第13章-5
その日はそのまま
「九十九番、食事の時間だ」
「へい! ありがとうごぜえやす!」
担当官はうんざりした顔で去っていった。――っつーか、バリエーションを持たせろよ。がんもどきがシューマイに変わっただけじゃないか。ほんと
食事が終わると、九時の消灯までは考える時間だ。ただ、頭はぼんやりしてる。腹が減ってるのだ。あんだけじゃ足りないんだよ。それに、すべてが薄味過ぎて、まるで
うん、こうなったら政治家を目指すしかないか。留置場改革を
「ふむ」
薄い
「ま、単純に考えればそうなっちまうよな。でも、」
天井には様々な顔が浮かんでる。それだけじゃなく占いで見たものも浮かんだ。もやもやしたガスのような存在。ほんと、あの
気がつくと朝になっていた。ブザーが鳴り
「九十九番? ――ああ、いるな」
「へい!
変わり
「九十九番、お呼びだ。行くぞ」
「へい! 九十九番はお
「っていうか、そういうのやめてよ。あんた、ふざけすぎだって」
「いえ、旦那! 九十九番はふざけてなどないであります!」
担当官は頭を振っている。それを見て、彼は笑った。
「ああ、来たな」
エビ茶は親指の爪で
「ま、これ以上会いたくもないんだが、しょうがない」
「
「さて、しつこいようだが、昨日のつづきだ。しかし、新たな情報もある。被害者のパソコンからお前さんを
エビ茶は
「他には? 他にはなにか出てこなかったのか?」
「は?」
「あの
ピアノを
「はっ! しゃべりたくなったようだな。お前さんは他になにかあるだろうと思ってるわけだ。中傷ビラの他にもあるはずだってな。あるいは、その元になってるものか?」
指は止まり、また動き出した。――ふむ。いまの感じじゃ、まだ知らないんだ。あの爺さんが脅迫者だったことにたどり着いてないんだろう。
「その元になってるものってのは? 山もっちゃん、
「いいだろう。じゃ、ストレートに言うよ。お前さんと被害者にはトラブルがあった。それは中傷ビラが示してる。じゃあ、なんで勘違いなんて言ったかだが、俺たちはこう考えてる。お前さんはあそこに書かれたようなことをしてんだよ。インチキで
エビ茶はふたたび覗きこんできた。彼は鼻を鳴らしてる。
「じゃあ、そうだったとしよう。俺はインチキ占い師で、あの爺さんは正義の味方だってふうにな。でも、だったらなんで向こうも勘違いなんて言ったんだ?」
「それはお前さんに
「ちぐはぐだな」
「あん?」
「それじゃ、あまりにもちぐはぐだよ。考えてみろ。あんなのを
「まあ、そうかもしれないが、事実として被害者は怯えてたんだ。それは聴き込みの結果わかってる」
「じゃあ、それもそういうことにしておこう。しかしな、山もっちゃん、まだ他にもあるぞ。そもそも怯えてた奴が謝罪を求めてくるってのも変だ。――だろ? あの爺さんは外にも出られないって言ってたんだよな? これは、あんたがいま言ったことだぜ。そうだろ?」
「ああ、そうだよ」
そこで彼は首を曲げた。若いのはごく近くにいる。これだって変だ。
「だからなんだっていうんだ?」
「爺さんは俺にビビって外に出られなくなったってことだよな? それなのに、なんで謝罪に来いなどと言ったんだ? どっちなんだよって思わないか? 会いたいのか会いたくないのかってな。まだ他にもあるぜ。どうしてビラなんだ? 爺さんだからか? でも、パソコンは持ってるんだよな? じゃあ、ビラを貼るよりネットにばら
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