第19章-2
公園にはたくさんの猫が集まっていた。丸い時計は一時二分を指している。
「すまねえ、
「ふんっ! また遅刻だね。そんなんじゃ示しがつかないよ」
「いや、姐御、オチョはペロの居所について考えてたんだよ。それでちょっとだけ遅れちまったんだ。
「ペロの居所だって? で、なにかわかったんかい?」
オチョはヒゲを
「わからないんだけどさ、首輪が切れるくらい放られたら遠くに飛ばされてるはずだろ? ってことは
「へえ。オチョがそう考えたのかい?」
クロは
「えっと、そう、――うん、そうなんだよ。首輪は
「そう、そうなんだよ。だからな、姐御、ペロは遠くに行ってないはずだ。それに、――な? オチョ、ほら、チビ助だからって言ってたろ?」
深くうなずき、オチョは胸を張った。クロは口許を
「うん、あいつはチビ助だから姐御の
「なるほどね」
そう言って、キティは鼻を鳴らした。
「ま、確かにそうだろうね。ということは
「ああ、そうなるな。――ん? ってなると、」
「
「でも、」と声がした。ゴンザレスの
「どうしてペロは出てこないんだい? それに、鳴きもしてないんだろ? あの辺は
キティは
「それはわからないね。ただ、オチョの考えじゃ怪我してるかもしれないってことになる。そういうことで引き
「あそこのお婆ちゃんもずっとお部屋に入りっぱなしだもんね」
小さい方のベンジャミンが口を
「だからわからねえのかもな。――うん、姐御、こりゃ、蛭子の家を見張るしかないな」
これはクロだ。キティは深くうなずいてみせた。
「そうだね。これはあの人にも言っとくよ。――ま、ペロについてはこれでいいだろ。次はあの
猫たちは順にこたえた。キティは目をつむって聴いている。しかし、これといった情報はなかった。
「ふうん。やっぱりよくわからないね。なんで
「どういうわけだい?」
オチョが訊いた。他の猫は顔を見合わせてる。
「あの人も言ってたけど、あの爺さんには変なとこがあるように思えるんだ。なんていうのかね、
そこでキティは目をあけた。
「わからないだろね。でも、アタシは思うんだ。あの爺さんについちゃ、表面だけ見てても理解できないとこがある。だから、これまでだってわからないことばかりだったんだよ。奥を見るんだね。目に見えにくいとこを探っていくんだ。それにはペロんとこの子供が殺されたのが
目を向けるとオルフェは固まったようになっている。キティは顔を寄せた。
「どうしたんだい? なにかあるのかい?」
「ううん、キティさん、――その、ちょっと変っていうか、今のを聴いて思い出したことがあるんだ。ほら、ペロんとこの子は階段から
「ああ、あの人はそうじゃないかって言ってたね。――で?」
オルフェは
「ほら、あの爺さんがよく会いに行ってた吉田って婆さんがいるだろ? ビル
「ヒラコ? その二人はヒラコって言ってたのかい?」
オルフェはさらに固まってしまった。目は左上に向いている。
「うん、キティさん、確かに言ってた。ヒラコがどうとかって」
「ヒラコって言えば、――オチョ、あんたならわかるだろ? ほら、平子の婆さんさ」
「ああ、平子の婆さんか。そういや、去年の四月くらいだったな、あの婆さんが死んだのは。――ん? 待てよ。
「ま、そうなると平子の婆さんも誰かに突き落とされたのかもね。それを吉田和恵は見てたのかもしれない」
「そういや、あの日も
オチョは
「それも似てるね。あの人が言わなきゃ、ペロんとこの子も事故ってことになってたんだろうから」
「あのう、」
クロが
「その平子の婆さんってのはいったいどういう、」
「ああ、あんたたちはわからなかったね。平子の婆さんってのは線路向こうに住んでた、この辺じゃちょっとした有名人だったんだよ。沢山の猫を
言葉が
「こりゃ、問題を整理しなきゃならないね。とっちらかったのを片づけるんだ。いいかい? オチョとクロは蛭子の家を見張る。ゴンザレスとオルフェは吉田和恵について調べるんだ。ビル掃除の人間は他にもいるだろ? その話をよく聴くんだ。平子の婆さんが死んだ日のことを知ってるのが他にもいるかもしれないからね」
猫たちは闇の中へ消えていった。ベンジャミンだけが残ってる。キティは身体を
「ベン、あんたは連絡係だよ。ここにいて、みんなが言ってきたのを報告するんだ。わかったかい?」
「うん。でも、キティさんはどうするの?」
「アタシかい?」
キティは暗がりに目を向けた。まるでそこになにかが
「アタシは他にやることがあるんだよ。――ま、夜中には戻るから、あんたはここで待ってるんだ。わかったね?」
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