第22章-4
祭りの音は遠く聞こえた。
「俺は思うんだ。
「嘘だ」
「いや、これも嘘じゃないぜ。今となっちゃ俺は柏木伊久男のオーソリティなんだ。ずっと奴のことを考えてたからな、下手すりゃ本人よりわかってるかもしれない。あの爺さんはとうにお前がやらせてるって気づいてた。ま、長谷川家の者だろうって思ってたんだ。そこにお前の写真が
北条はずっと前を向いたままだった。彼は
「だから
猫たちは間合いを
「おい、オチョ、今度はあんたが
「は? なんでそうなるんだよ」
「そりゃそうだろ。それにあんたは
彼は口許をほころばせた。北条は
「しかも、
顔つきは変わった。カンナは口をすぼめてる。なんて表現すればいいかわからないものの、ある種の理解が感じられたのだ。
「さすがはなんでもお見通しの先生ですね。あの男が自殺したこともわかってたんですか」
「もちろんさ。さっきも言ったろ? 俺はあの男のことなら本人以上にわかってるんだ。あいつは愛する人を守るために殺しまでしてる。まあ、
「ヒント? ああ、写真のことですか」
蓮實淳は一度目をつむった。
「そうさ。それに子供じみたリストもな。いいか? あの男はけっして
全員がひとつところに目を向けている。北条は唇を強く
「わからないか? ま、お前みたいな馬鹿でカスな奴にはわからねえだろうな。いいか? あの男は愛する人を守り抜こうとしてたんだ。そのためならなんでもやった。ただな、その相手は俺たちに感謝もしてた。そういう
息はさらに荒くなっていった。汗が
「で、最後だ。――ペロ吉? ペロ吉もいるんだろ?」
「ニャア」
「ああ、そこにいたか。ちょっとこっちに来てくれ。――そうだ、そこでいい」
目はピンクの首輪へ向かった。唇は
「知ってるだろ? お前が殺した子供の猫だ。お前はあの子が外に出されてるのを聞いてマズいと思ったんだよな? それで、殺したんだ。でもな、それだけじゃない。お前は殺しが好きなんだよ。子供の頃から生きてる存在を殺すのが好きなだけなんだ」
「違う。そんなわけがない。私は仕方なしにやったんだ」
「そうか? じゃ、これは訊こう。お前の家には母親のかわいがってた猫がいたな? 平子とのトラブルだってそれがもとで起こったんだ。その猫はお前たちがいなくなってから
彼は
「ほら、言えよ。なんで殺した」
「仕方なかったんだ。母親が死んでからうるさく鳴くようになって、その度に父親は腹を立てていた。それで私にどうにかしろと言ったんだ」
カンナは顔をあげた。嫌でも溜息は
「ね、北条さん、それでその猫も殺したっていうの?」
「仕方なかったんだ。母親が死んでから父親は荒れまくって手がつけられなくなってた。猫がうるさいってだけで
「じゃ、平子ってお婆さんも仕方なしに殺したっていうの? ほんと悪いけど、あなたって
ナイフが頬にあてられた。それでもカンナはじっと見つめてる。
「ほんとに怖くないんですか? あなたは
一瞬だけカンナは千春を見た。それから腹に力をこめ、こう言い放った。
「まったく怖くない。この人がいてくれさえすれば私はなにも怖くなんてないの。いい? 北条さん、あなたはずっと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます