第21章-2
それからはいつものようになった。猫たちは「ニャ」だの「ナア」と鳴き、彼は
「あの、ちょっと訊いていい? ペロ吉はどこにいたの? さっき言ってたでしょ。『今日そのためのことをした』とか。それで出てきたってこと?」
彼は焼きそばを取った。クロの首は物欲しそうに動いてる。
「いや、これは駄目だ。しょっぱすぎるからな。『ニャンミー』にしとけ」
「ねえ、こたえてよ。ペロ吉はどこにいたの?」
「ん、病院だよ。動物病院だ。線路向こうにあるだろ? そこにいたんだ」
「病院? でも、自分で行ったわけじゃないでしょ。誰が連れてったのよ」
「
「それはあのときも聴いたわ。それで?」
「その場合、
オチョは顔をあげた。耳はぴんと張っている。
「おい、クロ、先生は俺の考えを自分のものにしちまってねえか?」
「しょうがねえだろ。『これはオチョの考えなんだけど』なんて言えるか?」
「まあ、そうだけどよ。たとえば
「誰なんだよ、その偉い大先生ってのは。――ん? ちょっと待て。これって俺が考えたんじゃなかったか?」
鼻をひくつかせ、彼は「悪かったよ。後で
「どうしたの?」
「いや、だからな、ええと、なんだっけ。――ああ、そうだ。そうなると蛭子のとこへ行ったんじゃないかって思ったんだよ。それに俺はあそこの
「それってどういうこと?」
「これは想像でしかないけど、もしペロ吉を見つけたらどうするかって考えたんだ。あんな雨の日だったんだ、こいつはぐしょ
「じゃあ、蛭子の奥さんが第一発見者だったってこと?」
「違うよ。きっと一階の住人が見つけた直後とかなんだろう。パトカーが近づいてる間にでも行ったんだ。そうでなきゃ、犯人を知ってて
「ふうん」
ソファに
「で、その犯人ってのは誰なわけ?」
「いや、それはまだわからないな」
「でも、言ってたじゃない。蛭子の奥さんが庇ってるとは思えないって。それって誰かわかってないと出てこない言葉でしょ。違う?」
「は? そんなこと言ったか?」
「言ってた。私はこの耳でちゃんと聴きました」
猫の顔は声に
「ほんと仲がいいね、この二人は」
「まったくだ。でも、まるで子供の
これはゴンザレスだ。キティは鼻を鳴らしてる。
「ねえ、このことだけじゃなく、最近、私に言ってくれないこと多くない?」
「ん? どういうことだ?」
混乱がふたたび
「私たちってパートナーでしょ。これまでも二人で
「それはだなぁ、」
「それは?」
頭に手をあて、彼は
「――ええと、そう、危ないからだよ」
「危ない? それって私が危ないってこと?」
「そうだ。考えてもみろ、犯人が
髪を
「だから、私も危ないかもしれないっていうの?」
「ああ、そういうことだ」
カンナは顔を
「わかった。でも、もう一つだけ訊いてもいい?」
「なんだ?」
「千春ちゃんがデートするって言ってたでしょ。それはどう思ってるの?」
「は? それは関係あるのか?」
「あるの。言って。それについてはどう思ってるの?」
「どう思ってるって言われてもな」
掻き回され過ぎて髪はくちゃくちゃになっていた。――っていうか、あれは半分以上が嘘なんだって。だいいち道具立てがダサすぎるだろ。フェラーリだの、
「その、なんだ、」
「うん。なに?」
「ま、あまり気にしてないな。っていうか、忘れてたくらいだ」
「本当? それって本当に本当?」
「ああ、本当に本当だよ。それに、今はそんなこと考えてる場合じゃないだろ」
顔は自然とニヤついていった。――つまり、この人は千春ちゃんのことなんかより私の心配をしてるってことよね。
「どうしたんだよ」
「え? 別に。いや、違った。もういっこだけ。私が
「あ? ――まあ、そうだな。君がいなくなったら、そりゃ困るよ」
「だから心配してくれてるってことなんでしょ? それで、今は全部言えない。そういうことよね?」
「あ、うん、そうだ」
なんだかよくわからない話になっていたものの彼はうなずいておいた。カンナは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます