第二七回(文政五年一二月)


 ときは文政五年の年末、西暦なら一八二三年の一月。山青堂では「祓い屋三神極楽始末帳」の刊行準備が最終段階を迎えている。それに先駆けて春画本「天下無双日本号」を刊行して好評を得ており、続けて本命の一二枚組物の春画「天宇受売命舞踏絵図」を刊行した。

 大判の多色刷りだがたった一二枚のことなので値段もさして高くはない。おおっぴらに宣伝できるものではないが親しい貸本屋を通じて口コミを広げてもらった結果、それを買い求める男どもが山青堂に列を成した。


「残りもあと少しだけなので増刷にかかります!」


 と意気軒昂のお内は固く握った拳を高く掲げる。


「続きを出すなら必ず買う、とお客さんも口を揃えているそうです。これの続きを描いてください」


 続きと言われても、と達郎は当惑した。


「古事記の中には他に春画のネタになりそうな話なんて……」


 そこに「邪魔するよ」という久しぶりに聞く声。達郎が戸口に目を向けると、そこに立っているのは襤褸同然の着流しの上に袖なし半纏を羽織った、巨漢の老人。日本史上最大の絵師、葛飾北斎その人である。達郎は「先生」と腰を浮かした。


「お久しぶりです。今日はどうされたんですか?」


 奥の居間へと案内しようとする達郎に対し、北斎は煩わしそうにして帳場の前に腰を下ろして足を組んだ。達郎はその背を前にして正座し、背筋を伸ばす。


「おう、裏太郎。おめえ組物の春画を描いたんだってな」


 はい、と頷くと同時に跳ぶようにして書庫へと向かう達郎。ほんの十を数える間もなく戻ってきて、滑り込むようにして北斎の前に再び正座した。


「どうぞ、こちらです」


 と恭しく差し出すそれを北斎は「ふん」と鼻を鳴らして受け取る。そして一枚一枚じっくりと、長い時間をかけて目を通した。たった一二枚の絵を見るのに一〇分以上をかけ、ようやく全ての絵を見終わり、


「……あの、いかがでしたか?」


 組物を持ったままの北斎の拳が達郎の胸を叩き、達郎は咳込んだ。


「ふん、なかなかやるじゃねえか。でも俺だってこれくらい描けるんだよ」


 北斎は携行用の絵筆と墨を取り出し、そのまま畳に絵を描きそうな勢いだ。達郎が慌てて紙を用意し、北斎はそれにかじりつくようにして絵を描き出した。一心不乱に、一気呵成に一枚の絵を描き上げ、「どうでい」と達郎にそれを見せつける。

 そこに描かれているのは、巫女服を着崩した状態で手足を振り上げて踊る女神の姿だ。その大胆さ、そのダイナミックさ、その躍動感は達郎の遠く及ぶところではない。それは北斎にしか描けない舞踏絵図だった――ただ。


「……えっと、その、面白い絵だと思いますよ?」


 それは素晴らしく躍動的な、今にも動き出しそうな絵だった。ただ、色気は全く感じられない。達郎が躍動感と美しさやエロティシズムの両立を図ったのに対し、北斎のそれはダイナミックさに全振りした絵だ。絵としての面白さは北斎の方がずっと上だろうが、春画としてはほとんど意味をなさなくなっているのだ。それは「何を描こうとしたのか」の差異であり、どちらが上とか下とかいう話ではないのだが……

 達郎の微妙な評価に北斎は舌打ちするが、自覚はあるのか怒ったりはしなかった。達郎が止める間もなく、北斎は自分の描いた絵をクシャクシャに丸めてその辺にぽいと捨てる。そして、


「これで勝ったと思うなよ!」


 そんな捨て台詞を吐き、肩を張り上げるようにして山青堂から去っていく。達郎は呆然としたようにそれを見送ることしかできなかった。


「怒らせましたね」


 そう言うお内に対し達郎は、


「でも絵のことだしなぁ」


 と独り言のように言い訳した。

 おべんちゃらを使い、卑下して負けを認めて北斎を持ち上げたところでかえって北斎を怒らせるだけのこと……いや、そのときはきっと怒りよりも軽侮を買い、二度と相手にされなくなるだろう。

