十話

放課後、僕はベーラルの実家にやって来た。何でもここで話したいそうだ。なんだかとても緊張してきた。


「おいガイノス君?そんなに緊張するなよ?」


「いやいや、こんな豪邸に住んでるなんて初めて知ったから緊張するに決まってるだろ。」


庭だけでも広いのに中に入るともはや迷路だ。それにメイドや執事などの従者がたくさんいて緊張しないほうがおかしい。


「ほらここが応接室だ。」


ベーラルは何故か応接室に案内した。そこに入るとハーシィさんの他に二人大人の男女が立っていた。


「初めまして、ベーラルとハーシィの母のシルフィですガイノスさん。」


「あ、こちらこそ初めまして。えーとそちらにいるのは・・」


「父のユーテリスです、息子たちがお世話になっているね。」


「・・・・・・いえ、こちらこそお世話になってます。」


僕は思わず目を見開いた。ユーテリスさんの能力は無かったが、魔力量にとてつもない潜在能力があることに気づいた。しかしそれ以外は平均以下に見える。本当に貴族なのだろうか?


「はははっガイノス君は今貴族にしては弱いと思ったんじゃないかな?」


「っ!ど、どうしてそれを?」


「他の人とは見る目が違うからだよ。それにベーラルから君のことはよく聞いていたからね。確か“神の目”、だったかな?」


驚いた。まさかベーラルと全く同じことを言われるとは。やはり親子だなと思った。


「ええ、合ってますよ。それと勝手に覗いてしまってすみません。」


「いいよ別に、私は確かに元平民だからね。私は婿として来たんだよ。」


「ふふふっ、ガイノス君はベーラルから聞いてたよりも冷静なのね。」


「そうですか?」


とりあえず僕は座ることにした。それにしても家族の前で話すということはそれだけ重要なことなのだろう。


「それじゃまずこの目のことを話そうか。」



─────────────────────────────


ベーラルは色んなことを話してくれた。



目については僕が考えていた通り義眼だった。三年前に停戦した戦争で負った傷で、治癒魔法でも治らないため義眼になったそうだ。


義眼の中には魔力結晶が埋め込まれており、そこから魔法の威力を底上げしているそうだ。


だが、特にベーラルの話で興味を引く話があった。


「ガイノス君は何故この戦争が停戦したか分かるかい?」


藪から棒にこんなことを聞いてきたベーラルに僕は驚いた。


「何故って・・・そりゃお互いに被害が深刻だったからだろ?」


「確かにそれもある。だが本当は“魔王国”の介入があるんだ。」


魔王国。確かあそこは中立国家のはずだったと思ったが。魔王絡みとなると百年ぶりに勇者が召喚されそうだ。


「ん?ていうことはもしかして勇者は召喚されてるのか?」


するとユーテリスさんが代わりに答えてくれた。


「それについては私から話そうか。確かに君のいう通り王国の姫様がニ、三年前に勇者を召喚している。」


これで話しが繋がった。学園長が言っていた王族の動きはこういうことだったのか。


「召喚された勇者は三人だったが一人は追放されたみたいでね。」


「追放?勇者なのに何故?」


「理由については私もよくはわからない。だがその追放された勇者がどこにいるのかは私もわからない。」


帝国側も騒いでいるのはこういうことか。


「それで、何故僕にこの話を?」


「・・・君はオメガという人物に出会っているね。」


「っ!何故その事を?」


「私が言わなくても分かるんじゃないかな?」


ああ、そういうことか。学園長が何故僕を強くしようとしてたのか分かった気がする。メリー、いや“漆黒の姫”と関わるとはこういうことだと理解した。


「そうですね、結構あの人はお節介で嫌な人です。」



─────────────────────────────


帰り際僕はベーラルに呼び止められていた。


「なあガイノス君、今日は話を聞いてくれてありがとうな。」


「なんだそんなことを言いに来たのか?律儀だな。」


「そんなことないよ、だってこの目のせいで俺あまり友人ができなかったからさ。」


「フフっそんなことで僕が軽蔑すると?そんなわけないだろ。」


