第2話

 家に帰る。

 排気口から漏れ出す夕食の匂い。この家の夕食はサバの塩焼きだろう。


 夜は暗い。その状況で聞こえてくる声に安心感を感じることは誰もが経験したことがあると思う。


 けどそれが中学生の声だと知った時、私はなんだか複雑な気持ちになる。


 最近の流行はすぐにネットで知れるようになった。短い時間でたくさんの情報が片手で知れるようになった今、コメント欄などで同じ動画を見た人と交流できる場。


 なんだか、自分と同じ憧れをもっている人もいるんだ。と安心する。


 けど実際はどうなのか。


 その人と同じになりたくてお小遣いを貯めて服を買い、インテリア家具も購入した。いいと思う。


 憧れの人に近づきたい、もしくはその人になりたいと思うことは誰にでもある。


 三大欲求の一つに含まれる欲と言っても過言ではない。


 しかし、お金。それも三大欲求の一つに含まれてておかしくないと思う。


 人は誰しも幸せになりたいと欲が自分の意識の深くの部分にあって、幸せになりたいがために生きる。


 けど不幸になった瞬間からその人は幸せだった過去に縋り付く。


 しかもどれも鮮やかで、あとから修正したかのように美しい。思い出す度、鮮明になり、より美しさが増す。


 憧れ、幸せが手に届いたとき、人は怠惰になる。だから不幸が訪れてバランスを調節する……


 ふっ。


 鼻で笑ってしまった。今の私は不幸だが、幸せを感じたことを忘れてしまって、実質不幸しか覚えてないぞ。


 最近の流行は不良チックな黒髪マッシュとフリフリの可愛い服とゲームらしい。


 黒髪マッシュには気をつけろってよく聞くけど、その人に似合ってればなんでもいいんじゃないって思うな。ちなみに自分はウルフ好き。


橋の下とか、大人が酒を飲む場所にわざわざでむいて、不登校とかいじめとかを盾にしてそこに行く人もいるけど、その動画を投稿するスマホは誰が買ったんだっていつも思う。


 服も可愛いの来て、可愛いダンスをして、ホテルどまり。不登校とかが辛いのはわかるけど焦らない方がいいよ。


 現に、失敗した見本が近所に住んでいるからわかるんだけど。


 未来、現在の時の流れの中で過去に生きていけないってわけだ。それが今の社会の流れだと、私は感じる。


 その人に憧れるのは良いけど、自分の幸せだけを満たしていたらいつか破産するよ。中学生。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る