十二話

メリーを何とか説得し観客席へ戻らせたあと、僕はベルのところへ向かった。メリーと話している間に試合は終わってしまったが勝敗はまだ審判員によって審議されているようだ。


「なあガイ、ちゃんと見ててくれたか?」


「あ、ああ。も、勿論だよ。」


実はよく見てなかったが誤魔化しておく。


「はは、そんな嘘つかなくてもいいよ。メリーさんと一緒にいたもんな。」


「・・・そうか、悪いななんか。ていうかよくわかったな。余裕だったのか?」


「そんなことはないよ、ただチラッと見ただけ。本当に強かったよ。」


それでもあの人とやり合うことが出来るベルは本当にすごいと思う。彼は短剣を使っていて僕の苦手な接近戦を主体としている。できれば戦いたくはない。


「そういえば次お前の番だぞ、早く行ってこい。」


「え、そうだっけ?」


おもいっきりアナウンスを聞き逃したのか僕は。


「そうだよ、だから早く行ってこい。頑張れよ。」






僕は急いで準備をし、試合会場へ向かった。ぎりぎり間に合ったようで、すぐに試合が始まった。相手は同じ一年のようで武器は長剣を使用している。そして僕はオメガさん以外で初めて鎌を使う。そして今だにこの黒い鎌は紫色に光っている。でも使用感には何も影響はなさそうなのはよかったと思う。



そして両者武器を構える。ベルとはまた違った構えかただった。名前も顔も知らない相手と会ってすぐに試合するのはすごく緊張するものだ。


相手はこちらの様子をうかがっているようだ。間合いを詰められたらこちらが圧倒的に不利だ。僕はひとつの賭けに出た。鎌の間合いを信じてそのまま突っ込む!



そして相手が反応する前に僕は鎌を振るった。狙うは急所ただひとつ。オメガさんに最初に教えられたことだ。




その時鎌から“紫色の斬撃が相手に当たった”。鎌自体の攻撃は避けられたようだがその斬撃に当たったことで相手は倒れてしまった。



──勝者、ガイノス・バーンっ!!───




名前を呼ばれたとき初めて僕は勝ったのだと自覚した。正直勝利した喜びよりもこの“斬撃”のことで頭がいっぱいだった。今まであんな技を使えたことはない。ましてや僕には“魔力”は無いためあれは魔法ではないと思う。ということはこの武器に何かあるのだろうか?



「一回戦勝利おめでとう、ガイノス君。」


「学園長、ありがとうございます。」


「なかなかすごい斬撃だったね、私の期待以上だ。」


「期待以上・・・ですか。」


一体僕に何を期待しているのだろうか?そういえばこの鎌をくれたのは学園長だ。何かこの斬撃について知っているのかもしれない。


「あ、あの・・・」


「“斬撃”について聞きたいのだろう?」


「・・・よく分かりましたね。」


「まあそれぐらいなら教えよう。あの斬撃は鎌の内部にある魔力から発生している。いわばあれは魔法のようなものだ。」


「鎌に魔力があるんですか?」


「ああそうだ。大気中の魔素などを吸収して魔力を補充している。まあそれを使える人物は限りなく少ないがな。」


「・・・この鎌は本当になんなんですか?」


「まだ教えることは出来ないな、まあ次の試合も頑張りたまえ。」


そう言うと学園長は去っていった。あの斬撃は魔法らしいが何故僕は使えたのだろうか。謎は残るが今はこの模擬戦に集中しよう。






─────────────────────────────



──勝者ガイノス・バーンっ!!──



僕は着々と勝利を重ねていった。斬撃の扱いに馴れてきたこともあり予想よりも戦いやすくなった。そしてついに決勝へ進むことが出来た。


そしてベルの勝敗結果だが・・・


「おいガイ、また勝ったな!もしかしたら優勝いけるんじゃないか?」


「まあそうだな、頑張ってみるよ。」


「“俺の代わり“に頑張ってくれよ。」


「・・・ああ、わかったよ。」


ベルは負けてしまった。


「そういえば生徒会長の試合が始まるぞ、もしかしたらお前の次の対戦相手かもしれないぜ。」


「そうか、それで生徒会長の相手は?」


「まあ会場へ行ってから確認しようぜ。」


「おーい、二人ともっ!」


向かおうとしたとき後ろから声をかけられた。ハーシィさんだろうか?振り向くと急に抱きつかれた。


「・・・ガイ?どこに行くの?」


「なんだ、メリーか。あとハーシィさんも、どうしたんだ?」


「兄さんを慰めるついでにガイノスさんの応援にきました。」


「ハーシィ、お前・・・・・」


そして何故かこの兄妹は何故かいちゃつき始めた。そしてメリーは離してくれない。


「なあメリー、そろそろ会場に行きたいんだが・・・」


「・・・・・・・分かった。」




そして何とか会場へ着いた。今だにメリーは僕にくっついて離れてくれないが。


「お、あれが生徒会長の対戦相手じゃないか?」


ベルの指さす先には学園長が言っていたあの青年がいた。


「名前はなんていうのですか兄さん?」


「えーと・・・ユーテリア・ハーレって名前らしい。そして一年生らしいな。」



そう話している間に試合は始まった。生徒会長は長剣だがユーテリアさんの武器はどこか不思議だった。



「なあベル、あの武器はなんだ?何であんな反りがあるんだ?」


「確かにそうだな、なんだあの武器は?」


そしてそして体の重心を前に傾け、剣は鞘の中に入れたままの独特の構え方に違和感を覚えた。何かの流派だろうか?



そして試合開始の合図がされたその瞬間、生徒会長がその場に倒れこんだ。





───勝者、ユーテリア・ハーレっ!!───




一瞬何が起こったのか分からなかった。ユーテリアさんの方を見ると剣が鞘から抜かれていた。あの一瞬で鞘から剣を取り出し相手を切る。とんでもない技量の持ち主だ。


「・・・なあガイ?あいつの動き、見えたか?」


「いや、全く見えなかった。一体どうなってるんだ?」


「・・・ガイ見えなかったの?」


「メリーは見えたのか?」


「普通に見えたよ?」



・・・・そうだった、メリーも相当の化け物だ。こんなことで怖じ気づいてる場合じゃないな。


「まあ見えなくても戦いかたはいくらでもある。頑張るか。」


「お、頑張れよガイ!」


「頑張ってくださいガイノスさん!」


そしてメリーからは口づけをもらった。最近メリーがキスに慣れてきてる気がする。メリーが暴走したとき次はどうやって止めようか。



「ガイ、頑張ってね。」





可愛いからいいか。






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