MISSION 51. これが防空網制圧
アンティル社会主義共和国領空ぎりぎりまで接近していた
低空飛行で潜入していた電子作戦機のプラージャとレジヴィは空中発射型の無人機を搭載しており、それは既に闇夜に閉ざされた防空圏内へと射出されている。
合計12機のもの無人機が、これまたややこしいことに
案の定、各所の防空レーダーに引っかかり、長中距離から短距離と満遍なく対空ミサイルが飛翔していく。
囮無人機に殺到する間にレーダー波探知、プラットフォーム機であるリディア大佐による異種間データリンク中継、つまりオーディアム連合、インドミタブル共和国、大中華ソビエト共和国とそれぞれ互換性のない戦術データリンクを訳して、戦況の情報共有を行う。
電子作戦機による敵指揮通信妨害の最中、瞬時に解析されたデータを元に防空網を特定し、それぞれ搭載されていたスタンドオフ兵器、つまり各種のミサイル射程外から
もちろん、このうちGPSが信用ならないこともあったが、何もすべての軍事衛星や民間衛星が汚染されているわけでもない。
合州国の早期警戒機や様々な偵察衛星、各地に潜入したであろうエージェントによる民生ドローンからの偵察映像、レーザー照射器を搭載した
「労働基準法って軍隊には通用しないのか?」
『国によるわね。ただこの場合、余りにも使える手札が少ない故の適切な処置よ』
当然、おれに割り当てられた短距離地対空ミサイル部隊は、プラージャから空中発射されたレーザー照射機搭載
ポップアップ投弾とは、爆弾を投下する直前に上昇して解き放つ遠投みたいなやり方で、これも防空網の射程外から距離を稼ぐ方法である。
しかし、こんな小技はそもそも
ただやってみたかっただけだ!
「作戦開始から30分くらいで防空網沈黙とか、おれたち最強じゃね?」
『一時的によ。すべての防空部隊を殲滅したわけじゃないから』
「んなこたーわかってるって」
今回の無人デバイス工場破壊は第二段階であり、第一段階はアタックチームの支援なのだ。
その為の近接航空支援を円滑に行う防空網制圧だが、工場付近の現地軍地上部隊が装備する対空兵装はまるまる残っている。
『アタックチームの支援要請をリディア大佐が拾って
「もちのろん」
視界一杯360°フルスクリーンは夜間飛行を視覚的に分かりやすく、様々なオブジェを光学的な立体物として映してくれる。
一昔前の暗視装置を想像している一般市民に伝えるのは難しいかもしれないが、今の暗視装置はかなり見やすい。
ふいなフラッシュで目眩ましとか、何十年も前の情報でいるとノスタルジーおじさん指定されてしまうぞ。
「結局さ、あの
『無人デバイスを回収したい合衆国以外の勢力ね』
「
『高度に偽装できるくらいの勢力と考えられるわ』
本職を欺けるレベルということはだ。
ふむ、これを逆説的な意味で考えると…………
「もしかして、黒幕的な集団が合州国内部にもいるかもしれない?」
『その推察を間違いとは言い切れないくらい事態は深刻よ』
「出たー、裏切り者がいる設定あるあるー」
『問題は合衆国だけじゃないってことね』
「おいそれ大問題だぞ」
仮にオーディアム連合内部にそういう輩がいたとしたら、今回の作戦は水泡に帰する。
しかも、スヴェート航空実験部隊を構成するスコードロンは、なぜか様々な国のパイロットが協力して成り立っている飛行隊だ。
色んな国の内部に裏切り者を抱えていては、アンティル社会主義共和国を隠れ蓑としている無人デバイス生産工場を運用する謎の勢力にも筒抜けなのではないか?
「この作戦バレバレなんじゃね?」
『大丈夫よ。あんたが心配することは起こってないわ。スヴェート・スコードロンはOps.SXプログラムによる包括的多国籍間協定部隊構成だから、そういう勢力が入り込む余地はないわ。むしろ各国軍から邪魔者扱いされてるし』
「え、なにそれイジメじゃん」
『当たり前でしょ? 自軍の指揮下からいつでも離脱出来る権限持ってんだから。どこの総司令部がそんな指揮系統を無視する部隊を持ちたがるっていうのかしら?』
「っていうかスペシャルフォースがそんな肩書きを持った集団なんていう設定自体が初耳なんですがその件に関して釈明はあるんですかユーザーインターフェースさん?」
『攻略情報くらい自分で集めなさいよこの情報惰弱』
バイザー上できっと睨んでくるツインテールである。
くそマジ口の悪いユーザーインターフェースに育ったな。
本当にデリートしてやりたいわ。
そう内心で思いつつも、リディア大佐から送られる情報を元に対レーダーミサイルを射出し、無人デバイス工場周辺に展開する現地軍の対空レーダー車輌を撃破。
さくっと自分の仕事を終わらせた。
これで
360°スクリーンに表示された飛行ルートの範囲に残存する地対空ミサイルはない。
視界を真っ暗な地上方向へ向ければ、バイザーやスクリーンに友軍機接近を示すカーソルが現れる。
地上のアタックチームを援護する
「あれって地形追随レーダー搭載してないよな?」
『それどころか近代化改修前の旧式仕様よ』
「はっ!? マジでっ!!??」
なぜおれがそれほど驚くのか。
初期型の
つまり真っ黒な視界に無人デバイス工場の明かりと、周辺に展開する地上部隊の点々とした明かりしか認識出来ない状況で作戦行動中なのだ。
――――なのに、だ。
おれと違って完全な暗闇のはずなのに、明らかに周りが見えているような低空飛行で揺るぎのない安定感がある。
「もしかして、空対地ミサイルを擬似的な赤外線監視装置にして操縦してる、とか?」
『多分そうね。凄い腕だわ』
「…………あの話、都市伝説じゃなかったのか」
初期型の
大昔のパイロット達に流行った夜間飛行であり、それで夜間任務をこなしていたそうだ。
ちなみにその視界領域は、壁の穴から見ているようなレベルだという。
「
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