十三話
「ガイ、いよいよ決勝だな。」
「ああ、優勝できるように頑張るよ。」
そう強がってはみるがあれを見せられたあとでは足がすくんでしまう。果たして勝てるのだろうか。ずっとそんなことを考えていた。立ちはだかる壁としてはあまりに高すぎる。
「あんまり緊張するなよ。学園長に何言われたのかはわからんがやれるだけやってこい。」
「ベル・・・」
「それにお前は一人じゃないだろ?俺らが声張って応援してやる。だからいつも通りの戦いを見せてくれ。」
「・・・わかったよ、ありがとうな。」
「へへ、試合終わったらパァーっと騒ごうぜ!」
「僕は決して奢らないからな。」
「ちょ、なんでだよー。」
ベルのお陰で緊張がほぐれてきた。重かった足取りが今は軽く感じる。本当にベルにはかなわない気がする。
そしてついに会場へ着いた。周りの観客席を見ると一番前にベルたちがいた。メリーは僕の視線に気づいたのか笑みを浮かべた。
そして対戦相手が出てきた。あの生徒会長を一撃で沈めたユーテリア・ハーレだ。僕の目では見ることのできない能力を持っている人物、それにあの反りがある剣。相手の力は未知数だ。
「やあガイノス・バーン君、よろしく。」
「あ、ああ。こちらこそよろしく。」
僕たちは握手を交わした。とても優しい青年に見える。
「君の戦い、見てたよ。すごくかっこいいね君の技は!」
「あ、ありがとうございます。」
「それと君が使っている漆黒の鎌!それを悠々と振るその姿!すごくかっこいいよ!それとあの斬撃!いや~さすがファンタジーだね!」
「ふぁ、ふぁんだじーですか?」
ユーテリアさんは何故か僕の手を握りながら熱く語っている。すると突然寒気がした。・・・メリーかな。
「おっとそろそろ試合が開始するね、お互いいい勝負をしよう。」
「勿論です!」
すると彼は剣を鞘から抜いた。どうやら生徒会長とは別の戦い方をするらしい。僕も鎌を呼び出す。すると何故かまたユーテリアさんは興奮していた。もしかしたらすごく変わり者なのかもしれない。
そして試合開始の鐘が鳴る。すぐに仕掛けて来るかと思ったが相手はこちらの出方をうかがっているようだ。
ならこちらからと僕は鎌を振り斬撃を飛ばす。この試合までに威力を上げることができ、スピードも増している。これも僕の才能だろうか。
その刹那、相手が特攻してきた。あまりの速さに目では捕捉が出来ない。生憎僕の目にはそんな相手の動く見えるような能力はない。だが、相手の技の威力は前の試合で大体把握した。一撃でもくらえば僕はもう立ち上がれないだろう。
そして相手と撃ち合う。初めて撃ち合うこの反りのある武器にリズムが崩される。剣とはまた違う技に守ることしか出来ない。
一瞬の隙を見て蹴りを入れると大きく後方へ下がっていった。
今だっ!と再び斬撃を飛ばす。今度は相手に直撃し、黒煙が上がる。しかし視界が晴れると相手は魔法結界を使っていた。僕は顔を引きつかせる。結界を使える人物はそこまでいなかったはずだ。それだけ高度な魔法を使えるとなると今まで手加減されていた可能性がある。その場合僕の勝機は無いに等しい。
「思わず初めて魔法を使っちゃったよ、すごいねガイノス君は!」
「・・・それはどうも。」
「じゃあ少し本気を出そうかなっ!」
突然視界から消える。そして驚いている間もなく剣先がすぐそこまで見えた。慌てて守る姿勢にはいるが間に合わず鎌を飛ばされてしまった。そして鎌は”地面に刺さってしまった”。
一応護身術は使えるが武器を持った相手には分が悪い。そのあとも相手の猛攻に避けながら耐えるがこのままだと先に僕の体力が尽きてしまう。
「よく耐えるねガイノス君、だがいつまで耐えられるかな!」
そしてついに完全に相手が見えなくなった。強化魔法の類いだろうか。そして僕は蹴りをいれられ飛ばされる。
あまりの威力に骨が折れたかもしれない。立ち上がると激痛がはしる。それに気づいたのか相手は再び攻撃を仕掛ける。だが僕にはまだ“あれがある”。
相手をギリギリまで引き付ける。相手は見えないが攻撃するその一瞬なら見える。その瞬間僕は地面に刺さってしまった鎌を呼び出し最大限の力で斬撃を放つ。
黒煙が立ち込めるなか僕は膝をつく。僕が出せるだけの力は出した。しかし、黒煙が晴れる前に首元に刃が向けられる。
「ガイノス君、降参でいいかな?」
「・・・・・・ああ、僕の負けだよ。完敗だ。」
───勝者、ユーテリア・ハーレっ!!───
歓声が上がって会場は盛り上がっている。そして僕はその場に倒れこむ。試合が終わった直後ものすごい激痛に襲われていた。これは骨が折れたどころの話じゃない。内臓にまでダメージがある。
「ガイっ!」
メリーの声が聞こえた後、僕はおんぶされ会場をあとにした。
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「ガイ、大丈夫?もう痛い所、ない?」
「ああ大丈夫だよ、ありがとうな。」
僕はあの後メリーに治癒魔法をかけてもらった。そしてベルとハーシィさんは気をきかせてなのか僕ら二人きりにさせた。
「そういえばメリーもこの模擬戦、最後に出るんだよな?」
「・・・ガイが優勝したら棄権するつもりだったけど私、出るよ。」
「そうか、頑張れよ。」
「うふふ♥️ありがとう♥️」
すると何故かメリーは手を強く握り始めた。
「あの男に手を握られてたよね?私が上書きするから・・・」
「め、メリー?」
「あんなに気安くガイに触れて、もしメス豚だったら・・・うふふ♥️ガイに触れていいのは私だけなの。」
「ちょ、落ち着けって。」
今度は僕の体に触れ、そのまま顔を埋めた。
「ああ♥️ガイ匂い♥️私だけのガイ、それなのにすごい怪我をして。」
「ご、ごめんな。心配かけて。」
「ううん、いい。だってこれはガイが一生懸命戦ったっていう証だもの。」
「メリー・・・」
「でも、ガイが傷つくとこはもうみたくない。」
メリーの優しさに少しだけ嬉しくなった。負けて沈んだ気持ちが少しだけ楽になる。
「それは僕も同じだよメリー。」
「ガイ♥️」
メリーの試合の開始は翌日、それまで僕はゆっくり休むことにした。
その晩、ある人が部屋に訪ねてきた。
「やあガイノス君、調子はどうだい?」
「校長···なんのようでしょうか?」
「惜しくも君は2位だった。でもあのとき約束したからね、褒美を与えるって。」
そういえばそんな約束をした気がする。一体何をくれるのだろうか?
「君にはある魔法をかけよう。君には···いやこれは成長を少し早めるものだ。」
そう言うと校長は魔法陣を僕の前に展開し、魔法を唱え始める。その魔法はなんだか不思議だった。体が少し軽くなる、そんな感触だった。
「よし、これで終わりだ。今日はもう休みなさい。疲れているだろう?」
「え、ええ。それに明日はメリーの試合がありますからね。早く寝ますよ。」
僕はそのまま目を閉じ眠りに入った。
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