十九話
「そうか・・・君たちを危険な目に合わせてしまって申し訳ない。他の班は怪我人ゼロだから安心したまえ。」
「そうですか。しかしガイとユーテリアが・・・」
ベーラルとハーシィは校長から詳しい話をした上で謝罪を受けていた。
「ガイノス君に関しては直に目を覚ますだろう、私が保証する。しかしユーテリア君に関しては私じゃどうすることもできない。」
「・・・多分ユーテリアは“人を殺めるのが今回初めて”だと思うんです。」
「うむ・・・まあ慣れろとは言わないが、いちいち気に病んでいたらしょうがないとは思うけどね。」
「そう、ですね。」
「君たちからも励ましも効果がないなら私にもう一度相談しなさい。わかったね?」
「了解です。」
部屋を後にし、ベーラルたちはユーテリアの部屋へ向かうのだった。
僕は目を覚ますとすぐ隣にメリーが抱きついて寝ていた。目元が赤く腫れているのを見るとすごく心配をかけたなと思い、頭をゆっくりと撫でていた。
「んっ・・・・ガイ?」
「お、悪い。起こしちゃったな。」
「っ!ガイっ!ガイっ!ガイっ!」
「おう、心配かけてわるかったな。」
僕は起き上がり、柔らかく華奢な体のメリーを抱きしめた。きっとたくさん心配をかけたに違いない。せめてもの罪滅ぼしだった。
「メリー、顔がぐちゃぐちゃじゃないか。」
「だってガイがぁ・・・」
「悪かったって・・・だからもう泣かないでくれ。」
「・・・キス」
「え?」
「キス、して?」
上目遣いで要求されたら断れるはずがない。僕たちは抱き合いながらキスをした。いつもよりも濃厚で激しいキスでお互い苦しいはずなのにやめるどころかより激しさは増していった。
「ガイはもう痛いところない?」
「もう大丈夫だよ。傷口も塞がったし。」
「本当に?本当だよね?もし何かあったらすぐに私に言ってね!私がすぐに治すから!」
「分かった、分かったから。」
今回の件でメリーの過保護に拍車がかかったような気がする。こりゃしばらくは夜のトイレもメリーと一緒だなぁと考えていると僕はあるメリーの変化に気づいた。
「なあメリー?もしかして解毒魔法、使えるようになったのか?」
「うん、だってガイに苦しい思いなんてしてほしくないし。それに他の女の解毒魔法なんてもう二度とガイには与えたくないから。」
「そ、そんな理由で覚えられるのか・・・」
「ガイは私だけを頼ればいいの、他の女なんかに頼ったら・・・めっ、だよ♥️」
動機はともかくやはりメリーはすごいなと思うがふと疑問に思った。ユーテリアはこの目で見れないのに何故メリーは見れるのだろうか。まあ考えてもしょうがないかとメリーの瞳を見ると明らかに僕しか見てなかった。まあ確かにメリーからの視線が外れたことはないが・・・
「ねえガイ?私のことどこが好きか教えて?」
「え、どうしたんだ急に?」
「いいから教えて?」
藪から棒にそんなことを聞いてくるメリーに素直に答えていいものかと僕は迷っていた。しかしメリーに嘘は通用しないため僕は素直に答えることにしたが、もしかしたら引かれるかもしれない。
「メリー、僕がどんな答えでも引かないか?」
「うふふ♪大丈夫だよ、だから素直に答えて?」
「そ、その・・・一目惚れで、すごく見た目が好みだったんだ。」
「ガ、ガイ・・・」
唖然としているメリーの姿に僕は不安だった。本当に引かれたかもしれない。
「私の見た目が好みって本当?」
「ああ、本当だよ。」
「そうなんだっ!そうなんだっ!えへへ♪じゃあ私はガイ好みの女なんだ♪」
「ま、まあそうなのかな?」
珍しくメリーがはしゃいでいるところにドアがノックされた。
「チッ、あの女私とガイの時間を邪魔して・・・」
「メリー?」
『マリエスだ、今大丈夫か?』
あの女って校長のことだったのか。よくノックだけでわかったな。
「ええ、大丈夫ですよ。」
「それじゃあ失礼するよ。」
「何しに来たの?殺されにきたの?」
「おいおいメリー君、今回はきちんとノックをした上で入ったじゃないか、許してくれよ。」
「私とガイだけの空間にいること事態が罪なの、だから早く消えて?」
「はは、辛辣だねー。」
「それで、何しに来たんですか?」
僕は強引に会話の中に入った。二人とも火花が散っていてすごく怖かったからだ。
「そうそう、思い出した。ガイノス君、そしてメリー君言わなくてはならないことがある。」
「何ですか一体?」
「今回の件である一人の人物を捕まえたんだがそいつがこんなことを言ったんだ。」
──ガイノス・バーン及びユーテリア・ハーレを生け捕りにする──
「そう言ったんだ。勿論王国側には連絡したよ。これは国際問題だからね、しかしそんな事実はないってシラを切られたよ。まあこっちも証拠がないししょうがないけどね。」
「ちょっと待って!ガイが狙われているって本当なのっ?」
「現に君たちは襲われた、それが証拠じゃないかな?」
「そ、そんな・・・」
僕は言葉が出なかった。僕が狙われている?それはどうして?何故?なんのために?頭の中はごちゃごちゃだった。だが一つ思い当たる節があった。
「・・・もしかしたらうちの両親かもしれません。」
「そういえば君の両親は王国に住んでいたね、その可能性も無くはないわね。」
「それで、僕たちにそれを伝えて何がしたんですか?ただの注意喚起じゃないんでしょう?」
「うむ、これからきっと王国と戦争になるだろう。そのときにガイノス君、帝国の力になってはくれないだろうか。」
「何故です?僕とユーテリアを追放すれば戦争にはならないはずです。何で協力を?」
「まあそれはこれから会う女王様に質問してくれ。」
「じょ、女王様?もしかしてこれから・・・」
「ああ、城に向かう。何、私の魔法で一瞬だ。」
規模の大きさについていけないがなぜか不安はなかった。強くなったからだろうか?いやきっと・・・
「メリーも連れていきます、いいですよね校長?」
「ガイ・・・私からもお願い、します。」
「ふふ、それはこっちからお願いしたいぐらいだよ。」
メリーが近くにいるからかもしれない。
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