第39話 目覚めたらとんでもない事になっていました
ぱちぱちと耳元で音が聞こえる。
意識がゆっくりと浮上する感覚に、今まで眠っていたのだとぼんやりと理解した。
のろのろと覚醒していく意識の中で己の体が何かに支えられているような感覚がした。
大きな手が背中を支えているようだ、温かくて安心する。
その心地良い感覚をまだ感じていたくて起きたくないと思ってしまった。
とろとろと意識を弄んでいると、己の耳に聞き覚えのある二つの声が聞こえてきた。
「疲れませんか?」
「大丈夫だ、マクレーンは軽いからな。」
ぱちり。
一気に目が覚めた。
勢いよく開いた瞳に飛び込んできたのは誰かの胸?いや……鎖骨だ。
視線を上げると綺麗なラインの顎が見えた。
その更に上は……。
「!!!!??」
「あ、気づきましたか?」
「お~良かった良かった♪」
目覚めた相手に気づいた二人が顔を覗きこんで来た。
「な、なにが?」
訳がわからず声を上げたマクレーンは、そこでにこにこと自分を見下ろすアランの顔が異様に近いことに気づいた。
そして気づく己の状況。
「☆%$▽#□\!!」
マクレーンは毛布に包まれアランの膝の上で抱きかかえられていた。
突然の事に硬直するマクレーン。
「滝壺に落ちたあなたをアランさんが助けてくれたんですよ。」
どうしてこうなっているのか訳がわからないという顔をするマクレーンにニコルが優しく説明してきた。
「アランさんが?」
マクレーンの呟きに頷くニコル。
未だに己を抱える相手を見上げるとまだにこにこしながら見下ろしていた。
「いや~見つかってよかったよ、湖の底にいないから駄目だと思ったんだが、下流に流されていたのをニコルが見つけてくれたんだ。」
そう言ってほっとした様な顔をするアラン。
「そ、そうですか、あ、ありがとうございます。」
マクレーンは真っ赤になりながらお礼を言うとアランから離れようとする。
だが、アランは何故か離れようとするマクレーンを逃げられないようにがっちりホールドしてきた。
「ちょっ!離してください!!」
じたばたと暴れるマクレーン。
ニコルが慌ててマクレーンを止めてきた。
「マクレーンさん安静にしていてください、滝に落ちたとき頭を打ってるんですから!」
ニコルの言葉に動きを止めるマクレーン。
言われて頭を触ると包帯が巻かれていた。
しかもなんだか後頭部の辺りがズキズキしている。
「ま、服もまだ乾いてないからもう少しこのままでいろよ。」
痛みにしかめっ面をしていると、アランがそう言いながら自分を抱えなおしてきた。
そのせいでアランの姿が良く見えるようになった。
「な、なんで裸なんですか!?」
マクレーンはアランの姿を見た途端、悲鳴を上げる。
アランは何故か上半身裸だった。
「ああ、服がびしょびしょだったからな。」
キョトンとした顔でしれっと答える。
そんなアランを見上げながらマクレーンはある事に気づいて己の体を守るように屈めた。
ぼ、ぼぼ僕の服も無いじゃないか~~~!!
毛布の中が妙にすーすーするなあと思っていたら服が脱がされていた。
一応下着は身に着けていたが。
その事実に青褪める。
「あ、マクレーンさんの服は僕が脱がして干しておきましたよ!」
マクレーンの異変に気づいたニコルが笑顔でフォローしてきた。
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