 それにあの北斎のことだ、簡単に負けを認めるわけがない。そして実際、翌日には北斎が逆襲のために山青堂へとやってきた。


「悪いね、親父どのが迷惑かけて」


「いえ、そんな」


 と達郎はかえって恐縮する。今回北斎は一人ではなく、娘の葛飾応為を伴っているのだ。北斎は誇示するように応為の肩に手を置いた。


「美人画なら俺よりもこいつの方がずっと上手い。応為(あご)、裏太郎に思い知らせてやれ」


 対抗心をむき出しにした北斎に対し、応為は表向きはどうでも良さそうな態度である。達郎が二人を伴って奥の居間へと移動し、


「それじゃ見てくれるかい?」


 と応為はあらかじめ描いてきた一枚の絵を取り出した。拝見します、と達郎がそれを受け取る。

 応為が描いてきたのはやはり半裸になって踊るアメノウズメの姿だ。応為は達郎から萌え絵を伝授され、既に消化して自らの血肉とし、そこからさらに自分流の絵を生み出している。アメノウズメの姿もまた応為流の「萌え絵」で描かれたものだ。この時期の応為流はリアル寄りの絵柄で、達郎からすれば上村松園の美人画を想起させるものとなっていた。


「……見事ですね」


 と達郎は感嘆する。さすがは北斎が認めた天才絵師と言う他ない。そこに描かれていたのは「演舞の女神」の名に相応しい、美しい巫女の姿だった。ただ、


「踊ってねえだろ。棒立ちじゃねえか」


 とその絵をくさす北斎。それは確かに美人画としては素晴らしい出来栄えだが、躍動感はほとんど感じられなかった。北斎の足元にも及ばず、達郎と比較してもかなり見劣りする。


「いい絵が描けたと思ったんだけどね」


 応為は何気なさを装うが、その呟きからは悔しさがかすかに垣間見えていた。いい絵だと思いますよ、という達郎の慰めも聞き流されている。


「そのー、これは俺向きの題材だったから、俺が自分の得意なお題で描いた絵だからだと思います」


 例えば鳥山明の「ドラゴンボール」、例えば森川ジョージの「はじめの一歩」、例えば蛭田達也の「コータローまかりとおる!」、例えば村田雄介の「ワンパンマン」。面白い漫画をのめり込んで読んだときには、絵が動いているように感じられる――いや、本当に動いているとしか思えず、それを再現できないアニメに失望を覚えるくらいである。達郎は物心つく前からそれらの漫画に触れ、夢中になって読み、自分でもそんな漫画を描くべく何百冊という落書きノートを使い潰してきたのだ。躍動感と絵の美しさを両立させるのは全ての漫画家にとって永遠のテーマと言え、達郎もまたそれを目指して絵の修練をしてきた。そしてその成果を最大限生かせるテーマを自分で選んだわけで、そもそもが達郎に有利な勝負だったのである。


「それでも、このまま引き下がるのは癪な話だな」


「それじゃ何か別のお題で絵を描くかい?」


 そうだな、と首をひねる北斎。いつの間にか絵の勝負を続けることになっているが、達郎は口を挟まなかった。葛飾北斎と絵の競作をするなど、およそあらゆる絵師や画家にとっては夢のような話であり、達郎にしてもまたそうなのだから。


