない!」


「メリー君、最後まで話を聞いてくれ。最前線といっても戦争が起こったときの場合だ。必ず王国側と戦争になるとは限らない。でも、相手は君とユーテリア君を狙っている。何もないとは言い切れないからね。」


「で、でも・・・」


メリーの言いたいことは分かる。最前線で戦うことはそういうことだ。


「それに、ガイノス君は戦うつもりじゃないかな?」


「・・・自分で撒いた種です。メリーに危険がおよぶなら戦います。」


「ガイ・・・」


「大丈夫だよ、何も死にに行くわけじゃないんだから。」


「なら私も戦う、ガイは私が守るから。」


「メリー・・・でも危険なんだぞ。」


「ふふ、危険なんてそんなの二年前からガイと経験してる。」


「私はメリー君にも参加してもらいたいけどね。二人の実力はマリエス殿から聞いているからね。」



僕はメリーと共に戦う選択をした。メリーの意志を尊重したのもあるがきっとメリーと一緒ならどんな困難でも乗り越えられるそんな気がしたからだ。それに万が一のことがあれば・・・

そんな時、女王陛下が耳元でこんなことを言った。


「”漆黒の姫“を頼んだよ」


「っ!何故それを・・・」


「ねえっ!ガイから離れて、女王でもガイに近づいたら殺す。」


「ははっ、すまないね。君たちはもう席を外してくれてかまわないよ。君たちへの話はあらかた終わったからね。ああ、でもガイノス君にはもう少し話があるから残ってもらえるかな?」


「ええ、いいですよ。・・・メリー、お願いできるか?」


「・・・ガイが言うなら」


「なら私も退席しよう、さあ行こうかメリー君?」


校長とメリーは部屋を後にした。僕に話とはなんなのだろうか?


「本当はユーテリア君にも話すつもりだったんだけどね、先に話しておくよ。」


「それで、なんなんですか?」


「・・・勇者が魔王の娘を探していると言ったら分かるかい?」


「っ!何故それを僕に?ユーテリアには関係がない……」


「ユーテリア君は旧魔王領出身だよ。まあ少し記憶が混濁してるとマリエス殿から聞いているけどね。」


僕は一つ疑問を感じた。それなら何故追放をしないのか。追放すれば無駄な戦争をする必要はなくなるはずだ。


「君が疑問に思うのも無理はない。だが君の疑問は数日のうちに分かるようなる。」


「数日のうちに?・・・・・まさか!」


「まあ私の推察だ。頭の片隅にでも置いておいてくれたまえ。」



「それってどういう・・・」


「ふふっ、秘密さ。」















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