第14話

 はあと軽く頷く間藤を見ながら、桜舞う四月、人生の通過点と思いながら校門をくぐろうとしたとき、先輩に呼び止められたことを思い出す。まだその時は何も知らない僕は、今日の間藤のように目を見つめられて、そのまま半強制的にこの部に入部させられたのだった。

 あのとき、先輩が事前に僕のことを調べていたのか定かではない。

 三者三様、無言で、角砂糖増し増しコーヒー、ストレートティー、冷えたホットコーヒーを飲んでいると、先に飲み終わった先輩が立ち上がってまた違う紙をテーブルの上に持ってきた。

「二人とも、それ飲み終わったら、さっそく、仕事だよ」

 僕は途端に飲むのをゆっくりにしたけど、間藤は逆にあおるように紅茶を飲み干した。

「仕事ですか?」

「そう、仕事。っていうのもこれは生徒会の意見箱って言うのかな、そういうやつに入っていたのを拝借してきたやつ」

「先輩、それ、生徒会の仕事じゃないんですか?」

 ちっちっちと先輩は人差し指をメトロノームのように横に振る。

「生徒会がやるようなやつじゃないから、エンタメ部に持ち込んだんじゃないか。まあ、読んでみてよ」

 あまり読みたくはなかったが、仕方なく、先輩が指さす先にある文面に目を向けた。


『私のことを助けてくれた、運命の人を探してください』


「これだけですか?」

 目をキラキラさせる間藤に、まあ、名前は伏せてあるけどねと先輩は紙を掴む。僕はといえば、若干、額に脂汗が浮かんできていた。

「さあ、間藤さん、桜木、さっそく依頼者に会いに行こうじゃないか」

 僕のティーカップをぶん取って、先輩は残っていたコーヒーを飲み干す。歩き出して部屋を出ていく先輩とそれについていく間藤の背中を見て、仕方なく、僕も重い腰を上げた。

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