「それじゃ引き続き日本神話……古事記の中からお題を選ぶのはどうですか? それぞれが自分の一番絵にしたい場面を選ぶんです」


「なるほど、そいつはいいな」


 と北斎は膝を打った。


「どうせなら絵草紙にしたいですね。古事記の内容を手短にまとめて絵を付けて、その中から一場面を取り出して錦絵にして」


「面白れぇじゃねえかよ」


 と北斎は大いに乗り気で、応為も異存はなさそうだった。それでは、と達郎は山青堂の店主の顔となり、


「絵草紙は『古事記絵本』、錦絵は『古事記絵図』として企画を進めます。――妹さん?」


「潤筆料はいかほどに?!」


 すぱぁん!と襖を開け放って満面の笑みのお内が登場。北斎と応為がのけぞった。

 お内と葛飾親子との潤筆料交渉は思いのほか長時間に及び、北斎と応為は疲れ切った顔で山青堂を後にした。ただそれでも企画が潰れることはなく、達郎達は「古事記絵図」の作成に邁進することとなる。






「さて。絵草紙にするなら誰かに話をまとめてもらわないといけないんだけど」


「それにどうせならもう一人二人絵師がいた方がいいです」


 達郎とお内、両方の条件を一度に満たすため、達郎はある人物の下を訪れた。


「判った。絵も文も任せてくれればいい」


 胸を叩いてそう即答するのは渓斎英泉。英泉は退廃的な美人画で名を残した浮世絵師だが、この時期既に多数の合巻や艶本を手掛けている。先々には「児雷也豪傑譚」の作者の一人となり、また浮世絵の考証本を執筆するなど、文筆家としても優れた業績を残しているのだ。

 達郎が「ありがとうございます」と頭を下げると英泉は手を振った。


「礼を言うのは俺の方だ。逆に誘ってくれなかったら一生恨むところだぞ」


 英泉は笑いながらそう言うが、口調は冗談のようでもその内容は九割以上本心からだった。

 何日か後には北斎、応為、英泉、それに達郎が山青堂に集まり、打ち合わせである。


「俺はここを描くことにするわ」


「なるほど、それなら……」


 企画の成り立ち上、それぞれの絵師が描きたいシーンを描くのがまず第一。文章はそれに合わせて後から付け加える形となるのである。幸い、それぞれの描きたいシーンがかぶることは全くなく、打ち合わせはスムーズに進んだ。企画もまた加速度を上げて進展。北斎が絵を描き上げ、英泉がそれに文章を付け、絵草紙の脱稿は文政六年一月、錦絵の下絵完成もまた同時だ。

 そして文政六年三月、西暦なら一八二三年四月。「古事記絵本」第一冊が刊行される。絵は葛飾北斎、文は渓斎英泉、一〇丁(二〇頁)の薄い本である。内容は天地開闢からイザナギ・イザナミの国生み神話まで。ただし二柱以前はごく簡単に説明するだけでメインは二柱の国生み神話だ。さらにその中から一つのシーンを抜き出し、多色刷りの錦絵として刊行されたのが「古事記絵図」だった。


「さすがに先生だな」


 達郎はその「古事記絵図」を手に讃嘆の思いを新たにする。北斎が絵とするに選んだのは、イザナギ・イザナミが天の沼矛を使ってオノゴロ島を作り出す場面だった。天空にかかる天の浮き橋に立つ二柱が天の沼矛を手にし、身を乗り出してそれを海面に突き刺し、かき回している。天の沼矛を中心としてオノゴロ島が作られようとしている……という情景だが、それを二柱のさらに上空からの視点で描いているのだ。

 天の浮き橋は画面を斜めに横断し、そこに立つイザナギ・イザナミ。天の沼矛の長さは何キロメートルにもなりそうで、先端はかすんでいる。作りかけのオノゴロ島は大枠としては勾玉の形だがまだいくつもの岩礁が集まっただけの状態だ。だがよくよく見てみればそれは、かき回されて歪んだ日本列島なのだ。まるで水の上に油か何かで日本列島を描き、渦を作って描いたかのよう……いや、逆だ。天の沼矛で海をかき回し、ここから日本列島を、その大元を作り出すのだから。

 伊能忠敬とその後継者による「大日本沿海輿地全図」の完成は文政四年(一八二一年)。伊能図はあまりに正確なため国家機密扱いとなり一般には見ることはできなかったが、長久保赤水の作成した「日本輿地路程全図」は安永九年(一七八〇年)に刊行され、広く一般に出回っている。この赤水図には北海道は含まれないものの(また伊能図には及ずとも)当時としてはかなり正確な地図であり、日本列島の形を知るには充分以上だった。

 だがそれがあったとしても、一体何を見てどこからこのような発想に至ったのか想像も及ばない。あるいは北斎も未来からのタイムスリッパーなのかと本気で疑うくらいだ。北斎のネームバリューと、またその奇想天外な絵が評判となり、「古事記絵図」「古事記絵本」とも飛ぶような売れ行きとなった。

 その中で翌四月、その第二弾が刊行される。絵を担当するのは英泉だ。内容はイザナミが生命を落としてからアマテラス・スサノオ・ツクヨミの三貴子が生まれるまで。つまりはイザナギの黄泉路行がメインである。

 さらには英泉が描いたのは黄泉比良坂のシーンなのだが、これを錦絵とするのは簡単ではなかった。当たり前の話だが、真っ暗闇をそのまま描いたら真っ黒の絵になってしまう。暗闇を薄くすればいいのだがそうすると「地の底」のイメージから遠ざかる。光の届かない、地の底を描写するのに彫師も刷師も力を尽くしたのだが、それでも英泉の思い描いた絵には届かなかったのだ。


「何かいい手はないだろうか」


 板元として、また絵師として英泉から相談された達郎もまた頭を悩ました。


「……たとえばやすりか何かで表面を粗く削った板に墨を付けて、一番最後にそれを刷るとか」


「やってみたが、絵が汚くなるか見えなくなるだけだった」


 そうですか、と言いつつ唸る達郎。こういう場合二一世紀でならどうするだろうかと記憶を検索してみる。パソコンを使えば描いた絵全体を暗くするのはクリック一つで済むことだ。漫画でなら――


「そうか、スクリーントーン」


「すくりん……?」


 首を傾げる英泉に達郎は「何でもないです」とごまかした。


「向こう側が空けるくらいに薄い紙に墨を付けて、それを全体の上から貼るのはどうでしょうか?」


 その思い付きに英泉が「なるほど」と瞠目する。


「それはやっていなかった。早速試してみよう」


 達郎の思い付きを英泉と職人が試行錯誤し、さらには上から貼ったスクリーントーンを部分的に削ることまで彼等自身が発案し、ようやく満足のいく出来栄えとなり刊行にまで至ったのだ。非常に手間がかかるため値段もかなり高くなってしまったが、それでも英泉の絵は大いに売れることとなる。

 黄泉へと下ったイザナギはイザナミと再会。「地上に帰るために黄泉の神々と相談するが、自分の姿を見ないでほしい」とイザナミに言われたのに、あまりに長く待たされたためイザナギは彼女の姿を見てしまう――変わり果てたその姿を。英泉が描いたのはまさしくそのイザナミの姿だった。

 身にしていた衣服は襤褸となり、その下の肉は腐りかけ、蛆虫が涌いている。恥をかかされたことに怒ったイザナミが目を見開き、片手で腐った顔を覆い、もう片手を伸ばしてイザナギを捕まえようとしている――それを渓斎英泉が描いているのだ。しかも萌え絵を会得し、リアルに寄せた絵を描けるようになった英泉だ。

 スクリーントーン(の代用品)で絵全体を暗くして部分的にしか判らないようになっているのは、芸術面だけでなく経営面でも大正解だった。そうでなければ、あるいはこの絵は絶版となっていたかもしれない。それでもこれを目にした江戸の民衆の衝撃がどれほどのものかは、想像するのも難しかった。

 「古事記絵図」「古事記絵本」は第一弾・第二弾とも大評判で、売れ行きは絶好調。笑いの止まらないお内は引き続き第三弾の刊行に取りかかった。その担当絵師は応為である。






 第三弾は天岩戸のエピソードまでで、応為が選んだのは天岩戸からアマテラスが出てきたその瞬間だった。暗闇に閉ざされた世界を太陽神の光が切り開き、集まった神々が感嘆する、そんな情景を描いたものだ。


