第24話

 隣の間藤の姿が見えなくなって、後ろを振り返ると、立ち止まって腕組みをしながら、うーんっと唸っていた。

「わっかりました。そういうことにしておきます。というわけで、とりあえず桜木さんは私の大恩人ということで、来週もよろしくお願いしますね」

 さっきまでの顔とは打って変わって、気持ちのいい笑顔だった。

 坂道を登りきったところで、また、間藤は立ち止まった。

「私の家、ここなんです。送ってくださってありがとうございました。気を付けて帰ってくださいね」

 おやすみなさいと手を振りながら、目の前の家の中に入っていった。

 間藤の姿が完全に見えなくなって、腕時計を見ると九時ぐらいだった。特に意味もなくため息をついてから、スマホを取り出して地図のアプリを開いて、元来た道を戻り始めた。

 

 家に帰って、もろもろのことを済まして、ベッドで眠くなるまで本を読んでいると、スマホから懐かしいメロディーが流れだした。手に取って、ついでに時刻を見ると、ちょうど深夜零時だった。

「やっほー、ひさしぶり、元気にしてた?」

 深夜なのにやかましい声に、思わずスマホから耳を離す。この声は間違いなく彼女のものだった。

「元気ではないかな、いろいろと面倒なことが多くて」

 ここ最近の、間藤や川岸さん、山神さんのこと、あと、今日の予告自殺のことを瞼を半分閉じながらゆっくりと話した。

「はーん、そりゃ大変だったねえ。でもたまにはいいんじゃない、君、基本的に暇でしょ」

「これでも学生だから、勉強しないといけないんですよ」

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