第12章-3
その夜、
「で? いったいどういうわけで、あんたたちは持ち場を
二匹は
「あの、キティさん、ボクはちょっとお家に行かなくちゃならなくて、」
「どうしてだい?」
「それは――」
「はっ! わかってるよ。ここにいる全員が知ってる。いいかい? ペロ吉。あんたは皆に心配かけてるんだよ。それは、あんたがはっきり言わないからさ。自分一人でなんとかしようってたって、相手は人間なんだ。そんなの出来るわけないだろ?」
「はい、ごめんなさい」
「ふんっ! ――ま、そのことは後で話そう。だけど、ペロ吉、アタシはあの場所を離れるなって言ってたんだよ。ほんと、とんだことをしてくれたもんだよ」
「ごめんなさい、キティさん」
口許を引きつらせつつキティは目をそらした。自然と溜息が
「それで、オチョ、あんたの方だけど?」
「
オチョは
「あんたはなんで持ち場を離れたんだい? ペロ吉が出てったときにゃ、まだあそこにいたんだろ? この子はあんたがいるからってんで用事を済ましに行ったのさ。そうなんだろ? ペロ吉」
「はい。オチョさんは『俺に
「いいんだよ。コイツは痛い目にあわないとわからないようだからね。オチョ、この子はあんたと違って責任ってのを心得てるよ。ま、命令に
近寄られるとオチョは前肢をぴんと張るようにした。上体はのけ
「アタシはねぇ、遠くへ行くからってんで、あんたに任せたんだよ。ほら、こたえな。なんで離れた?」
「――その、毎日毎日同じ場所で爺(じい)さんの見張りをしてて、とくに変わったことも起きないし、」
「それで?」
「あの日もなにも起きなくて、その――」
顔がずいっと近づくと、オチョは
「はっきり言っちまいなよ。あんた、
キティは首を引き、息を整えた。目はゴンザレスの方へ向いている。
「キティさん、オチョはねぇ、また
猫たちは顔を見合わせてる。ひそひそ声も聞こえていた。
「それにねぇ、
オチョはそっと首を曲げた。なにもそんな昔のことまで持ち出さなくていいだろ? といった顔つきだ。ただ、それはすぐ
それと同じ時間、蓮實淳は
ただ、その後で急に泣きたくもなった。――いや、そうなったら、あいつらの思うつぼだ。そのためにわざわざ一人部屋をあてがってくれたんだろうからな。目をつむってみても、やはり眠れない。彼はもう一度その日にあったことをお
あの若い警官がやって来て、
起き上がると近づく音がした。息を止めるようにして彼は布団をかぶった。――またちぐはぐさが出てきたな。あの爺さんは何者だったんだ? しこたま金を持ってる人間に月一万だけ要求し、不倫関係が終わったらそれすらやめるなんて。それに、なぜそれをビラに書いた? いや、そもそもなんでビラなんだ?
横になったまま彼は鼻に指をあてた。
しだいに指は
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