「……見事ですね」


 今、お内と達郎が見せてもらっているのは見本彩色した絵である。暗闇と、それを切り裂く一条の光のコントラストが鮮烈だ。伝統的な日本画や浮世絵では陰影法は使われず、光や陰が描かれることはほとんどなかった。それが描かれるようになるのは西洋画の影響を受け出した一九世紀以降だ。その中でも応為は光と影の描写に優れた作品を残している。達郎の存在により応為は本来の歴史よりもいち早く陰影法を習得。その技法と彼女の才能を最大限活用したのがこの絵だった。

 今すぐに摺師のところへ行こうと腰を浮かすお内だが、応為がそれを止めた。


「ああ、そうだ。ちょっと直してほしいところがあるんだけどね」


「どこでしょうか」


「絵師は応為じゃなくて北斎ってことにしてくれないか?」


 それは、と一瞬お内が戸惑った顔をするが、


「そっちの方が売れるだろう?」


 その一言で「判りました」と全て納得した。


「待ってください」


 納得しないのは達郎である。


「それじゃ葛飾応為って天才絵師が歴史に埋もれてしまう。これは応為の名前で世に出すべきです」


 本来の歴史ではそうなった。多数の北斎の絵が応為の代作だと疑われているが、確実に応為の作品だと判明しているもので二一世紀まで現存するのは一〇程度に過ぎない。


「それじゃ売れないだろう」


「これだけの絵なら応為の名前でも売れます。そもそも、北斎の絵とは全く別物じゃないですか」


 それでも、応為はなかなか首を縦に振らなかった。


「わたしの名前なんか残しても仕方ないだろう」


「そんなことないです。応為の名前と作品がたくさん残っていれば百年後二百年後の浮世絵研究がどれだけはかどることか」


 意味不明のことを言われて応為が胡乱な目となり、達郎は「ともかく」と咳払いしてごまかした。


「考えてほしいことがあります。絵師の家に生まれて絵師となった女の人は応為さん一人じゃない。でも、名を成した人がどれだけいますか?」


 応為はその名を挙げることができなかった。女性絵師のほとんどは誰かの手伝いや代作をやるだけで自分の作品も名前も残すことができなかったのだ。


「でも、応為さんは違います。葛飾応為の名前で絵を描くことができる。絵を残すことができる。応為さんが男に負けない絵を描いて女絵師の道を切り開くなら、多くの女の人がそれに続くことができるんです」


「……本当にわたしの名前でも絵が売れるって言うのかい?」


「売れるに決まっているでしょう」


 と達郎は破願した。


「何しろあの葛飾北斎の娘で、あの北斎が『美人画なら自分よりも上』って認めた天才絵師なんですから」


「結局は親父どのの七光じゃないか」


 と呆れたように言う応為に達郎は苦笑を見せた。


「それはもう仕方ないと思ってください。でも利用できるものは何でも利用しないと」


「立っているものは親でも使え、かい?」


 そう言って応為が笑い、達郎もまた笑った。

 なお、反対するかと思われたお内だが達郎と応為の決断に何も言わずに従った。女の身で山青堂を実質的に経営するのは並々ならぬ苦労があり、応為に共感するところもきっと多いのだろう。

 「古事記絵図」の第三弾が発売されたのは文政六年五月。売れ行きは第一弾・第二弾よりも下がったが採算は充分に取れ、お内も満足そうだった。またこの仕事を契機として北斎ではなく応為あてに注文が舞い込むようになり、「葛飾応為」の名を記した錦絵が多数世に出、二一世紀まで残されることとなる。

 さらには本来の歴史では名を残さなかった多数の女性絵師が世に出ることとなるのだが、それはまた別の話である。今は直近の話を続けることとしよう。




【後書き】

直近の話を続けますが、次回更新の予定は未定です。気長にお待ちください。

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