十八話
二日目の朝、俺たちは順調に目的地へと進んでいた。でもユーテリアは今だに顔を紅くさせてるし、おの二人は何故かイチャイチャしてるし・・・メリーの案内で進んでいた。
「ガイ?後三時間くらいで着く。」
「お!じゃあ正午ぐらいにつきそうだな。」
僕が太陽の位置を見ながら言う。それにつられたのかユーテリアも空を見上げた。
「んー・・・・俺には分からないな。」
「そうか、まあそんなのは慣れじゃないかな?」
「そんなこと出来るのはガイか、俺くらいだけどな。」
「おうおう、何ナチュラルに会話に混じってんだリア充が!」
「何で俺にこんな辛辣なの!?」
「あははは・・・」
そういえばこういう技術は妹から教わったなぁと思った。ヴェルは今元気だろうか?あの後顔を見ていないため兄として少し不安である。まあレックスもいるし大丈夫だろ。
「ガイ?何で他の女のことなんて考えてるの?」
「へ!?ど、どうして分かったんだ?」
「ふふ、ガイのことなら何でも分かるの。私だけを考えてね、ガイ?」
「そ、それはちょっと無理があるような・・・って痛い痛いっ!そんなに強く抱きしめないで!」
女の子とは思えない力で抱きしめるメリーに肋骨が何本か折れた感覚がする。そう考えている間も力は増すばかりである。
「じゃあ私だけを見るって、や・く・そ・く、してね♥️」
「分かったから離してくれっ!」
「うふふ♪そんなに慌てないで、今マーキングしてるから♥️」
結局腕に抱きつく形で落ち着いた。顔はとろんとしてだらしないがきっちり案内役をこなしているメリーを見るとすごいなと感心した。
「そろそろ目的地に着く。」
「お、そうか!森も抜けたし、俺らが一番乗りじゃないか?」
僕たちはなんとか森を抜けることができた。メリーに案内役をやらせた方が早かったとは思うがベルに言うとまた拗ねてしまうため言わないことにした。
「そうでもなさそうだぞユーテリア、あそこに三組くらいいるぞ。」
「げっ、マジかよ。」
「みなさん早いですね、私たちも遅くはないと思うけど。」
確かに僕たちの班はどちらかといえば早い方だと思っていたが結構合流した班が多いなと思った。だが近づくにつれてある違和感に気づいた。一班は大体五人くらいで多くて六人だ。忘れていたがうちのクラスは25人の五班だ。明らかにあそこにいる人たちは人数が多すぎる。
「ガイ、なんか変。」
「メリーもそう思うか。よく見れば服装も違うし、あいつらもしかして盗賊じゃないか?」
「と、盗賊っ!?何でこんなところに!」
「ユーテリアさん、落ち着いてください。まだ相手は気づいていません。」
「おいガイ、あの人数いけるか?」
「・・・半々だな。無難に応援を呼ぶ方がようそうだ。ハーシィさん、いけるかな?」
「分かりました。」
ハーシィさんが魔法で学園と連絡をとっている間、僕らは身を潜めることに集中することにした。
「にしてもあいつら何でこんなところにいるんだ?」
「まあそんなこと気にしてもしょうがないとはとは思うけどな。ベルはどう思う?」
「・・・もしかしてあいつら盗賊じゃないかもしれない。あの胸元に付けてある紋章に見覚えがある。」
指摘された紋章を見ると確かに見覚えがある。あれは確か・・・
「あれは王国の紋章、領民は全員付けることが義務つけられる。」
「そ、そうなのかメリー?」
「私たちが王国から離れたタイミングで施行されたからガイは知らなくてもしょうがないと思う。」
「ていうことは王国の連中か・・・」
ここは学園の私有地だ。ここに王国の領民がいるということは不法侵入となる。でもなんのためにこんなことを・・・
「よく知ってたなメリー?」
「普通に新聞に載ってるよ?ガイが知らないだけ。」
「あ、あはは・・・」
「学園と連絡着きました!すぐにくるそうです。」
ハーシィさんの連絡のあと、僕らもその場から撤退するつもりだった。しかし、突如として僕らに魔法が撃たれた。
「なっ!バレてたのかよ!」
どうやら僕たちは囲まれたらしい。逃げ道を塞がれてしまった。
「どうするベル?」
「やるしか・・・ないよな。」
僕たちは武器を構える。だが相手は魔法使いだ。接近戦までもちこむのは無理そうだ。そう、僕なら・・・
「とりあえず応援がくるまでもちこたえるぞ!ユーテリア!」
「あ、ああ。」
再び魔法使いたちが魔法陣を展開する。全方位からの射撃だ。
「おいガイ、後ろのやつらは魔法使いか?」
「いや、剣士だ。少し魔法も使えるようだかな。このまま突っ込んだら剣士に邪魔されるのがオチだ。」
「ちっ!避けようがないじゃないか!」
「兄さん、私に任せて!」
魔法が発射されると同時にハーシィさんが結界を展開する。俺の目では前衛に魔法使いで後は剣士のみ。魔法を撃った後に魔法を撃つのは少しのタイムラグがある。
「俺は後ろの剣士をやる!ガイたちは魔法使いを頼む!」
「「「了解!」」」
一斉に走りだす。ベルが高く飛び、剣士の後ろをとったことを確認し、僕たちも魔法使いと応戦する。一瞬でここは戦場と化した。
人を鎌で殺めるのは初めてだった。だが自然と相手の急所が分かっていた。”鎌とは命を刈るもの“。その意味が分かったような気がした。
「はぁ、はぁ、多いな人数が!」
「ガイっ!危ないっ!」
メリーの声が聞こえた後に相手から短剣で切りつけられた。まだいたのかと考える暇もなく僕は激しい目眩に襲われ、その場に倒れこんでしまった。
「殺す、ガイに怪我を負わせて。絶対に殺す。」
「う、ぐはっ!」
「ガイの苦しみはこんなんじゃない。その脳天に槍をぶっさしてあげる。」
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「ガイっ!ガイっ!目を覚めしてよっ!」
メリーの声が聞こえる。もう声も出せなくなっていた。目を開けるのも困難になっていた。意識も朦朧としてきた。油断した僕の責任だ。悔やみながら眠りについた。
「おいユーテリアっ!ガイが倒れた、そっちを頼むぞ。」
ユーテリアは返事をする余裕がなかった。メリーとガイノスが半数以上受け持ったため、体力には余裕があるが心はもうぼろぼろだった。
「これで・・・・最後だっ!」
ベーラルがまた人の首を斬る様子を見て、ここは戦場なんだとユーテリアはいやでも思い知らされた。殺さなきゃこっちが殺られる。そんなのは頭では分かっていたがユーテリアにとってとても辛いことだった。
「結局応援なんてきませんでしたね兄さん。」
「いや、どこかで金属音が聞こえるからおそらくまだ敵がいるんだろうな、きっとその相手をしてるんだよ。」
「兄さんは耳がいいですね。ユーテリアさんは大丈夫ですか?」
「・・・・・」
「ユーテリアさん?」
「オーーーイっ!大丈夫かーーーっ!」
「あ、こっちですっ!」
戦闘が終わった後でやっと学園の人たちがやって来た。ガイノスが毒を貰い、治療を受けているなかユーテリアの手は震えていた。
「おいユーテリア、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だよ。・・・しばらくひとりにしてくれ。」
「・・・そうか、分かったよ。」
学園に帰った後ガイノスは今だに眠ったまま。ユーテリアは部屋に籠るようになった。
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