第18話
コーヒーは好きだけど、冷えている方が好きだ。熱いと舌を焼くし、味もいまいちわからない。
部室で立ち上る湯気を見つつ、今週、何度目かになるか分からないため息をついた。
あの日から週の明けた月曜日、駅を出ていきなり腕に抱きつくように腕を絡めてきた少女があった。
「おはようございます。さ、く、ら、ぎ、さ、ん」
耳元でささやかれて、反射的に体が震える。顔を見ると山神さんだった。
「朝から、一体何?」
「彼女候補とはいえ、彼女(仮)みたいなものなのですから、仲睦まじく一緒に登校するのは普通のことでは?という訳でお待ちしておりました」
無理やり引きはがすことも一瞬頭をよぎったが、結局諦めて並んで学校まで歩くことになった。その日以来、いつも一緒に駅から登校していて、駅から学校に向かう他の生徒に、何とも言えない妬みのような軽蔑のような視線を向けられるようなった。
それには、黒髪の少女こと川岸さんのことも影響していた。
川岸さんには、初めて殴られて以来、久しぶりに火曜の昼休みに来て、前回のように屋上まで連れ去られた。
「あんた、あんだけ俺のことで騒がれておいて、よくのうのうと彼女なんか作れたよなあ、おい」
例のごとく殴られて、また尻もちをついた。避けるつもり満々だったのだが、あまりに速いジャブにまったく反応することが出来なかった。
また血を吐きつつ、こっちだって負けずに言葉を発する。
「知らねえよ。だって、いきなり運命の人だの言われて、彼女(仮)なんて言われて、こっちだって気持ちの整理はついてねえし、まわりにはお前の彼氏なのに、不倫しているとか、ありもしねえこと言われて、こっちだって迷惑してるんだよ、くそ」
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