第20話
「そんなはずないじゃん。桜木のことを思ってだよ」
思わず、はっ?、と口をついて出る。本から手を離して、先輩の顔が本の山の間からこちらをのぞく。
「私はさ、こんなのでもいいけど、桜木は――」
声と被るように、チリンチロンと鈴が鳴りながら、ドアが開く。ドアの間からひょこっと間藤の顔が生えた。
「こんにちは……」
二度目になるのに、恐る恐るという感じで、部室に入って、僕の向かいのソファに、間藤は腰かける。それを見計らって、奥から先輩も出てきた。
「こんにちは、間藤さん。さて、いきなりで悪いんだけど、二人ともこれを見てくれる?」
硝子のテーブルの上に投げ出された紙を二人でのぞく。その紙はこの前の山神さんの件でも見た生徒会への要望書の用紙だった。
『今月の二十三日の放課後、校内のいずこかで自殺します』
真っ先に頭の中で思い浮かべたのは、僕に殴りかかる川岸さんの姿だった。
「桜木と間藤さんには、この予告自殺を阻止してもらいたい」
僕も間藤もすぐには口を開かなかった。間藤がどう思っているかはさておき、僕は最近、立て続けにいろいろとありすぎて、半ばうんざりしてきていた。
「あ、あの、その、具体的にはどうすれば……?」
「まあ、あと一週間ほどあるからね。とりあえず、校内と限定されてるから、来週月曜、学校内で自殺できそうなところを調べてみようじゃないか」
戸惑いながらも、やるつもりの間藤さんに心の中でおいおいと突っ込みを入れる。
「こんなこと言っちゃなんですが、ただの悪戯だと思いますよ、先輩。わざわざ僕たちが動く必要はないのでは?」
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