第8話 『ハッピーシュガーライフ』松坂さとう ①苦いのは嫌いなの。

 大人たちの多くが病んでいる世界において、誰も愛したことがなかった松坂さとう。


 しかし、今の彼女は砂糖少女となり、幼女しおちゃんと、マンションの一室で甘やかなハッピーライフを過ごしています。


「しおちゃん、甘いのが欲しいの」

「いいよ、ちゅ~」


 冒頭部は、砂糖少女の苦・甘(本作のヤン・デレ)な内面を基調に展開されていきます。ヤンデレさんのお宅におなじみの腐乱臭の残るゴミ袋は、ドMの変態教師を処分の協力者にするなどして、2人きりの甘い生活は危ういバランスの上に成立。


 しかし、早くも苦味が近づいてきます。アニメ第二話が終わる頃に、しおちゃんと関わることになる若き3人が一室に邂逅してしまいます……3人はそれぞれ当然に病んでます。

 その時、意識を失っている彼の口から、あの誓いの言葉が漏れ出してきます。


《病めるときも、健やかなるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、死がふたりを分かつまで……》


 その言葉を聞いた砂糖少女は、苦味が続く後味に、

(嫉妬?! 嬉しい!)

 と、初めての感情をむしろ喜びます。


 そうしている間に、さとうがいないことを不安に思ったしおちゃんは、マンションから外出してしまいます。


 外でしおちゃんはたいよう君に出会います。


「いたいのいたいのとんでけ~×N回……こうべ?」

「悲しくなるから泣かないでね……」

 彼にとって、しおちゃんは天使。


 …… 直後、たいよう君をボコる2人のヤンキー。

 …… そして、2人のヤンキーの両目をくり抜き処分する砂糖少女。


 かくして、2人のハッピーシュガーライフは元に戻ります。


 しかし、砂糖少女の前で

「ぐるぐる、ぐるぐる……らんらんるー」

 と、舌足らずな声ではしゃぐしおちゃんには、かつてのグルグルの記憶が。


 時間の矢は、不可逆に進んでいきます。

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