第17章-3
「他の二人、山田久枝ってのと本間康明ってのは知ってるか?」
「山田久枝は知ってるよ。あの
「ふうん。まあ、それは山もっちゃんに聴けばいいか」
「だけど、大丈夫なんかい? 刑事はいいとして、あの小娘はまったくわかってないみたいだよ」
カンナは「うーん」とか「あっ」などと
「しかし、小林衛は問題だな。どうすりゃいいんだろ」
「どうもこうもないだろ。警察に知られたんだ、捕まるだけさ。
「ま、いずれにしたって子供にはキツいよな。ペロ吉にとってもいい話じゃない」
「すべての者にとってのいい話なんてないのさ。どこかが出っ張れば、どっかが引っ込むんだ。そりゃ、しょうがないよ」
悩ましげな顔が入ってきた。薄い毛は逆立っている。
「じゃ、さっきのつづきだ。わけのわからねえ話をもう一度聴かせてもらおうか」
「いや、それは後回しにしよう。まずは名前のわかった連中について教えてくれ」
うんと濃いコーヒーを運んでいくとカンナは奥へ行った。なにか探してるようで、ごそごそという音が聞こえてくる。
「はい、キットカット。疲れてるときは甘いものもいいみたいよ」
刑事は唇を
「この山田久枝ってのは、あの爺さんがよく行ってた飲み屋の
「そのようだな。柏木伊久男と妙に仲がよかったようじゃないか」
「よく知ってるな。その通りだ。デキてるんじゃねえかってくらい仲がよかったそうだ。しかし、
太い指を
「な? これじゃ、なにで脅されてたかわからねえだろ。さっきの、――ほれ、小林と田沼のな、あれはわかり
「この本間康明ってのは?」
「ああ、そいつか」
悩ましげな顔は
「こいつはなにしてたかわかってんだ。ただな、それはこっちに予備知識があったからだ。これに写ってる学校からは
「そりゃ本物の変態だな。その犯人なのか?」
「まあ、そうなるんだろう。被害のあった学校と男の写真。それに、『HM03Y』ってわけだ。なに、前から目をつけてたんだよ。そのうちの一人だったんだ」
「でも、これじゃ顔もよくわからないだろ?」
キットカットを
「この服でわかるんだとよ。俺は調べてる奴に見せたんだ。いや、
「ふうん。ま、確かにこの二件は写真を見ただけじゃわかりづらいな。他のはどうだ?」
「これ、大和田の
「ほんとだな。本人のが引きとアップ。これはあのホテルだ。そして、指輪の女だけのもの。――うん、こいつは二人一緒だが、だいぶ離れたとこからのものだ。俺たちにはわかるが他の者にはわからないだろう」
「こっちは泉川のおじさまじゃない?」
「ああ、そうだな。車の中に女といる。こりゃ相当若いな。こっちは、――これも若い女か。あのオッサン、病気かってくらい若い女が好きなんだな」
「それはわかり易いやつだよ。そいつには
「泉川
写真を取ると彼は
「あの馬鹿、こんなことしてたのか」
「それなにしてるかわかるの? 私はまったくだけど」
「ここは西口公園だろ? 外国人風の男がいる。そこに近づく鴫沼。で、なにか話してるところ。こりゃ――」
「クスリだろうな」
「クスリ? クスリって、あのクスリ?」
「ああ、そうなんだろう。使っちゃいけないクスリだよ。それも比較的わかり易いやつだ。――で、先生、これはどうしたらいい?」
「どうしたらいいってのは?」
「よく見てみろ。そりゃ、けっこう前の写真だぜ。周りを見ればわかるだろ? まあ、買ったのは確かだろうが、使用だけじゃ罪にならねえ場合もあっからな。それに、
蓮實淳は
「警察ってのはそういうふうに動くもんじゃない。あんたはそう言ってたぜ」
「そうか? ま、そうだったかもな。しかし、それは
「どれ、」
そう言って、彼はキティを見つめた。聞こえない声で「どうだ? わかるか?」と訊いている。
「ああ、そりゃ、ビル
「ビル? どの辺のだ?」
「ええとね、――そう、明治通り
「そうか、ありがとう」
刑事は目だけ動かしてる。この間はなんなんだ? と思いながらだ。
「山もっちゃん、これはビル掃除してる吉田って婆さんだ。明治通り沿いのベローチェ、そっから新宿寄りに陸橋があるよな? その
「ふむ、そうか。それで、他になにかわかるか? いや、こいつはほんとわけがわからねえんだ。同じ自転車の写真が六枚だろ? あとは顔や姿だけだ。しかも夜に撮ったもんだから全部ぼやけてる。この婆さんにはどんな秘密があるってんだ?」
蓮實淳はまたもやキティを見た。つられて視線を動かしてもそこには猫がいるだけだ。
「わからないよ。いつも自転車で来てっから、どこに住んでるかもわからないんだ。だけど、名前と仕事がわかったんだ、警察なら調べられるだろ?」
山本刑事は逆側を向いた。カンナは肩をすくめてる。「どういうことだ?」と目顔で言ったけど、首を振っただけだった。
「山もっちゃん」
「なんだ?」
「名前と勤め先がわかったんだ、そっから先はあんたたちの仕事だろ?」
「まあ、そうだがな」
「他のも見てみようぜ。なにかわかるかもしれない」
束を取り、彼は
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