OFF MISSION 6. イライラmax
もっともプレイヤーを激怒させるアクシデントとは何か?
――――そう。
回線切断!!!
気付いた時にはリビングのソファに座り込んでいた。
まったく反応のない
これではただ視界を妨げるオブジェだ。
がちゃがちゃと頭から取り外してソファの横に置く。
っていうかおれはいつの間にリビングのソファでプレイしてたんだ!?
夢遊病患者のように歩いてここまで来ていたというのか。
なにそれ怖い。
もし妹がいたら悲鳴を上げて張った押されていたかもしれない。
え!?
妹に張った押される!!??
なにそれ怖い、なんの武術の達人だよ!
よし、一旦落ち着こう。
いまは突然の回線切断に混乱しているだけだ。
まずは冷蔵庫の中の飲み物を取り、水分補給をして休憩しよう。
今日も麦茶が旨い!!
いっつも麦茶を補充してくれてありがとうお母さん。
これがなかったらおれ熱中症でやばかったよ本当に。
…………あれ?
おれの両親、旅行じゃなかったっけ?
え、じゃあ麦茶は誰が???
……………………
こわーーーーーー
え、なになに?
誰がこれつくってんの??
なにホラーじゃん、おれの家どうなってんの?
夏だからってそういうの止めようよ。
特に日本のホラーは心霊的な怖さ半端じゃないからさ、マジで幽霊怖すぎるじゃん。
海外の幽霊的なのには物理攻撃が利きそうだけど、日本のはそういうの効かなそうで本当マジむりむりかたつむり。
まあ、たぶん……
妹がつくったんだろうねきっと!
それしかない、世の中には不思議なことなどなにもないのだよ、人工頭脳のリリィくん。
と、麦茶問題にケリをつけたおれは、改めて今回のミッションを反芻した。
超長距離ミッションを有終の美で飾る間際に発生した突発的なPvPの最中に回線切断。
運営仕事はよしろと毒突きたいのを必死に堪えて心を落ち着けているおれを誰か褒めろksg
いやしかし、実際のところはあのランキング二位のリッチハート某とのドッグファイトは成立していない。
なんたっておれのほうは帰投燃料の問題で逃げ回るしかない状況だったのだ。
確かに振り切ることが難しかったが、だからといって向こうのほうが腕が上だとは思っていない。
――――こっちは超時間ログインで体力も消耗してたしね!
それにしても嵐の中の低高度飛行はなかなか難易度が高かった。
条件は違うとはいえ、嵐の中で海難救助をするヘリパイに敬意を表したい。
ありゃあ度胸の据わった人間か、崇高な理想で救命活動する人間か、リッチハートみたいな
ん? この理屈で言うとおれは
ちなみにめちゃくちゃディスっているように見えるかもしれないが、要約するとおれは悔しくてたまらないのだ。
システムの補佐があるのにも関わらず、まったく振り切れなかったのは、もしドッグファイトをしていたら負ける、ということにもなる。
今まではPvEばかりだったので油断もあった、というところだろうか。
いやいやいやいや。
言い訳なんてもっとも卑しい行為だ。
おれの唯一の特技であるゲーム、それも
「られるかボケェ! めっちゃ腹立つ!」
そう簡単に相手の腕なんて認められるかっつーの。
だってランキングはおれのほうが上だしー?
ちょっと身体が整っていなかっただけだしー?
うんうん、そうそう、コンディションの問題だってことで。
つまり寝るに限る!
睡眠が充分に取れなければ人間のコンディションは落ちまくる。
水分補給してから身体をゆっくり休めるとしよう。
とはいえ、興奮しきった身体ではなかなか寝付けない。
今回の敗因、いや、反省点はなになか。
多分、ランキングナンバーワンの慢心というやつなのかもしれない。
ぶっちゃけ【FAO】のスコアはミッション等の評価ポイント制なので、つまるところPvPでの成績はあんまり考慮されていない。
別枠でPvPランキングもあるにはあるが、結局は様々なスコアの総合でランク付けされるので、様々なモードのどれか一つが優れていてもランキング一位にはなれない。
ちなみにおれはPvPでもランク一位なのだが、必ずしも操縦技術が高いプレイヤーと戦うわけでもない。
PvPはトーナメント制だが、途中で棄権するやつもいれば運悪く勝ち上がれなかった猛者もいて、当たり外れも多い。
また、技術はあるけどPvPには興味がないプレイヤーだってたくさんいる。
なので、真の実力を隠し持ったやつだってごろごろいるのだ。
今回のリッチハートもきっとそのくちであり、たまたま総合ランキングで二位、しかもPvPが得意ってやつだったってことだよ。
おれはほどよく冷やされたリビングで横になった。
むかむかする気持ちも、寝れば収まるだろう。
とりあえず、休んでリフレッシュしなければ気持ちも収まらない。
おれはゆっくり瞼を閉じて眠りに入った。
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