第20章-5
ペンダントヘッドを押さえると
「ふう――」
「それで?」
「ええ、だいたいわかりました。間違ってるとこがあったら
嘉江は写真をつかんだままだった。手は
「古川というのは相当のお金持ちだったのでしょう。びっくりするくらい広いお
「その当時のご主人は
なにかに気づいたというような顔をして嘉江は立ち上がった。
「あなたは柏木伊久男の気持ちを知っておられた。だから、恋人から
背中はわずかばかり動いた。彼は鼻に指をあてている。
「柏木伊久男は『悪霊』というグループに入っていた。ご主人に
「それはわかりません。私はただ
指は止まった。目は細められている。
「なるほど。
「そうは申してません。ただ、事実としてそうなんです。私が相談すると柏木さんは
「いいでしょう。私もあなたが殺人を
ふたたび指は動いた。思考はまとまりつつある。柏木伊久男のストーリーが読めてきたのだ。
「あの男は
うなずくのを見て、彼は口許を
「柏木伊久男は
「怖かったんです。古川とは家族ぐるみのつきあいでした。それが突然あんなことになって。それに誰もあの人が暴力を振るってるなんて知らなかったものですから、それを言うのも
「なるほど。まあ、それもいいでしょう。私は
嘉江は
「そうです。あの子のはほんと酷い子でした。気に入らないことがあると感情を
向き直った顔にも嫌悪はあらわれたままだった。彼はわからない程度に
「あの子はお金をせびってくるんですよ。――その、言いたくもありませんが、私がどういうときにどんな顔してたとか、耳にしたくないことばかり
指を突き出し、彼は目を細めた。嘉江は
「それで、あの日ですね。古川紫織が死んだ日です。彼女はあなたを
「そうです。祐次さんの字でした」
「あなたはそれを
目からは光が抜け落ちていった。顔全体もぼうっとしたものになっていく。
「それから?」
「いや、そこから先は見えませんでした。あなたは見てなかったか、見ていても
「そうでしょうか? 先生は本当にそう思ってますか?」
「いや、そう訊かれると困りますが、今は昔のことをとやかく言ってる場合じゃないんですよ。それに、あなたが手を下していたらノートをそのままにしておかないでしょう。普通はそうなるはずです。――ま、他に考えられることもありますがね」
「私に見えたことだけで話しましょう。ノートを奪おうとしたあなたを紫織は
「ええ、そう思ってました。こんな私が
「そういうあなたにご主人はずっと寄り
ふたたび
「そうです。本当に優しい人でした。あのことは知ってましたがなにも訊かず、
「それで、あなた方は結婚された。しかし、柏木伊久男からするとそれは受け容れがたいことだったんでしょう。その感情はご主人の方へ向かった。だから、
「そうだったのかもしれません。柏木さんはそう
「あの男がやって来たのはご主人の
「相談を? それはどういった」
「その頃、平子さんは
「いいえ、知りません」
「そうでしたか。では、平子さんのことはどうです? よく知っておられますか?」
「よく知ってるとまではいきませんが、年も近いし、少しくらいなら」
彼は顔を突き出した。嘉江は顎を引いている。
「奥さん、私が知りたいのはここから先なんですよ。十二年前に線路向こうでなにがあったか。それがこの事件の
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