第19章-1
【 19 】
しかし、山本刑事は悩ましげな顔でこう言った。
「ま、結論から言うとな、
「家の外に出されてたってのは? そういうとこを何度も見られてんだぜ」
こめかみを押さえながら蓮實淳は訊いた。頭痛が
「ん、それについちゃこう言ってるよ。あの子はよく
刑事は
「警察はあの子が死んだのをどう見てるんだ?」
「どう見てるってのは?」
「事故と見てるのか、殺人と見てるのかってことだよ」
「殺人? お前さんはあの子が殺されたっていうのか?」
彼はそれについて話した。そのあいだカンナは一言もしゃべらず首輪を
「いや、待てって。猫がいないからって
「しかし、妙なのは確かだ。そうだろ? なぜペロ吉はいなくなった? その説明がつくのはさっき言った場合だけだ」
刑事は視線を
「うん、まあ、なんだ。そうなのかもしれねえが、他になにかねえのか? ほんとに猫がどうのこうのなんて言える
「じゃあ、こういうのはどうだ? あの子はよく外に出されてた。それは両親ともに認めてるんだよな? そうなるとこうも考えられる。あのアパートからは
「なるほど。つまり、あの子は柏木伊久男殺しの
「直接見てたとも限らないぜ。しかし、犯人からすりゃ気になるだろ。部屋に出入りしてたとこを見られたって考えたら、口を
「うん、まあ、そうだろうけどな」
「とにかく、あれは事故じゃないと考えて進めていった方がいい。この二つも
また猫の話になるんかよ。そう言いかけたものの刑事は首を振った。
「わかった。どうにかしてそういう方向へ持ってくよ。まあ、これで左遷っていうならそれでもいいってことにしとこう」
ゆっくり立ち上がり、山本刑事は薄い毛を
「お前さん方がどう思ってるか知らないが、俺たちだって腹を立ててるし、悲しんでるんだぜ。子供が死んだなんてのはその原因がなんであれ、あっちゃいけねえことだからな。ま、警察ってのは機械的に動いてるもんだが、それでもたまに腹を立てることがあるんだよ。今がそれだ。悪いことをした奴は捕まえなきゃならない。その首に
カンナは顔をくちゃくちゃに
テレビが
「ああ、またこの時期になったのか」
オチョはビニールに
「こいつがはじまると
「ふうん。で、こりゃなんだ? タコか?」
「タコ? ああ、そうも見えるな。――って、おい、こんなの見て腹すかせたって顔すんなよ。こいつはタコじゃねえし、食いもんでもねえんだから」
「じゃ、なんなんだよ」
クロはじとっとした目を向けた。オチョは少し
「ん、こいつを持ってな、ぐるぐる回すんだ。えっと、誰か
「へえ。ま、いかにも人間のしそうなことだな」
二匹は
「それにしたって、ペロの奴はどこ行っちまったんだ?」
「ああ、ほんとだな。でも、あんな
「ってことは、どこにいるんだ?」
「もしかしたらだけどよ、」
「うん、なんだ?」
「ペロも殺されちまってんじゃねえかってな。――いや、もちろんそうじゃねえ方がいいよ。いいんだが、こうまで探してもいないってことは、」
「あのな、先生も言ってたろ。首輪が放ってあったのは犯人に
オチョは首を引いている。
「どうした?」
「ん、クロ先生のご意見ごもっともと思ってな。お前、ほんと
クロも走り出した。夜の暗がりに
「っていうか、最近俺たちの影薄くねえか? こう、
「だから、そいつを話し合うんだよ。この辺で一回
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