第40話 助けてくれてありがとうございます


ニコルを見ながら固まるマクレーン。

ニコルはそんなマクレーンを見ながらにこにこしていた。


「そ、そうですか……あ、ありがとうございます。」


マクレーンはぎこちない笑顔でニコルに礼を言う。

ニコルは「どういたしまして」と更に笑顔を深くしながら可愛らしく小首を傾げて見せた。


「あ、あははははははは~。」


何故かマクレーンは青い顔をしながら笑い出す。

そんなマクレーンをアランは不思議そうな顔で見下ろすのだった。




「え?」


ようやく服が乾きマクレーンが木陰で着替え終えるとニコルから衝撃の話を聞かされた。


「こ、こんなのんびりしてて良いんですか?」


マクレーンは身を乗り出してニコルに詰め寄る。


「マクレーンさんも怪我をしていましたし、それにまだ時間はあります。」


「ああ、あと半時ほどだけどな。」


珍しく神妙な顔をしたアランが会話に加わってきた。


「その話本当なんですか?」


「ええ、僕を攫った盗賊たちが話していましたから。」


ニコルの説明では盗賊たちは明朝、街を襲うつもりらしい。

しかも街の大部分を占める麦畑に火をつけ火事のどさくさに紛れて金品を盗む事が目的だそうだ。


「確かに今は刈り入れ時で燃える素材は至る所にありますからね。」


もしそれが本当なら大変なことだとマクレーンは内心焦った。

あの規模の麦畑が一斉に火事になったらその被害は尋常ではないだろう。

しかも扱うものが火なのだ、きっとたくさんの人達が犠牲になってしまう。

マクレーンはそこまで考えてぞっとした。


もうあんな思いは嫌だ……。


脳裏に昔の記憶がフラッシュバックする。


「大丈夫か?」


振り返ると心配そうなアランの視線と目が合った。

どうやら無意識に震えていたらしい。


僕とした事が……。


マクレーンは内心舌打ちしながら「大丈夫です」と素っ気無く答えた。

心配するアランを他所にマクレーンはニコルに向き直る。


「止めましょう。」


「ですね。」


ニコルはマクレーンの言葉を待っていたかのように笑顔で頷くのだった。

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