あの夜
山島みこ
あの夜
ああ。
もう、いいだろうか。
もう、
いいだろうか。
帰宅したままの服を着てもう、どれくらいここに座りこんでいるんだろう。
生きることを
諦めたわけじゃない。
鉛みたいな身体を引きずって寝室へ向かった。
ただ、
辛いとか
苦しいとか
きっと、どこかで聞いたことのある感情なんだ。
部屋のマットが敷いてあるところで膝から鞄と一緒に崩れ落ちた。
ただ、
非力な己の脳味噌に
絶望しているだけなんだ。
重すぎる身体に耐えきれなくて額が床に落ちた。
だからどうか
ゆるして欲しい。
涙が流れ落ちて
視界をさえぎる間だけは
消えて
なくなりたいと思うことを
どうか
ゆるしてくれ。
握る拳に
深爪が食い込む痛みだけが
何よりも心地よかった。
あの夜 山島みこ @soranom
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