十一話

「いよいよだなガイ。」


「・・・ああ、そうだな。」


今日はいよいよ模擬戦だ。結局魔法を扱うことはできなかったがやれるとこまでやろうと僕は決意した。ちなみにメリーはハーシィと一緒に応援してくれるそうだ。


「そういえばひとつだけ聞きたいことごあるんだが。」


「どうしたベル?緊張してんのか?」


実はベーラルも模擬戦に出るそうだ。今日初めて知った。


「いや、そうじゃなくて・・・メリーさんってお前にだけベタ惚れだよな、何でなんだ?」


「そんなこと言われてもな・・・」


「初めて会ったときからこうなのか?」


「・・・確か最初は殺すとか言われたかな。」


「・・・マジで?」


確かあの頃のメリーは槍を使ってたっけ。まだ二年しか立ってないのに妙に懐かしく感じた。


「まあそのあとなんやかんやあったんだよ。」


「何があったんだよ!・・・まあ聞かないでおくよ。」


するとアナウンスが鳴り響く。


──一年ベーラル・ノック 準備をお願いします───


「おいベル、呼ばれてるぞ。」


「ああ、それじゃ行ってくるよ。」


僕はベルと別れたあと武器の手入れをしていると、鎌が少し光った気がした。その時何故か笑っている学園長がいた。


「やあガイノス君、元気かい?」


「学園長、久しぶりです。」


「もう、私のことはマリエスと呼んでくれてもいいんだぞ?」


「え、あ・・・いや、結構です。」


「全く、最初にあった頃はそう呼んでくれたじゃないか、つれないな君は。」


そう言うと何故か僕の背中に抱きつく。一瞬びっくりしている僕に耳元で何かを囁かれた。


「ちょ、学園長っ!今なんて言ったんですか?」


「なんだ?聞こえなかったのか?だからメリー君も特別枠として出場するよ。」


「ええええええっ!」


そんなの初めて聞いた。一体いつ決めたんだ?


「それはそうと今君の友達とうちの生徒会長が戦ってるよ、見なくていいのかい?」


言われるがまま試合を見るとベルと学園長がいう生徒会長が戦っている。あの生徒会長どこかで見たことがある気がする。


「あの生徒会長はハノル・ヴィレッジ、私は勝手にハルと呼んでいるがね、少なくてもこの学園内では教師以上の実力を持った天才だよ。」


「ハルさんって確かあのときの・・・」


「ああ、あのハルだよ。とてもイケメンだろ?」


確かにあの甘いルックスにあのベルをも圧倒する強さ。僕の目を使わなくても分かる、あの人は強い。


「ていうか何でメリーまで出るんですか?」


「出た方が盛り上がるだろう?それに出るといっても模擬戦優勝者が戦うんだ。たいした問題じゃない。」


「そ、そうですか・・」


「それと君に言った模擬戦の優勝だが少々厳しくなりそうだぞ。今回は彼が出るようだからな。」


そう言うと学園長の指を指す方向にいる青年を見つけた。


「彼は一週間前まで実家に帰っていたんだが急に戻ってきてね。君と同じ一年だがハッキリ言って私の目では彼の能力を見ることが出来ない。」


「そう、なんですか。」


半信半疑で彼を“見よう”とすると突然激しい頭痛に襲われた。あまりの痛さにその場に座り込んでしまった。なんなんだあいつは。


「やはり君もこうなったか。私も君と同じ症状に襲われたよ。ハッキリ言って彼は規格外だ。」


「あれは本当に人間なんですか?・・・勝てる気がしませんが。」


「何、正攻法で勝てとは言ってないだろう。降参を言わせればこちらの勝ちだ。」


優勝を狙う以上確かにこういう方法でないと彼に勝つのはほぼ不可能だろう。


「ていうか優勝したら本当に何くれるですか?」


「それは優勝してからのお楽しみだよ。」


「そうですか・・・」


これ以上問い詰めるのはやめて中断していた鎌の手入れをする。するとまた光りだした。ここ最近やたら光ってる気がする。


「君には本当に驚かされるな。その鎌をもうそこまで飼い慣らすなんて。」


「・・・何か知ってるんですか?」


「戦ってみれば分かることだよ、では私は去るとしよう。」


そして学園長はどこかへ消えてしまった。もっと教えてくれてもよかったのに。そう思った矢先、また誰かが背中に抱きついてきた。


「・・・ガイ?さっきあの女と何話してたの?」


「・・・メリー、見てたのか。ていうか観客席にいたんじゃないのか?」


「質問に答えて?それとも私には言えないこと?」


「ただの世間話だよ、何もやましいことはしてないから。」


「あの女に耳元で囁かれたよね?あとこんな風に後ろから抱きついて。・・・ねえガイ、あの女はどこ?」


もはや声に感情がない。どんどん抱きつく力は強くなっていく。


「な、なぁメリー、少し落ち着こう?たしかにそんなことはされたがあの人はそういう人なんだよ。」


「・・・・・何であの女のことをかばうの?どうして?ねえどうしてガイ?もしかしてあの女に何か脅されてるの?何か酷いことでもされたの?・・・あの女、殺さなきゃ。」


するとメリーは僕のことを胸で抱き締めた。そして頭を撫でなれながら言葉を囁かれる。


「大丈夫だよガイ。私が守ってあげる。だから心配しないで私を頼って。私だけを見て。ガイは悪くないの、あの女が悪いの。・・・だからガイ、あの女殺してくるから待っててね。」


・・・・はっ!一瞬思考が止まっていた。このままだと間違いなく戦争よりひどいことが起こる。そう思った僕はメリーを止めようと強く肩を掴んだ。


「メリー、少し落ち着こう、な?」


「・・・・・・ガイ?どうして邪魔するの?大丈夫だよガイ、あの女は私が殺すから。」


「いやだから」


「ガイ?・・・・・・やっぱりあの女が悪いんだよね、私が殺さなきゃ、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


「メリー。」


僕はメリーに口づけをする。一旦意識を僕に向けさせて落ち着けさせることにした。まだ口づけに慣れてないメリーにとってはきっと効果があるはずだ。


「んっ・・・・ちゅっ♥️・・・ぷはぁ♥️ガイもっと、もっとちょうだい?」


「ちょ、ちょっとメリーっ!?」


しばらくメリーは離してくれなかった。





「・・・メリー、少しは落ち着いたかな?」


「うん、ごめんね、ちょっと勘違いしてた。」


何とかこの場をやり過ごすことが出来た。試合に目をとおすと既に決着がついていた。・・・どっちが勝ったのだろうか。


「ねえガイ?」


「ん、どうした?」


「今回はあの女のことだから目をつぶるけど、他の女とこんなことしてたら、うふふ♪」


やっぱり少し愛が重たい。僕に依存しすぎるのはあまり良くない気がするが・・・



──いっそ世界を滅ぼして私のガイだけの世界を創ろうかしら♥️私とガイだけの楽園を♥️──



僕はしばらく思考を停止させた。



















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