まあベーラルの気持ちは分からないわけではない。僕も魔法が使えずに友人ができなかったからな。


「本当にありがとうなガイノス君。」


「なあそのガイノス君ってやつやめようぜ。ガイって呼んでくれよ。」


「・・・そうか?なら俺のことはベルって呼んでくれ。」


「ああ、分かったよベル。」


「それじゃ気を付けてねガイ。」


そうして僕は寮へ戻った。今朝のことでメリーに何かされないかなという不安に駆られながらゆっくりと帰った。


─────────────────────────────


部屋に戻ると中は真っ暗だった。もしかしてまだメリーは帰ってきてないのだろうか?そう思い明かりをつけるとベットに座るメリーがいた。


「あ♪やっと帰ってきた。」


「・・・いたのかメリー。」


正直すごく驚いた。気配なんか全く感じずに座っているメリーはどこか怖かった。


「私ね、ずっと見てた。ガイのこと。」


「え?」


「ガイの話も聞いてたの。」


「・・・え?」


「ガイはなんで私を頼ってくれないの?」


すると僕はベットに押し倒された。


「私ね、ガイのお陰で明るくなれたの。ガイがいないと生きていけない。」


「お、おう?」


「だからガイも私がいなきゃ死んでしまうぐらい依存して?」


「ど、どうして?」


「そうすれば幸せでしょ?」


そんなわけないだろとツッコミをいれそうになった。


「私、ガイの言うことなら何でも叶えてあげる。」


メリーは今正気じゃない。一旦冷静にさせなくてはならない。そうこう考えている間にもメリーは僕の耳元で色んなことを囁く。


(私だけを見て)


(他の女なんか忘れて私だけに依存して)


(私はガイだけの物だからね、だからガイも私だけの物なの。)


その時、ベルから聞いたことを思い出した。


(女っていうのはな、押しに弱いんだよ。)


だがメリーを押し倒すのは至難の技だ。どうにかして意識をそらさないと。・・・耳元で囁くか。


「なあメリー?」


「ん?どうしたのガイ?」


『愛してる』


「ひゃっ♥️」


よし今だ!俺はメリーを押し倒すのに成功した。しかし形勢逆転を果たしたが一体どうすればいいのだろうか。


「ガ、ガイ?」


「・・・・・・落ち着いたか?」


「・・・う、うん。でもガイ?」


「どうした?」


「本当に私のこと愛してる?」


「当たり前だろ。僕たち恋人なんだから。」


「ガイ♥️・・・ごめんねあんなことして。最近私に構ってくれないから捨てられると思って・・・」


「・・・悪いな、さみしい思いをさせて。」


毎日一緒にいるので少し忘れていたがメリーは極度の寂しがり屋だ。・・・大事なことはあとでいいか。今はメリーが優先だ。


「ねえガイ?・・・・・・キス、して?」


何故だろう、今のメリーはとても美しく見える。メリーからのお願いに僕は無意識に口づけをした。すると何故かメリーは舌を絡ませてきた。・・・やばっ、すごく気持ちいい。


「ちょっとメリー、少し落ち着いて、んっ!?」


今までに感じたことのない快楽が襲ってくる。


「んっ♥️・・・・・・ガイ?」


そう言うとメリーは何も言わずにずっと僕を見ている。その目にはどこか期待している様子で僕はもう我慢の限界だった。


「メリー・・・」












今私の隣でガイが可愛い顔で寝ている。その顔を見るだけで私の心は満たされていく。・・・ああ♥️今日も私のガイは可愛い♥️



私はガイの頭を撫でながらガイとベーラル君たちが話してた内容について考えていた。私はそこまで頭がまわる方ではないので全部を理解は出来なかったけど私はひとつだけ分かったことがある。


───ガイに危害をくわえるなら国だって滅ぼす。───


勇者でも国であったも絶対にガイを守る。あの日からガイは私の全てなのだから。そう考えながら私はガイの首もとにキスをする。


「ふふふ♥️私だけのガイ♥️これからも私だけを見て私だけを愛してね♥️」






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