第12章-1
【 12 】
「ま、解決するわけもないけどな」
「ああ、クロか。ちょうどよかった」
「ん? 先生、どうかしたのか?」
コーヒーを飲みながら彼はその日にあったことを話した。謝罪へ行くこと、大和田義雄との
「いま言ったの全部キティに伝えといてくれ。さっき公園に寄ったんだけど、いなかったんだよ」
「ああ、
「別件?」
「そう、ペロのことでちょっとな」
「ペロ吉になにかあったのか?」
口の周りを
「ペロにってわけじゃないんだ。――いや、これは順序だって話した方がいいな。俺たちはあの
「外に?」
「うん。あそこの親はアホなんだろうな。
「そうなのか」
「それでキティは?」
「ああ、姐御はそれを心配してさ。だけど、ペロの奴はあまりしゃべらないんだよ。ま、そういうわけでペロん家や親のことも見張ってんのさ。きっとそのうち先生に相談するつもりなんだろうよ」
「わかった。キティにはこれも伝えといてくれ。なにかあったらすぐ言って欲しいってな」
大きくうなずき、クロは飛び降りた。
「で、先生は
「そうだ。まあ、なんの謝罪かわからないけど、とにかく行ってくるよ。それについても後で報告する」
「
クロが出ていくと蓮實淳は腕を組んだ。――事が多すぎるな。頭が
着替えてるところに電話が鳴った。階段を降りながら時計を見ると、五時十二分。
「はい、こちらなんでもお見通しの占い師、蓮實淳の店。出てるのはその蓮實淳です」
指示通りの
「えっと、すみません。ちょっと遠いようなんですけど」
「……ん、ん、んぅ……」
「なにか言ってます? 申し訳ないけど、ちゃんと聞こえないんですよ」
そこで電話は切れた。
「なんだよ、無言電話か」
外に出ると
「キティ? キティ、いるか?」
まいったな。これじゃ、
「ほんと、うんざりするな。カンナが行きゃいいんだよ。俺はなにもやってないんだ」
嫌でも
「ペロ吉? オチョ?」
強い風が吹き抜けていった。どうしたってんだ? 猫すらいないぞ。そう思っていると
「ああ、降り出したか」
雨粒はボツボツと落ちた。電線も
「蓮實先生?」
声がした。あらわれたのはペロ吉だった。
「ごめんなさい。ボク、ちょっと、」
「ああ、いいよ。気にするな」
「先生はどうしたの?」
「これからあの
「オチョさんは――」
小さな猫は首を曲げた。そのとき、
「なんの音?」
「たぶん、あの爺さんの部屋だろう。ドアが開いてんだよ。それが風で――」
そこまで言って、彼は
「ペロ吉」
「なに?」
「ちょっと覗いてきてくれないか?」
「うん、いいよ」
「覗くだけでいいぞ。中を見たらすぐ戻るんだ」
彼は時計に目を落とした。六時五分だ。あの警官は六時半って言ってたんだっけ? いや、六時と言ったはずだ。雨音はうるさいくらいだった。ただ、雲は切れている。ま、じきにやむだろう。そう考えてるところに
「先生! 蓮實先生!」
「どうした?」
「大変なの! お爺さんが! あのお爺さんが倒れてる!」
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