第18話 金髪碧眼美人さんが盗賊に攫われました4

一人の盗賊が恐怖も露にそう叫ぶ。

その言葉に辺りがどよめいた。


「赤の魔女だと!?」

「なにい~!?」


ざわざわと騒ぐ盗賊達。

大騒ぎする盗賊の目の前で、その人物は地に降り立った。

音も無く地に降り立つ姿に盗賊達は、さらに大騒ぎした。


全身を覆い隠す真っ赤なローブ。

ローブから覗く長い深紅の髪はまるで炎のように揺らめいている。

目深に被ったローブのフードからは血の様に赤い瞳が覗いていた。


炎を具現化したようなローブ姿の女は、ゆっくりと手を前にかざすと軽く空間を切る。

すると。

ごおっと音を挙げて盗賊達の目の前に炎が生まれた。

その炎はアランたちを守る障壁のように盗賊達の前に立ち塞がる。

そして赤の魔女を中心に、その炎の輪が大きくなっていった。

じりじりと体を焦がす炎の熱に盗賊達も堪らず後退りし始めた。

そして魔女がパチンと指を鳴らすと、炎の輪は一瞬で無数の火の玉へと変わった。

その様子に次に何が来るのか悟った盗賊達は、一目散に逃げ出す。

それを合図に無数の火の玉は勢い良くはじけ飛んで行った。

「あちちちち~!」と遠くから悲鳴が聞こえてくる。

その光景をあっけに取られながら見ていたアランたちは、我に返ると魔女のいた方を振り返った。

しかし、魔女はいつの間にかいなくなっていた。

後に残ったのは焼け焦げた草原だけだった。

そこに先程まで魔女がいたという痕跡だけを残し、魔女は跡形もなく消えてしまったのだった。


「あの女が人前に出るとは珍しいな・・・・。」


沈黙を破ったのはウルガの一言だった。

忌々しそうに魔女のいた空間を睨みつけるウルガ。

その様子をアランは首を傾げてみていたが、マクレーンの事を思い出すと慌てて弾き飛ばされた茂みを探し始めた。


「確かこの辺だったはず・・・。」


アランが探していると「いたたたた」と、か細い声が聞こえてきた。

声のした方を振り返ると、よろよろとよろめきながら歩いてくるマクレーンの姿があった。


「大丈夫か?」


アランは駆け寄ると、ふらつくマクレーンの肩を支えてやる。


「す、すみません。」


満身創痍のマクレーンは素直に礼を言うと、アランに身を預けたまま気絶してしまったのだった。


「おい、マクレーン!おい。」


「どうした?」


意識を失ったマクレーンを、アランは抱きかかえながら呼びかけていると、声を聞きつけてウルガ達も駆けつけてきた。


「急いで宿へ戻りましょう!」


ニコルの真剣な言葉に、ウルガとアランも頷くとホテルへと急いで戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る