十七話

僕たちは今森の中にいる。理由はもちろん遠征だが、ひとつ問題があった。


「兄さん?さっきもこの道通ったよ?」


「え?そうなのか・・・」


「おいベル、コンパスの見方も分からんのか。」


「・・・ちょっと待ってくれっ!」


この調子でずっと道に迷っている。そしてユーテリアだが、


「ひっ、クモの巣にひかかったっ!なんなんだよここっ!」


「うるさい少し黙って、目障り。」


「め、メリーさん・・・」


虫とかに驚いて騒いでいる。これに関しては少し意外だった。ユーテリアってまさか貴族なのか。


「メリー、あんまりユーテリアをいじめてやるなよ。」


「・・・ごめん。」


「あーいいっすよ別に。それよりもベーラル、まだわからないのか?」


「なあ、北ってどっちだ?」


「お、お前・・・」


「もう兄さん貸してっ!」


ベルは拗ねてしまった。まあ方角がわからんやつに任せるのもあれだが。


「ハーシィちゃん、私手伝うから。」


「ちょっと俺の唯一の仕事が!」


「あはは・・・」


「なあガイノス、どうしてベーラルが先頭になったんだ?」


「あいつが勝手に立候補しただけだよ。まさかこうなるとは思わなかったが。」


「そういえばベーラルから聞いたんだがガイノス二年くらい冒険者やってたんだよな、やっぱり魔物退治してたのか?」


ユーテリアが目を輝かせながら聞いてくる。


「いや、それは各国の騎士団がやる仕事だから冒険者はあまりそんなことしないよ。」


「む、そうなのか?」


「ああ、ほとんどの仕事は地殻変動などの調査とか、その土地の測量だよ。」


「それは大変そうだけどそのうち仕事なくならないか?」


「なに言ってんだ、ここら辺火山の噴火や地震が多いだろ。それにその調査もあるからそう簡単にはなくならないぞ。」


「なんか夢のない仕事だな。」


一体どんなことを期待してたのだろうか。そもそも冒険者自体数が少ないのに。


「そういえば一回だけでっかい爬虫類に会ったな。」


「爬虫類?なんだそれ?」


「ん~なんというかすっごくでかいとかげに羽はやして、なんとういうかかっこよくした感じかな。」


「お、おまそれドラゴンじゃないかっ!」


「どらごん?なんだその生物は?」


「ドラゴンっていうのは神話に出てくる伝説の生物だよ。」


ベーラルが珍しく会話に入ってきた。


「へ~、それで僕が出会ったのはその伝説の生物なのか?」


「んー違うだろ、たぶん。」


「いやいやいや、明らかにドラゴンでしょ!」


何故か二人は熱い議論を交わしている。ドラゴンってそんなにすごい生物なのだろうか。そういえば出会った時どうしたっけ・・・


「あ、そういえばメリーが眉間にめがけて槍を刺したら簡単に死んだな。」


「「え?」」


「本当に伝説の生物ならそう簡単に死なないと思うが。」


「そ、そうか・・・」


なんて話しながら歩いていると、中間地点へ着いた。外はもう薄暗くなっている。


「じゃあここで一泊するか。」


「何でお前がしきってんだ?」


「お前のせいで着くのが遅れただろうが。」


「ちょっとひどくないっ!」


またベルが拗ねてしまった。


「兄さん、あっちで私と一緒に水汲み行きましょ?」


「ああっ!今行くっ!」


ベルとハーシィさんは水汲みへ行った。二人の後ろ姿を見ると本当に双子だなぁと思う。


「何か二人とも髪伸ばしてるから姉妹に見えるな。」


「まあ、そうかもな。」


「金髪美少女・・・いいなそれ。」


ユーテリアが妄想に入り込んでしまったので、僕は薪をとりにいこうとするとメリーに裾を引っ張られる。


「私も行く。」


「いや、ユーテリアはどうすんだよ。」


「・・・私を連れていくのは嫌?」


「嫌じゃないがこんな森の中で一人にするのはダメだろ。」


「ガイも一人になる、やっぱり私じゃ嫌なの。」


「ん~いやまあ、その・・・」


図星をつかれて困るが、出来ればユーテリアとメリーには仲良くしてもらいたい。班内にそういう空気は出来れば無くしたい。


「何で私を拒絶するの?ねえどうして?どうしてなの?」


「いや別にそんなつもりは・・・」


「なら私もついていっていいよね?」


「・・・・・分かったよ。」


まあ無理をすることでもないしとメリーの同伴を認めてしまった。いつから僕はメリーに甘くなったのだろうか。



薪取りも終わり、二人が帰ってくるのを三人で待っていた。しかし帰りが遅い。


「なあガイノス、ベーラルたち遅くないか?」


「そうだな・・・もうテントも張り終わったし探しに行くか。」


立とうとしたときメリーにまた裾を引かれる。


「ガイ、あの二人は大丈夫だから気にしちゃダメ。」


「え、いやでも・・・」


「おいガイノス?先に行ってるからな?」


するとユーテリアだけ先に行ってしまった。何故メリーは僕を止めたのだろうか?


「なあメリー?何で止めるんだ?」


「あの二人はできてる。」


「は?」


「人の恋路を邪魔したら馬に蹴られるよ?」


「お、おう?」


何故馬に蹴られるのかと思っているとメリーからの一言で全てを察した。


「簡単に言うと今二人は愛し合ってるの。だから邪魔しちゃダメ。」


そして帰ってきたユーテリアの顔は真っ赤に染まっていた。


「・・・ガイノス、先に飯食おうぜ、な?」


「・・・そうだな。」


僕とユーテリアはしばらくの間ベルとハーシィさんの顔を直視出来なくなった。



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