第15章-4
カンナが帰った後にキティとゴンザレスがやってきた。あの日に周辺人物がなにをしてたか伝えに来たのだ。大和田義雄は会社にいて、紀子は出かけていた。
「
「ああ、あの
「出かけてたみたいだよ。五時前に家を出て、半過ぎには戻ったみたいだ。小さいベンがつけてたんだけど明治通りに出てから見失ったみたいでさ。ほら、あそこは人が多いだろ? ベンじゃ無理だったんだね。で、しょうがないから家の前で待ってたんだってさ」
「ふむ」
「あの婆さんも
横になったままキティは
「そうとも思える。それに『悪霊』という言葉で
「あんたは過去を見たんだろ? そんときに、その『悪霊』ってのはわかったんじゃないのかい?」
「わかったとも言えるし、そうじゃないとも言える。ちゃんと見えなかったんだよ。きっと
「っていうのは?」
「うん。あのときは
「ま、そうかもね。だけど、『悪霊』ってのは自殺した生徒が残した言葉なんだろ? それとあの
固まった顔を見て、キティは「ナア」と鳴いた。彼はこめかみを
「わからないな。そもそも関係ないかもしれないんだ。――いや、だけど、だったらなんで嘘をついてまで俺を助けたんだ? なにかはあるんだよ。でも、」
「でも、考えたくないってんだろ? そういう顔してるよ。いいかい? あんたは
キティは足許へ行き、首を反らした。ヒゲはぴんと張っている。
「まだ全体が見えてないんだよ。アタシたちには知らないことが多いんだ。まずはきちっと知ることからはじめないとね」
「でも、どうしたらいいんだ?」
「オマワリが
彼は髪を
「そうだな。その通りだ。まずは全体を見なきゃならないな」
朝が来ると彼は濃いコーヒーをつくり、パジャマのまま電話をかけた。
「刑事の山本さんを出して欲しいんですけど」
「山本ですか? どの山本です?」
「どの山本って、だから、刑事の山本さんだよ」
「
取り次ぎの声は機械的に聞こえてくる。彼は受話器を
「あのな、ちょっと、こう、毛が薄いっていうか、ありゃ、もともと髪が細いんだろうな、そのせいで
「いえ、そう言われても」
溜息をつき、彼は
「えっとな、
「ああ――、では、呼び出します。そのままお待ちください」
オルゴールのような音が流れると彼は取り次ぎの顔を想像してみた。きっと銀色の
「はい、山本です」
「ああ、山もっちゃんか?」
「やっぱりお前さんか。あのな、毛が薄いだの、間延びした顔だの言うなよ。出た奴が笑ってたぞ」
「ふうん。俺と話してるときはまるで機械みたいだったけどな。次からは外部の者にも明るい声で
「いちいちうるさい奴だな。で、なんの用だ?」
「ちょっと訊きたいことがあってね。それに、話したいこともある。
「なんの話だよ。
「そう言うなよ。俺は
唇を
「わかった。昼過ぎには行けるだろ。それでいいか?」
「ああ、悪いね。じゃ、待ってるぜ、山もっちゃん」
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