第20章-3
祭りの初日もオチョとクロはアパートの屋根にいた。二匹
「っていうかよ、どんだけここにいりゃいいんだろうな?」
「ま、ペロが見つかるまでだろうよ。だけど、毎日ここに来るつもりか? あの木を登るってなると三日に一度は死ぬぜ。それに、降りるのも大変だ」
「でも、ここが一番だろ? 俺はあの生ゴミんときも思ってたんだ。こっからだったら全部見えちゃうよなって。――ああ、
「おっ、はじまったみてえだな。ほら、聞こえっだろ? トントントンってのが。ありゃ、祭りの音だぜ」
「はっ! あんたはいつも
下を
「なあ、ペロが見つかったら、どっちかが知らせに行くんだよな?」
「まあ、そうなるな」
オチョは目だけ向けてきた。瞳は細まってる。
「おい、なんだよ、その顔は。俺に行けって言う気か?」
「
耳を
「ん? ありゃ、先生じゃねえか。あのもじゃもじゃはそうだろ」
「そのようだな。蛭子んとこに行くのか? どれ、ひとつ鳴いてみるか」
笑いながら彼は手を振った。しかし、角を曲がったときには表情を整えてる。
「ああ、もう出てらしたんですか。すみませんね、突然お
「いえ」
「で、どうです? 上手くいきましたか?」
「どうでしょう。その、言われた通りにしてみたんですが反応が薄くって。それに、やっぱり寝たり起きたりしてますから」
「でも、
長い
「あの子のことは申し訳ないというか、私たちにも出来ることがあったんじゃないかと思ってるんですよ。――その、お父さんが捕まったのさえ知ってれば、ここに来てもらうことも出来たし、そのことはこう、」
腕に軽く
「それについても教えて欲しいことがあるんです。あの日、お
「どんなというのは?」
「悠太くんが死んだのを聴いて、もちろんびっくりしてましたよね?」
「はい。それはもちろん」
ゆかりは首を
「どうしました? なにか気になることがありますか?」
「いえ、気になるって程じゃないんですが訊かれて思い出したんです。
「悠太くんのときはそこまでではなかったんですね?」
彼は目だけ動かした。顎は
「そう言われればそう思えるってだけですよ。でも、柏木さんのときと違ってたのは確かに思えます」
「そうでしたか」
「ゆかりさん、蓮實淳が来てると言ってきて下さい。今度こそ悪霊を
彼は
「どうしちまったんだ? なんで先生はうろちょろしてんだろうな」
「もしかしたらペロんこと探してんじゃねえか? ま、あんなとこにいるなら誰も苦労しねえけどな」
ふいと顔をあげ、彼は笑った。それから大声でこう言ってきた。「オチョ、クロ、俺がこっから
二匹は顔を見合わせてる。
「先生、そりゃ、どういうことだい?」
訊いたけど、それは伝わらない。仕方なしに二匹は「ニャー」と鳴いてみせた。そのとき、ゆかりが出てきた。さっきの大声が聞こえたのだろう、
「どうでしたか?」
「はじめは嫌だと言ってたんですが、――その、」
「悪霊と聴いて思い直しましたか?」
「ええ。ただ、かなり
「では、
「はあ」
「すみません、蓮實淳です」
離れの中は
「入りますよ」
「お
「ええ、悪いですよ。いまも寝てたところです。――それで、お話というのは?」
「ゆかりさんから聞いてますでしょう? 今日こそ悪霊を完全に
「また悪霊ですか。少し前からゆかりが
「やっぱりわかってましたか」
「あの子はそれほど頭がいいわけじゃないですもの。そうとわかっていてわざとああさせたんでしょう? 私を
「まあ、そうですね。しかし、釣り出そうとしたんじゃないですよ。お耳にその言葉を入れておきたかっただけです」
「どうしてです?」
「必要だからです。この周辺で起きてきたことを終わらすためにも、こちらのお
溜息を
「以前もそう
「そうでしたね。しかし、あのときは失敗しました。いや、あなたに失敗させられたんです」
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