十六話
クラスに入るとそこには何故かユーテリアさんがいた。同じクラスだっただろうか。
「おっす!ガイノスさん、久しぶりです!」
「・・・えーと、久しぶり?」
「今日からこのクラスになったので挨拶に。」
「お、おうそうか。よろしくな。」
朝から唐突に新しい?クラスメイトに挨拶されていた。そういえばユーテリアさん実家に帰っていたとは聞いていたがクラス決めの前に帰っていたのか。
「おうユーテリアっ!おはよう!」
「ベーラルもおはようっ!」
「え、どういうこと。」
「実は昨日から会っていてな、仲良くなったんだよ。」
「何その急展開、僕ついていけない。」
「まあこれからよろしくですガイノスさん。」
「ああ、まあ、・・・」
どう反応したらいいものか、まあどうでもなるか。
「ガイノスでいいよ、僕もユーテリアって呼ぶからさ。」
「わかった、改めてよろしくなガイノス!」
そう言うと僕らは握手を交わす。メリーに知られたらどうなることか。
「そういえばガイ、一週間後に遠征あるって知ってたか?」
「あ、そうなのか?」
「一泊二日だけどな、それでひとつ提案があるんだ。」
「提案ってもしかして、ユーテリアをこの班に入れるってことだろ。」
「お、さっすが。それでハーシィからは許可もらってるからさ、メリーさんからの許可とってもらえないかな?」
「え、嫌だ。」
デートでメリーの気をそらしたのに何が起こるかわかったものではない。
「なあガイノス、メリーって誰のことだ?」
「ああ、ユーテリアは会ったことないのか。僕の恋人だよ。」
「な!?お前リア充だったのか!」
「り、りあじゅう?なんだその言葉は?まあ何でもいいけど。」
「そんなことよりガイ、どうにかならないのか?」
「いやだって・・・」
とりあえずメリーを説得することの難しさを端的に説明した。するとユーテリアは顔を青くさせる。
「も、もしかして俺やらかしたかな?」
「いやユーテリアは悪くないだろ。まあメリーはどう思うかはわからないが。」
「私が何?」
一瞬時が止まった。後ろからメリーが話しかけてきたのだ。大変に心臓に悪い。
「い、いや。そ、そのだな・・・ユーテリアってやつ覚えてるか?」
「お、おっす。俺がユーテリアです。」
「・・・そう、あなたが。」
何故かメリーの目に光が消えていた。
「そ、それでだな、このユーテリアを班に入れるって話しなんだけどどうかな?」
「・・・・・・・」
メリーは黙ってユーテリアを睨んでいる。もうなんかこっちまで怖くなってきた。するとハーシィさんが来た。
「おはようみんな。ってどうしたのそんなに怖い顔して?」
「ハーシィ、少し兄さんとあっち行こうか?ユーテリアも、な?」
「ど、どうしたの兄さんそんなに慌てて?」
ベルはそのまま二人を連れてどこかへ行ってしまった。そしてメリーは何故か僕に抱きついてくる。
「ガイ大丈夫?何かされてない?」
「なあメリー、少し相談したいことがあるんだが。」
「もしかしてあいつ殺してほしいの?いいよ、私が殺してあげる。」
メリーの手元には槍があった。いつから持っていたのだろうか。大変に怖い。
「い、いやそんなことじゃないから。だからその槍をしまってくれ。」
「・・・・・本当に何もされてないの?我慢しちゃダメだよ?」
「ああ、だから何もされてないよ。それより相談があってな」
「あの男を班に入れる、でしょ?ガイがいいなら私はいいよ。」
「そ、そうか?ありがとうな。」
思いのほか簡単に説得できた気がする。でも何故か抱きしめる力が強くなる。
「ガイは私が守るから、絶対に。」
「メリー・・・」
「お!お熱いね二人とも。」
「ちょっと兄さんっ!もうなんかすいません。」
「ベルにハーシィさん、いやいいよ別に。それでベルの後ろにいるユーテリアはなんなんだ?」
ユーテリアは背が高いのですぐ気づけた。ていうかあれで隠れたつもりなのだろうか。
「い、いや~。だってメリーさん怒ってらっしゃるかと」
「大丈夫だよ。メリーもユーテリアの班入りに賛成したし僕らは今日から仲間だよ。」
「そ、そうか!ありがとうな。」
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なんとか波乱の朝は切り抜けることができた。でも僕は昨日の出来事で頭がいっぱいだった。
『ガイノス君、準優勝おめでとう。』
『オメガさん、見てたんですね』
『ああ、それで君には次のステップに進んでもらう。』
『次のステップ、ですか?それはあの斬撃のようなものですか?』
『・・・それは来週になれば分かる。君の成長には驚かされるよ。ガイノス君、“あの子をどうか頼むよ”』
『っ!それはどういう意味ですか!』
それから僕にはある仮説が浮かんだ。もしかしてあの人は・・・
「どうしたのガイ?もうお昼だよ?」
「・・・メリー、そうだな。じゃあ売店で何か買うか。」
「そ、その実はハーシィちゃんから料理教えてもらったの。だからね、弁当作ってきたの。食べてくれる?」
「ああ、食べるよ。僕のためにありがとうな。」
「えへへ♪」
僕はメリーの頭を撫でる。あの子とはメリーのことなのだろうか?だとしたらあの人は・・・今でもそんなことを考えてしまう。
「ガイ、大好き♥️」
「・・・僕もだよ。」
メリーの笑顔を見ながら僕は来週の遠征に集中しようと思った。
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