九話

次の日、目が覚めると何故かメリーに馬乗りされていた。それでいて何故か上着しか着ていなかった。


「あ♥️ガイ♪おはよう♪」


「・・・・・どいてくれないか?」


「もぉ~まず挨拶でしょガ~イ?」


なんか様子がおかしい。いつも冷静なはずなメリーがこんな甘い声を出していることに僕は驚いてしまった。


「何かあったかメリー?」


「・・・・・・ねえ、私と子作りしよ?」


「へ?」


昨日ヴェルに言われたことをメリーからも言われるとは。もしかしてヴェルに僕がとられると思っているのだろうか。


「だってガイ、こうでもしないと私を襲ってくれないじゃない。ねえ、私を襲って?」


「い、いや・・・でも、その・・・」


「大丈夫だよガイ♪私も初めてだけど頑張るから。」


「いや、そういう問題じゃ・・」


「・・・ガイ?私のこと嫌いになった?私と子供つくるの嫌?」


その目に光はなかった。ただ黒く濁った目だった。


「だから違くて・・」


「あ、もしかしてあの学園長から何か言われたの?大丈夫だよガイ、私がなんとかするから。」


このままだと不幸な未来がやってくる気がする。とりあえずメリーを落ち着かせないと。


「メリー、僕たちは学生だ。まだ子をもつには早い。せめて卒業してからにしよう。な?」


「・・・わかった、なら性行為をしましょ?」


「いや、何も変わってないだろ。」



メリーをどうにか説得して部屋を出ると何故かヴェルがいた。

そしてすぐさま僕のところに抱きついてきた。何か嫌な予感がする。


「ねえガイ君、私ね昨日帰ってからたくさん勉強したんだよ♪」


「そ、そうか。それは偉いな。」


「だから、今ここで私と性行為しよ?」


「・・・・・・は?」


ヴェルのことはだからすぐに調べるとは分かっていたがいくらなんでも早すぎる。ていうか体が動かない。


「ガイ君?逃げちゃダーメ♥️今ここで私と交わるの♥️」


「いや、・・・だって今から学園に行かないと・・・」


「大丈夫、すぐに終わるから♪私も初めてだからうまくできるかわからないけど頑張るね♪」


「・・・ちょっと待つんだヴェル、僕たちは兄妹だ。」


「”私ね、知ってるんだよ実は”・・・」


その時、ドアから勢いよくメリーが出てきた。でも何故か目に光がない。


「ふふふふっ、何で私のガイに抱きついているの?今すぐに離れて。」


「私の?あなたは何を言ってるの?ガイ君は私だけのものなの。近寄らないで。」


昨日の続きがまた始まってしまった。もうなんというか僕は放心状態だ。でも僕だって成長している。僕は二人の隙をついて学園へ向かった。・・・オメガさんとの修行がここで役立つとは。



─────────────────────────────


実技の時間、僕はベーラルと剣で戦っていた。勿論僕は剣なんか扱えないのですぐに負けてしまうが。


「ちょっとベーラル、少しは手加減してくれ。」


「はは、悪い悪い。」


悪いとは言ってるが明らかに急所を狙っていた。これが本当の闘いだったら僕は死んでいるだろう。それにしてもベーラルは戦いにすごく慣れている印象を受けた。


「本当にベーラルは強いな。何かやってるのか?」


「・・・・・秘密。」


「なんだよ秘密って。まあいいけど。」


何か隠しているのは分かるがあまり問い詰めないことにした。人には必ず一つぐらい秘密があるものだ。


「そういえばガイ君、朝から大変だったらしいね。」


「・・・まあな。」


「いっそ二人と付き合えばいいんじゃないかな?」


「そんなことしたら刺されるわ!」


ただでさえ危ないのにそんなことしたら僕の命なんかすぐに消えてしまう。


「はははっ!冗談だよ。」


「冗談っておまえなぁー。」


「まあ何かあったら相談くらい聞いてやるよ。」


ベーラルが笑ったとき、また目が光って見えた。今度は確実に“右目”が赤く光るのを見た。一体どういうことなのだろうか。そんな僕に気づいたのかベーラルが話しかける。


「どうしたガイ君?もしかして“右目”のこと気づいたのかい?」


「・・・ああ、まあな。それは一体なんなんだ?」


するとベーラルは少し考え込んだあと、僕だけに聞こえる声でこう言った。





───放課後、全てを話す。───





「それは僕が聞いてもいい話・・・なんだな?」


「ああ、君になら話してもいいかなって思ったんだ。誰にも言わないって約束できるかな?」


「当たり前だろ。僕たち、親友なんだから。」


ベーラルは何故か驚いた表情をしたが、すぐに笑顔になった。


「親友・・・そうか!親友か!・・・ふふっちょっと嬉しいな。」


「まあこの話はまた放課後ってことで今は授業に集中しようぜ。」


「ああ、そうだな!」


そのあともベーラルはとても嬉しそうだった。ただベーラルが話そうとしていることはなんなのか?

何があっても彼のことを受け入れよう、そう思った。


(ガイ君、いずれ君には話さなくてはならないことだったしね。)

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