第13話

「はー、それにしても桜木よ、よくこんな人見つけてきたな。はぁ、間藤さんも、面倒な性格というか、いや違うか、どうでもいいんだな、全部……。よし、君を、この部活の三人目の部員に任命します。これからどうぞよろしく」

 先輩の言葉の途中で顔を固まらせた間藤さんをよそに、先輩はデスクに戻って、なにやら棚をごそごそしている。ここでも、どうやら自分で説明する気はないらしい。

「もしかして、心当たりというか、図星だった」

 それまで僕のことが頭から消えていたかのように、勢いよくこちらに顔を向けると、それなりに深く間藤はうなずいた。

「これは、本当か嘘かは知らないけど、先輩は、人の過去を見通す力があるって初めて会った時に言われたんだよねぇ。おそらく嘘で、実際は、先輩は、容姿端麗、文武両道の万能人間でありとあらゆるところに顔が利くから、会う前に情報収集してるんだと思うけど……」

「いやいや、嘘じゃない。ホントだって。桜木はほんと疑い深いんだから」

 ぽんぽんと頭を叩かれ、先輩が隣にドスンと腰掛ける。手に持っていたのは、入部届だった。

「はい、じゃあ、これに名前とハンコを押して、また、私に渡してくださいな」

 受け取った紙をなにゆえかまじまじと見つめてから、間藤は顔を上げた。

「あのー、こんなこと言うのは失礼かもしれませんが、どうして、エンターテイメント研究部が、部活として認可されたんでしょうか……。普通、無理だと思うのですが……。というか、そもそも、私、この部活があること知りませんでした……」

「あーなるほどね。簡単に言うなら、職権乱用と情報操作かな」

 ドヤ顔で、先輩はそう答える。とてもドヤ顔で言うようなことではないと思う。

「まあねえ、そもそも、私がこの部を作ったのは、私が世の中に絶望しているからなんだよ。現実よりも創作物の方が、エンターテインメントの方が、楽しいから。でも、それだと少し残念だし、なら、現実世界のエンターテインメントを見つける、ないし作り出す、それがこの部の存在意義で、そのために私は桜木を見つけ出して、この部活に入れたわけ」

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