第15章-3
二人の刑事は西陽のあたる中を歩いていた。
「さっきは
「いえ、こちらこそ済みませんでした」
気づかれないように
「とにかく仕切り直しだ。日を改めて行くぞ。今度こそあいつのペースに乗せられないようにするんだ」
声に張りはなく、歩き方にも
「それにしても、あいつ、ほんとムカつきますね」
「ん? ああ、まあな。でも、占いの腕は確からしい」
「気にしてんすか? さっきのアレ」
山本刑事は目を細めた。
「気にしちゃいないよ」
無理につくった笑顔を向けると若造はこう言ってきた。
「大丈夫っすよ。山本さんはハゲてなんかないっす」
は? ハゲてない? こいつが言ってたのは毛のことか。母親の事故じゃなく、毛のことだったのか。
「ほんと気にしなくっていいですって。全然ハゲてないですもん」
追い打ちをかけるように若造はそう言った。――っていうか、あの男だって「ハゲ」とは言わなかった。「毛が薄くなってる」と言っただけだ。それをこいつはなんの
「どうしたんすか?」
「いや、」
山本刑事は首を振り、足を早めた。
「なんでもない」
同じ時間にカンナはこう訊いていた。
「ね、あのおじさんの親友って誰? 毛むくじゃらで茶色いって言ってたけど」
蓮實淳はぼうっとしてる。
「聴いてる?」
「ん?」
「さっきのおじさんの親友って誰? って訊いたの」
「ああ、」
立ち上がり、彼は奥へ向かった。
「クマだよ」
「クマ?」
「そう、クマだ。
首を引き、カンナは口をきつく閉じた。ただ、
「それってほんと? ――って、あなたが見たんだから本当よね」
カンナは身体を「く」の字にして笑ってる。『腹が
「なんて呼んでるのかな? 『クマちゃん』とか? 『ね、クマちゃん、僕は今日
彼も笑ってる。しかし、急に押し
「どうしたの?」
「いや、ただな、そのクマは母親からもらったものなんだ。うんと小さい頃にね。それを考えると、」
「――うん、悲しくもあるわね」
彼は
「カンナ?」
「なに?」
「あの
「うん」
「それと、その身内も考えられるな」
「っていうと、大和田の奥さんとか鴫沼のお父さんとか?」
「ああ。それにな、もしかしたら
「なんでよ。どうしてそんなふうに思うの? ――あっ、あの人も脅迫されてたってこと?」
「そうかもしれない。いや、確信はないんだが、そうも考えられる。ほら、嘘の
「待ってよ。確かにそこまでしてくれるなんて変だけど、あの人が殺人犯だとは考えられない。なんでそう思ったの? 他にも理由があるんでしょ?」
目をつむり、彼は鼻に指をあてた。
「嘘の証言をして、あの人は俺を助けた。それはその通りだ。俺にはアリバイができたんだからな。しかし、それは同時にあの人のアリバイをつくったことになる。そうだろ?」
「まあ、そうだけど」
「とにかく普通でないのは確かだ。きっと、あの人と
彼は目をあけた。カンナは納得いかないといった表情をしてる。――まあ、それは俺だって同じだ。できればこんなふうに考えたくない。しかし、だったら誰があの爺さんを殺したっていうんだ?
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