第19話 金髪碧眼美人さんが盗賊に攫われました5
目を開けると真っ白な天井が見えた。
マクレーンは起き上がり辺りを窺おうとしたが、急な眩暈に襲われ上手く起き上がれなかった。
「大丈夫か?」
軽い頭痛に額を押さえていると、横から心配そうな声が聞こえてきた。
見上げると、心配そうにこちらを見おろすアランの顔があった。
「アランさん・・・・ここは?」
「ホテルだよ。」
「そう・・・ですか。」
マクレーンはアランの言葉に、ぼんやりと頷く。
――確か、ここのホテルに泊まってて・・・・。
マクレーンは見覚えのある部屋を見渡しながら、ぼんやりと記憶を辿っていると、はっと我に返った。
「そ、そうだニコルさんは?」
昨夜の記憶を思い出しアランに詰め寄るマクレーン。
「おっと・・・。」
よろりと崩れそうになるマクレーンの体を支えてやりながら、アランは困ったように眉根を下げた。
「まったく人の心配ばかりして・・・少しは自分の体も気遣えよマクレーン。」
呆れたような口調で言うアランに、マクレーンが抗議の声をあげようとすると。
ガチャリとドアが開く音が聞こえてきた。
「あ、マクレーンさん気がついたんですね良かった。」
続いて嬉しそうな声が聞こえてくる。
聞き覚えのあるその声にマクレーンは身を乗り出した。
「ニコルさん!無事だったんですね。」
ベッドの上で目を丸くして叫ぶマクレーンに「ええ、お陰様で」とニコルはにこりと笑顔を見せた。
「良かった。」
ニコルの無事を確認するとマクレーンはやっと落ち着きを取り戻した。
「マクレーンさんの方こそ大丈夫ですか?」
安堵するマクレーンに、今度はニコルが心配そうに聞いてきた。
「え?僕ですか・・・・だ、大丈夫ですよ、このくらい。」
そう言ってガッツポーズをして見せた。
その姿にニコルも、ほっと一安心する。
「そうですか、マクレーンさんも無事で良かった。」
お互いの無事を喜んで微笑み合う二人。
そんな二人に今度は、アランが痺れを切らせて話しかけてきた。
「そんなことよりマクレーン聞いてくれよ!赤の魔女が俺たちを助けてくれたんだぜ!!」
少し興奮気味に話し出したアランに、マクレーンは驚いた。
「え?赤の魔女がですか?」
「ああ、マクレーンが盗賊に飛ばされた後、出てきたんだ。」
アランのその言葉に、マクレーンは一瞬たじろぐ。
「ぼ、僕の後にですか……。」
引き攣るマクレーンを、残念がっていると思ったアランは、捲し立てるように続けた。
「マクレーンは会えなくて残念だったな・・・でも赤の魔女がいなかったら俺たちも危なかったんだぞ!でもまさか、あんな所で赤の魔女に会えるとは思っていなかった・・・あぁ、俺としたことが礼言うの忘れちまったじゃないか!」
「そ、そうですか。」
アランの興奮振りに、ついていけないマクレーンは引き攣る笑顔で頷くことしかできなかった。
「そういえば、ウルガさんはどうしたんですか?」
ニコル救出を手助けしてくれたウルガの事を思い出し、「失敗したなぁ~」と尚もぶつぶつと続けるアランに聞いてみた。
「ああ、あいつならマクレーンをホテルに連れて来たと同時に姿を消したよ。」
「そう……ですか。」
アランの言葉に、マクレーンは残念そうに肩を落とした。
行きずりで知り合っただけではあったが、見ず知らずの自分達を助けてくれた彼に、一言なりともお礼が言いたかった。
何も言わずに消えてしまったウルガの事を思いながら、マクレーンは溜息を零した。
「さて、僕達もそろそろ出発しましょう。」
「もう行くんですか?まだ休んでいたほうがいいのでは?」
マクレーンの言葉にニコルが驚きながら止めてきた。
「もう大丈夫です、それに盗賊のお陰で余計な時間を取ってしまいました、僕も急いでいるので。」
マクレーンは自分のおつかいを思い出しながらそう言うと笑って見せた。
そんなマクレーンにニコルは何か言いたそうに、もじもじし始めた。
「どうしたのですか?」
急にそわそわしだしたニコルに、マクレーンは首を傾げる。
暫くの間、言おうかどうしようか迷っていたニコルであったが意を決して口を開いた。
「あの……あんな後でご迷惑かとは思いますけど、その……僕も旅に同伴してもいいですか?」
申し訳なさそうに言うニコルにマクレーンは困ってしまった。
――どうしよう……これ以上人は増やしたくないんだけど・・・・。
「北の大陸に行くまでで良いんです!マクレーンさんにも大事な用事があるようですし。」
「え~っと」と悩むマクレーンにニコルは慌てて付け足した。
「いいじゃないか、減るものでもないし、ニコルだってまた盗賊に攫われたら困るだろう?」
考えあぐねていると横から助け舟が出てきた。
思わずそちらを振り向くと、能天気な男がのほほ~んとした表情で笑っている。
――また余計なことを!!
マクレーンの米神に青筋ができた。
ギロリと音が出そうなほどの眼光で睨みつける。
しかしアランはそんなマクレーンには慣れてしまったのか、何処吹く風とニコルに向かって、にこにこ笑顔を披露していた。
「な!旅は道連れ世は情けって言うだろ?困ったもの同士助け合わなきゃ駄目だぞマクレーン。」
恒例になった年上ぶったその物言いに、マクレーンの米神の青筋は更に増えていく。
「あ、ありがとうございます!アランさんマクレーンさんよろしくお願いします!」
マクレーンがアランのことを睨みつけていると、沈黙を肯定と取ったのかニコルが瞳を輝かせて詰め寄ってきた。
アランとマクレーンの手を取り嬉しそうにはしゃぐ。
そんなニコルを見て、何も言えなくなってしまったマクレーンは観念したのか、がっくりと項垂れるのであった。
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