第17章-1
【 17 】
蓮實淳は首を伸ばしてる。しかし、戸が開いた瞬間に肩をすくめた。
「なんだよ、その顔は」
「なんだって言われてもな。いつもの
「はっ! お前さんがいい男なら俺はジャニーズに入れるぜ」
笑いながら刑事は視線を下げた。デスクには茶トラの猫が横たわっている。
「カンナ、山もっちゃんはジャニーズに入りたいらしいぜ。どう思う?」
「どう思うって。――そうね、
雑誌を放り、カンナは立ち上がった。――ほんと、顔のよろしくない人たちのこういう会話って下らない。まあ、北条さんはアイドル顔だけど。そう思いつつ振り向くと、うつむいた頭が見えた。っていうか、ハゲちゃってるじゃない。
「いやぁ、風が強いな。でっかい台風が来るみてえだもんな。まだ
刑事は
「で、どうなった?」
「ああ、
「わけのわからねえこと?」
「そうなんだよ。あの日、――ほれ、
「それが?」
「そいつがなんだか
「それのどこがわからないんだ? そういうことはあるだろ?」
「いや、こっからが妙なんだ。品川に行っても誰も来なかったってんだよ。ま、
「はあ? どういうことだ?」
「な? そうなるだろ?」
デスクに手をつき、刑事は首を振った。顔はしかめられている。
「だからわけがわからねえんだよ。柏木の爺さんは
「それで、警察はそれをどう見てんだ?」
「いや、あまり問題になってないんだよ。
「ふうん。隣人が声をかけたってのは
「ん?」
手帳を
「ああ、そうだ。十六時五十分頃だ」
「
「そうだよ。よく憶えてたな」
「はっ! 一歩間違えりゃ殺人犯にされてたんだ、どんなことだって憶えてるよ。しかし、どういうことだ?」
彼は腕を組んだ。――ここを出たのは五時半頃だったはずだ。路地に着いたのは四十五分くらい。その爺さんに
「ふむ。あの日、俺は
「ああ、考えれば考えるほどわけがわからなくなるだろ? まるで自分が殺されるお
二人はしばらく見つめあった。どちらの顔もぼうっとしてる。山本刑事は時計を見た。
「ま、これは後回しにしよう。とくに意味がないって可能性もある。ってことで、こいつを見てくれよ」
リストを手にすると彼は
「この小林衛ってのは、もしかしてペロ吉んとこのか?」
「小林衛だって? ま、名前は一緒だね。あの爺さんとちょくちょく会ってたようだから、そうかもしれないよ」
「ってことは、
「そりゃ、写真を見りゃわかるんじゃないかい?」
風にガラス戸を
「おい、どうしたんだ? なにがあった?」
「ん? 新たな発見があったんだよ。でも、とりあえずはその難物ってのを見ないと判断できないな。そっちに行くから見せてくれよ」
カンナはお
「はい、特別なお茶よ。セージ、メドゥスイート、フィーバーフュー、それに、レモンバームとカモミール。そちらのおじさまにはピッタリだと思うわ」
山本刑事は
「へえ、俺に合わせてつくってくれたんか。こりゃ、なににいいんだ?」
もちろん育毛に決まってるじゃない。カンナは
「えっと、そうね。
「ふうん、肩凝りねぇ。そりゃいいな。ここんとこずっと肩がパンパンなんだよ。お
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